今日は、少し前に、医師向け週刊誌に掲載された次の記事について。オリジナルはこちら。
スウェーデンの医師免許取得者の半数以上がスウェーデン外の医学部卒となったのは、2003年が初めてのこと。以来、この現象は継続しており、まさに、スウェーデンの医療は今や、国外医学部卒業の医師無しでは維持できない状況になりつつあります。
次の図は、新規医師免許取得者の年次別推移。紫のラインは国外医学部卒業の医師。
この図を見ると、毎年、2000人程度の新しい医師が誕生しており、半数以上がスウェーデン国外の医学部卒業者。日本では7,8千人くらいと記憶しておりますので、人口を考えると、日本よりずっと多いですね(しかし、医師一人当たりの勤務時間はずっと少ない!)。1995年には、国外医学部卒業の医師の医師全体に占める割合は13%でしたが、2010年には倍近くの23%に。それでも、国際的にその数字は最も高いという訳ではないようです。イギリス、アメリカなどはスウェーデンよりも高い割合。対する、イタリア、ドイツ、フランスは5%にも満たないとのこと。日本はもっと少ないのではないでしょうか。やはり、英語圏では外国人医師の言語に対するハードルが低いからなのか、あるいは、文化によるものか、、、。
1000人以上の国外医学部卒業者の国別内訳。最も多い黄色の部分は、EU内から。基本的に、EU内の医師免許を取得すれば、EU各国で働くことができます。紫の部分は、EU外から。私もこのグループに属します。毎年、最低100名、多いときは300名ほどで、主に、イラクとロシアから。水色は、スウェーデン人が国外の医学部を卒業したグループ。これも年々増加しており、ほとんどはEU内の医学部卒業。スウェーデン内の医学部に進学できなかった人が、ポーランドやルーマニア、ハンガリーなど、英語による医学教育を行う医学部に一部自費で入学するケース。自費とはいっても、日本に比べれば破格に安い学費です。
医学教育には一人当たり数千万円の費用がかかると言われていますが、スウェーデンは新規医師免許取得者の半分以上が国外で教育を受けた人間、つまり、医学教育にかかる費用をかなり節約していることになります。私の経験では、非スウェーデン人の医師のレベルは決して低くありません。むしろ、優秀な人は多い。優秀な医師を医学教育の費用を負担せずに輸入するということは、本来ならば日本もならっても良いのではないかと思います。近年、日本人も、スウェーデン人と同じように東欧諸国の医学部に学ぶ人が増えているようですが、厚生労働省の規定では、日本人であっても、国外の医学部卒業の場合は、日本の医師免許を取得する際の手続きは複雑です。東欧諸国の医学部を卒業するためには、相当な勉強が必要で、日本の医学部のように生ぬるくはありません。むしろ、日本の医学部卒業生よりもすぐれていると考えられるのに、医師免許取得のプロセスが複雑なのは片手落ちとしかいいようがありません。一部では、「日本の医学部に入ることができなかった落ちこぼれが東欧へ流れる」という輩もいるようですが、東欧の医学部の授業料は、年間100万円程度。学力は十分でも、年間最低数百万円、場合によっては1000万円近くもかかる日本の私立医学部に入ることができない人は星の数ほどいると思われます。スウェーデン人に、日本の私立医学部の学費の話をすると、「払える人がいるのか」と驚かれます。日本国外の医学部を卒業した日本人に対する日本の医師免許の交付については一定のルールが無い現在、医師不足対策として、コストのかかる医学部新設よりも、海外医学部を卒業した日本人医師の逆輸入の制度を整備した方が良いように思います。
こんばんは。:)
まだまだスウェーデンの医療を支えるどころか、スウェーデンの患者さん達に支えられているinvandrareです(汗)。
暫く更新が無かったので体調でも悪くされたのでは、と少し気になっていました。
お子さん達本当に可愛いですね。2人一度にぐんと行動範囲が広がって大変と思います。今週は更に寒くなりそうなので、くれぐれもお身体大事にして下さい。
Satokoさん。
毎日に追われて、なかなかブログを開く時間もありません。気に掛けていただいて、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。
千葉県の泌尿器科医です.
日本でこういうデータはあるのでしょうか.おそらく日本の大学卒 → 国家試験合格 というのが 97% とか占めるのではないかと推察しますが・・・.
いつまで 1961 年に始まってから 50 年以上経過して制度疲労の著しい国民皆保険を続けていくのか.
今後,高度社会保障社会を目指す,というのでないならば,そろそろ医療に一部自由化という概念を持ち込んでもいいのではないでしょうか.保険で分子標的治療やロボット手術を行っている現場にいるとひしひしと感じます.自由化の一部として海外医師免許の適用が含まれれば,優秀な(そうでないひともいると思いますが)外国人医師が日本に来る機会も増え,今一度日本の医療を見直すいい機会になるのではないでしょうか.
I’m unplugged.先生。
コメントありがとうございます。おっしゃるとおり、日本では大多数が日本の大学卒だと思われます。
日本の医療システムは患者さんにはとても優しいシステムです。それを国民が理解せず、医療従事者にさらなる要求をするために、崩壊寸前、、、。
もしかすると、一回崩壊してみないと、国民の目が開くことはないのかも、とも思います。そうであれば、医療の自由化、外国人医師や海外医師免許の流用など、医師の輸入をすることは、良い刺激になりますね。
スウェーデンでは、分子標的治療もロボット手術も無料です。勿論、国民は高い税金を払っている訳ですが、日本のように個人で保険を掛けたり、病気の際の休業・失業による経済負担のリスクなど、総合すると、決して、日本人の負担はスウェーデン人の負担に比べて低くはありません。議論が外れますが、長続きするシステムのためには、アクセスを厳しくするしかないように思いますが、これも日本国民は納得しないでしょうね、、、。
こんにちは、初めまして。
いつも楽しく拝読しております。そして、時に考えさせられ、時に参考にさせていただき・・・ブログの更新を楽しみにしております。
さて、以前スイスで働いていたのですが仕事柄(日本で看護師、スイスの日系の学校で養護教諭をしておりました・・・只今語学その他色々頓挫して無職!先生と同じ1歳児の母です)病院、クリニック、歯医者など出入りしていました。そこでスウェーデン人のお医者さんの多いこと!田舎でその遭遇率ということは、かなりスウェーデン人の、語学の達者な、はしこい(お金稼ぐのが大好きな?)お医者さんたちは海外へ流出している模様です。
ですが働きに見合う稼ぎって大切ですよね~
またおじゃまします。
ぶくさん。はじめまして!
ブログを読んでいただき、ありがとうございます。スウェーデン人の医師がスイスに流出ですか!スウェーデンの医師のお給料は良くないからでしょうか?私としては、時間給にしてみれば日本よりも良いと思いますし、日本でのように死ぬほど働きたくないので、満足しています。
ぶくさんは、現在もスイスにお住まいですか?1歳児の子育ては結構大変ですよね。私も毎日へとへとです。
これからもよろしくお願いいたします。
お忙しい中お返事ありがとうございます。説明不足なコメントを残しすみません。すこし補足させてください。
スイス人の給料はびっくりするくらい高いので、たとえば友人のだんなより大卒の初任給が百万円くらいと聞きましたし、私の旦那より大学の教授ともなると城に住んでいる人もいると聞きました。
ですので、お医者さんとなればそれはそれは・・と働いているときは思ったのです。実際のお医者さんの給料は知りません。すみません。
ワタクシはかの地でスウェーデン人の旦那と知り合い、移住してきました。
まだまだスウェーデン社会に入り込めず格闘中です。
長々とおじゃましました。またブログの更新、楽しみにしています。
ぶくさん。そんなに凄いのですね~。
数年前まで同僚にスイス人の医師がいました。ご夫婦で同じ専門だったのですが、スウェーデンよりも随分勤務時間は長いと聞きました。ジュネーブなどは、スウェーデンよりも物価は高いとか。スウェーデンの医師の給料は良いとはいえませんが(最近の円安で、円に直すと少し高給取りになった気分になりますが)、勤務時間も短いし、休暇も長いので、私はこれで満足しています。アパートの購入時に発生した多額のローンにはストレスを感じていますが、、、(こちらも、スウェーデン人にならって、利子のみしか払っていないので、ローンは減らず、、、。)。
スウェーデン人のパートナーがいらっしゃるのですね!スウェーデン人の男性は優しくて、日本人女性とは良い組み合わせだと思います!
これからもよろしくお願いいたしますね!