本日、5月31日は1987年にWHOが定めた、国際禁煙デーです。
スウェーデンでは1994年7月に学校校庭での禁煙を定めたのを皮切りに、2005年6月には、レストラン、パブなどが全面禁煙となりました。生まれてこれまで一度たりとも吸ったことのない私にとっては、僅かなタバコの臭いも気になります。スウェーデンでの外食は決して日本のように美味しくはありませんが、タバコ臭のしない環境は、何と素敵なのでしょう。日本へ帰国して、レストランなどでタバコの臭いがすると、残念ながら、「なんて野蛮国な国なんだ。」と感じてしまいます。そんな日本を尻目に、スウェーデンでは最近、レストランの屋外席や、バルコニー、電車やバスの待合場所などでの禁煙を法制化する動きがあります(記事1・2)。
2011年のG7における喫煙率は、フランスの26.2%に続き、日本は23.9%で2位。続いて、イタリア(23.1%)、イギリス(21.5%)、ドイツ(21.9%)、カナダ(16.2%)、そして最下位はアメリカの16.1%。しかし、日本の23.9%という喫煙率は、日本人女性の低い喫煙率により引き下げられた値であり、2008年のデータで性別で比較すると、2位のフランスの30.6%に大差を付けて、日本人男性は39.5%とG7ではトップです。男性における国際比較では、ギリシャ(46.3%)、韓国(45.3%)、トルコ(43.8%)、日本(39.5%)、エストニア(38.6%)の順で、日本は堂々の世界第4位。対する日本人女性は、この数年常に喫煙率下位3位に入っており、2010年では12.1%。
OECDのデータによると、日本の最初のデータは1965年で、男性の喫煙率は何と82.3%。これは、OECDのデータでは他に例のない高い数字です。日本たばこ産業株式会社(JT)の前身は、日本専売公社であり、大蔵省から独立したもの。現内閣総理大臣からして、「18歳」から喫煙を始めたヘビースモーカーであり、日本男性の高い喫煙率は、JTの影響力を排除できず、また、禁煙する強い意思のない政治家の無能によるものであり、それが日本の文化でもあるのか。OECDのデータで興味をひいたのは、一般的に男性の喫煙率が女性のそれを上回る中、北欧諸国では男女の喫煙率が拮抗しており、2009年のデータでは、スウェーデンの男性の喫煙率は13.5%、対する女性は15%と、女性の喫煙率が男性のそれを上回る唯一の国であったということ。流石、男勝りのスウェーデン人女性。
タバコの起源は、新大陸(=古代アメリカ大陸)にあると考えられており、16世紀はじめには、すでに数種のタバコ属の植物が栽培されていたようです。ヨーロッパへは、新大陸を発見したコロンブスにより伝えられたとか。日本へも16世紀に南蛮貿易により伝えられました。もし、タバコの起源がごく最近であれば、「百害あって一利なし」のタバコは、麻薬や覚醒剤と同様の扱いになり、喫煙自体、法で禁じられたに違いありません。喫煙が肺癌の原因であることは良く知られていますが、泌尿器科領域でも、膀胱癌はヘビースモーカーに多い病気です。膀胱癌の仲間である、腎盂癌や尿管癌も同様であること、喫煙者の手術は高リスクであることなどから、患者さんには強く禁煙を勧めますが、なかなか喫煙をやめられない人も多いのが現実です。医師仲間をみると、日本の医師には喫煙者が多かったですが、スウェーデンでは非常に少ないという印象です。泌尿器科では知る限り、一人だけ。その代わり、snusという噛みタバコのようなものを使っている医師は複数います(大手メーカーSwedish MatchのHP)。
snusには、小さな袋に入っているものと、粉末を丸めて使うものとがあります。
いずれも、上唇と歯肉の間に挿入するのですが、殊に粉末タイプのものは、見るのも汚らしい。私にとっては臭いも吐き気をもよおすほど。
癌だけではなく、閉塞性肺疾患、虚血性心疾患など、喫煙の弊害をあげたらきりがありません。喫煙に関連した疾病により、どれだけ医療費が押し上げられていることか。私にとって喫煙者は、知能の低い野蛮人としか感じられません(汚い言葉で失礼します!)。殊に、喫煙の弊害を知っている医師の喫煙者はなおさらです。以前の上司であった教授がヘビースモーカーで、外科医、研究者としては尊敬していましたが、喫煙に関しては論外。禁煙のはずの院内で、教授室や医局は「治外法権」とのたまわっておられ、医局員は私も含めたんまりと副煙流に暴露されていました。スウェーデンでは、病院内の喫煙は勿論のこと、建物の出入り口での喫煙も禁じられています。それでも、高カロリー輸液の点滴袋をさげ、車椅子に乗った患者さんが、出入り口で喫煙しているのを良くみかけます。
少し前には、病院の出入り口にベッドに寝たままの患者さんが降りてきて、タバコを吸っていたのを目撃し、驚愕したのでiPhoneで激写。そこまでして、タバコが吸いたいか、、、。
少し脱線しますが、日本で現在、生活保護の患者さんにジェネリック薬品を優先させるとか、医療費の一部自己負担をさせるとかという論議がなされていますが、私はどちらも賛成。この話題に関してはまた取り上げたいと思っていますが、スウェーデンでは、年間2200クローネを上限として外来処方薬の自己負担が決められていますが、これを超えた場合、医学的理由がなければ薬価の低いジェネリックが優先されます。ジェネリックの処方を拒否した場合、上限に関わらず自己負担となります。生活保護者に関しても、たとえ、戦争難民であっても、減額された外来受診料や処方薬に対する自己負担が発生します。このようなスウェーデンの状況を鑑みると、日本の生保患者に対する医療費免除は、直ちにやめるべきで、これにより、通常より高い生保患者の受診率は抑制され、生活保護費の半分を占める医療費も抑制されることでしょう。税金を納めている低所得者よりも、生活保護者の方が高額の医療を受けることができたり、使途自由な生活保護費で何万円ものタバコを購入し病気になる生保患者の存在は、矛盾以外の何者でもありません。
国際禁煙デーの存在はあまり知られておらず、メディアも報道することが少ないようですが、スウェーデンでの議論が進んで、是非、レストランの屋外席やバルコニーでの喫煙が禁じられるようになってほしいものです。喫煙者が病気になるのは自己責任ですが、非喫煙者に副煙流の吸入を強いることは、言ってみれば殺人行為に近いといえるのですから。愛煙家の方、ごめんなさい。
100%agreeです。前立腺がんとはそれほど強い関連ないのではと思っていましたが昨年のJAMA. 2011;305(24):2548によると喫煙は心血管系の死亡だけでなく前立腺がん死や再発とも関連があると。隠れて吸うのまで止めろとは言いませんが、医者たるものがどうどうと関係ないと言い放ち、非喫煙者のいる場所で吸うのはさすがに止めて欲しいです。
鉄鉢袋先生。前立腺癌とも関係があるのですねー。本当に百害あって一利なしですね。喫煙者が健康を害するのは自業自得ですが、非喫煙者に対する配慮は欲しいです。