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HIVがスウェーデンに上陸したとき

記事にしたいことは沢山あるのですが、仕事と双子の世話で毎日一杯一杯です。妊娠したことは日本の家族には内緒にしており、帝王切開が無事に済んでから電話連絡して驚かせましたし、出産後も誰にも頼らずにきましたので、それなりに大変です。診療所などでも、初産だし、双子だし、未熟児でもあるということで、第三者の手を借りるように勧められましたが、親の手を借りないというのが私の希望でもあり、父親の親も遠方在住である上、脳梗塞の後遺症に悩んでいるということもあって、借りる手がないのも現状でした。

昨日、SVT(スウェーデン国営放送)で放映した、HIV感染症、AIDSに関する番組はとても興味深いものでした。

Smittad – när hiv kom till Sverige(感染、HIVがスウェーデンにやってきたとき)

というタイトル。

AIDSは後天性免疫不全症候群の略であり、HIV感染により免疫不全を起こした場合の病名です。最初の症例報告は同性愛の男性に発症したもので、1981年。1983年にウイルスがフランス、パスツール研究所で発見され、そのフランスの研究者たちは2008年にノーベル医学・生理学賞を受賞しています。日本では1985年が最初。私が医学生だった頃、丁度、「カポジ肉腫」などが教科書に載るようになりました。日本では、主に、同性愛者、そして血液製剤を必要とする血液疾患患者、母子感染などが感染経路。もともとの起源としては、チンパンジーのウイルスが突然変異して人間に感染したという説が有力のようです。

スウェーデンでも80年代に最初の症例報告がありましたが、やはり同性愛者に多く、針を共有する薬物依存者、そして、感染者と性的接触をした人などに広まってゆきます。1990年代中ごろに、有効な抗ウイルス剤が開発され、その多剤併用によりAIDSによる死亡率は激減しますが、それまでは致死的な病でした。私が最初にAIDS患者を診察したのは、研修医の頃。当時、耳鼻科医として働いていた私は、小児科病棟から往診を依頼されました。血友病の小学校低学年の男の子で、輸血によりHIV感染を来しました。鼻出血が止まらないので何とかしてほしいという依頼でした。往診すると、隔離された個室で、鼻から大量に出血している小さな男の子がベッドに横たわっていました。個室の前室で、担当医が、「気を付けてください。死んでもそれは仕方がありません。」と。研修医の私には、あまりに重過ぎる言葉でしたが、80年代の当時は、AIDS発症はすなわち、死を意味したのですから、致し方なかったのかもしれません。帽子に目を防御できるマスクを2重にし、ガウンも手袋も2重という重装備で治療にのぞみ、持参したボスミンや鼻用ガーゼを使って何とか止血に成功しました。しかし、あのときは恐ろしかったし、あまりのことに涙が出たのを覚えています。

現在、診療をしていると、ときどきHIV陽性の患者さんを診察したり、ときには手術をしたりすることがあります。現在では、滅多なことでは感染しないことがわかっていますので、動揺しませんが、やはり、手術になると緊張します。20年以上医者として働いていると、針刺し事故などは何回も経験済み。診察する全ての患者さんのほとんどはHIVテストをしていませんから、針刺し事故のあとは落ち込みました。スウェーデンでは1回、前立腺生検をする際に、通常はエコーガイドでの穿刺のみ行うのですが、そのときは、直腸診上、硬結があったため、そこから生検を試みたため、自分の指を刺してしまいました。すぐに事故のレポートを提出して何回か検査し、幸い、何の感染も起こしませんでしたが、、、。日本では、手術のために入院する患者さんには、HIVテストをする施設が多いですが、スウェーデンでは行いません。医療従事者の安全のためにも、各種感染症は検査するべきではないかと思いますが、やはりコストの問題なのでしょうか?医療従事者が入職する際にも、HIV検査はやっていなかったように記憶しています。一方、MRSAなどは検査しました。私自身は、B型肝炎のワクチンを打っているので、その抗体が陽性である以外は陰性。度重なる不妊治療のたびに、HIVを含めた感染症の検査をしています。感染者は、医療機関を受診する際などは申告することが義務付けられていますが、たとえば、美容院などではどうなのでしょう?しかし、未だに偏見が多くあるのも事実です。スウェーデンでさえも、HIV陽性患者さんの半分は秘密にしているそうです。

プログラムでは、スウェーデンのAIDS治療に携わってきた医師や、患者さんなどが登場します。まだ治療法も無かった頃は、政治家たちの中では、「同性同士の性的接触の禁止」などを法制化しようという動きもあったことが紹介されています。薬物濫用の取り締まりはできても、同性愛の取り締まりは難しいという議論もありました。AIDSで亡くなった患者さんのご遺体は、黒いビニール袋に入れられ、消毒され、まるでごみのように扱われていたそうです。80年代のスウェーデンや医療現場を知ることもでき、非常に興味深い番組でした。

AIDS関連で、

「Torka aldrig tårar utan handskar」(手袋をせずに涙をぬぐわないで)

という映画があります。SVT playで途中まで見ましたが、これも非常に興味深いので、そのうち記事にしたいと思います。題名から、「涙でHIV感染が起こると信じられていた」ということが想像され、何とも心が痛みました。

 

多剤併用で良い予後が期待されるHIV感染ですが、細菌感染症と抗生剤と同じように、耐性HIVの発現なども問題になるのかもしれません。現在のところ、抗ウイルス薬で完治する訳ではなく、生涯、服用が必要なのです。

2 comments to HIVがスウェーデンに上陸したとき

  • ヒマワリ

    Torka aldrig tårar utan handskar見ました。重いストーリでしたね。私の親しい友人がゲイなので、このドラマを見ていて、いろいろ思うものがありました。スウェーデンは、日本よりも同性愛者にとっては、住みやすい環境かと思いますが、それでも、彼らは公にしていないなのが、実情かと思います。エイズ薬は、開発されていますが、あくまで進行を遅らせるのであって、完治の治療薬はありませんものね。

    • ヒマワリさん。私も周辺にホモセクシャルの友人が何人もいます。HIV感染者の多くがホモセクシャルであったことから、さらに彼らへの偏見が強まってしまったことは、実に不幸で不平等だと思います。こういった感染症に対する偏見が世の中からなくなることは、まずないでしょう。どんな感染症に対する治療も、これまでいたちごっこで、なくなることはないですね。HIVは感染力も弱いですし、感染しないようにすれば良いのですが、、、。

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