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山中先生のノーベル賞記念講演

今日、15時より、カロリンスカ研究所にて、ノーベル医学・生理学賞の記念講演がありました。

残念ながら、私は家で子守りをしなければならず、講演には行けませんでしたが、Live webcastでオンタイムで拝聴することができました。

映像からも、相当緊張なさっている様子が伝わってきましたが、ゆっくりとわかりやすく、いくつものジョークを交え、笑いを誘っていました。ノーベル賞発表の前日に、カロリンスカの学長と同席する機会があって、別れ際にウインクをされた気がしたこと、それがノーベル賞を意味するかのようなジョークもありましたが、投票は発表当日の朝にされるため、学長が前日に知っているはずはないのですが、何とも可愛らしい山中先生のジョークで始まりました。そして、良く知られているジョーク、「外科医として才能がないと悟って研究者に転向した」という逸話。

講演は3部構成で、最初は、大阪市立大学での大学院生時代と、サンフランシスコでのポスドク時代のお話。大阪では、血圧のコントロールについての研究だったため、ポスドク先も、心臓血管関係の研究所だったとか。しかし、そこで彼が作ったノックアウトマウスのお腹が大きくなり、テクニシャンから、「雄も含めて全てのマウスが妊娠した!」という報告を受けて調べたところ、肝臓癌を発症していたという発見から、心臓血管系の研究所であったのにもかかわらず、肝臓癌の研究をすることになったこと、そしてその遺伝子に関連する別の遺伝子が、肝臓癌の癌抑制因子であったことをつきとめます。この頃から、ES細胞に興味を持ったようですが、事情で日本へ帰国。その後PADに罹患したという話になります。PADとは山中先生の造語で、「Post America Depression」のことだそう。かなり落ち込んで、研究者をやめようとさえ思ったそうです。ところが、それまではES細胞といえばマウスに限られていましたが、人間のES細胞が作成され、その論文を読んで、再びサイエンスへの情熱が蘇ったと。そして、奈良先端研にPIのポジションを得たこともあって、PADから立ち直ったのだそうです。目指すプロジェクトは、胚から幹細胞を作るES細胞ではなくて、体細胞から幹細胞を作ることで、それに必要な因子を発見することでした。胚を用いると、どうしても倫理面の問題を避けて通ることは出来ないため、体細胞を用いたいという説明で、ジョージ・ブッシュとローマ法王が会談している写真が出て、ここでも笑いが聞こえました。幹細胞に関するスライドの中で、「不老不死、immortality」のところが、「immorality」となっていて、この間違いに触れたときは、聴衆は爆笑していました。

iPS細胞が、2006年の発見から、6年という短期間で受賞したのは、近い将来、再生医療として臨床応用が可能であるためで、どのような治療法に結びつくのかということでまとめたあと、謝辞がありました。謝辞の最後は、家族に対してでした。今回同行しているのは、夫人と医学生である二人の娘、そして、夫人の母上ということでした。山中先生ご自身の母上は同行せず、それは、「あなたの英語はひどいから行かない。」と理由からだと笑わせましたが、既に亡くなっている二人の父上、つまり、山中先生自身と、山中夫人の父上に対する謝辞もあり、お人柄が伺えるようでした。

講演の始まる2時間前には、すでに講堂の前には、講演を聴きたい人で100メートル以上の列が出来ていたそうで、今年の賞のインパクトの大きさを感じます。アルフレッド・ノーベルの没日であるNobeldagenは12月10日。もうすぐです。山中先生の前回2010年の渡瑞の際には、アイスランドの火山灰でスウェーデンに足止めをくった山中先生ですが、今回はこれ以上の大雪にならないことを願うばかりです。

 

将来は研究者か!?

「わたし」は山中先生の講演に釘付け!

男性の生殖機能にも賞味期限あり

最近でこそ、40代の出産もあまり珍しいものではなくなりました。女性の社会進出に伴い、初産年齢は年々上がっています。それとともに、初期は「試験管ベビー」と呼ばれ、IVFで妊娠したことは秘め事とされる傾向がありましたが、現在ではIVFもごく一般的となり、IVFにより母親となった女性が恥じる必要がなくなったことは、その一人としても喜ばしいことだと感じています。

しかしながら、女性には、生殖機能を失う明らかな「賞味期限」があって、その点で、男性と比較すると非常に辛い思いをすることも多く、自然の摂理とはいいながら、不公平だと天を恨む女性も少なくないはずです。子供に恵まれずに離婚して、男性は若い女性と再婚し子供をもうける、、、。元夫の母親に、「もう少し若い人と結婚すればすぐに子供ができるわよ。」と言われて結局離婚することになった私も、当時、悔しい思いをしたものでした。その言葉が、しかも女性が発した言葉であったことで、深く傷つきました。女性の持つ卵子は、既に生まれたときに全て存在しており、思春期に排卵が始まると、その数は減る一方です。また、卵子の質が低下するため、受精や着床、そして妊娠にいたる確率が小さくなります。また、21番染色体のトリソミーであるダウン症候群の危険性が上がることは、良く知られていることです。しかしながら、子供が親から受け継ぐDNA異常は、そのほとんどが父親からのものであるという論文が出ました。

 

 

8月23日付のNatureに発表され、インパクトの大きさから、表紙に取り上げられました。

 

研究は、アイスランドの deCODE Geneticsの Kari Stefanssonらによるもの。

このグループは、24832組の父ー母ー子供、85289人のアイスランド人から採取したDNAについて、約2500のマイクロサテライトについて検討し、これらが高頻度で変異しているということを明らかにしています。今回の論文では、78組の父ー母ー子供、合計219人について、DNAの塩基配列の解析をしました。子供がのちに罹患する疾患、たとえば、自閉症や統合失調症といった疾患にかかるリスクは、父親の年齢が上がるとともに上昇するというデータです。20歳の父親はおよそ25の変異があるのに対し、40歳の父親は65であり、1年父親になるのが遅くなるとともに、2つ多く変異が子供へ受け継がれるという計算になります。親から子供へ受け継がれる変異の実に97%が父親由来なのだそうです。精母細胞は活発に分裂し、常に新しい精子が作られますが、高齢化するとともに精子のDNAの変異頻度が高くなります。そして、今回の調査では、子供が自閉症や統合失調症に罹患する頻度が、父親の年齢が高くなるとともに高くなることがわかりました。

Natureに掲載されたオリジナルのグラフをわかりやすく書き直したものが、The New York Timesにありましたので、お借りしました。

 

The Wall Street Journalでは、父親、母親双方のDNAの変異の頻度の年齢変化をグラフにしているので、こちらも拝借。女性の年齢と、子供のDNA変異の頻度は無関係という結果。

 

今回のデータでは、父親のDNAの変異の頻度と、子供の精神・神経疾患の頻度が相関することより、父親の遺伝子が子供の脳の発達に関与している可能性が示唆されます。これまでにも、父親の年齢と精神・神経疾患の関連についての報告、また、その他の疾患、たとえば、癌(乳癌など)についても関連があるという報告もみられます。DNAの変異が常に子供の異常に関連する訳ではありませんが、これらの報告より、女性が若い時点の卵子を凍結するのと同様、男性も精子を凍結すると良いのではないか、というような議論も出ています。

私は所謂、フェミニストではありませんが、これまで、男女差別の多い社会でもがいてきたこともあって、男性の生殖機能にも賞味期限があるということには、多少の安堵の念を覚えてしまうことは否めません。生殖機能の盛りを過ぎた女性は、「不妊、挙児断念」となれば、その結果子供にDNAの異常を伝えることはありませんが、男性については高齢でも、「挙児」に至る可能性が少なくないため、子供に異常を伝えてしまうということになります。

今回の論文は、世の中の男性諸氏に、男性の生殖機能の賞味期限を考えるきっかけを与えたに違いありません。

安全で合法な中絶は女性の権利 「Safe and legal abortion is a woman’s human right」

2008年にはおよそ8600万人の女性が望まぬ妊娠をしているそうですが、そのうち妊娠を中絶しているのは半数強の4600万人。WHOのデータによれば、2160万人の女性が安全ではない中絶手術を受けています。そして、安全ではない中絶により命を落とす女性はおよそ4万7千人。望む望まぬに関わらず、妊娠に伴うリスクを背負うのは常に女性。この不平等は、女性が生まれながらにして受け入れなければならないものです。それでは、少なくとも、望まない妊娠継続を中止する処置を、安全に合法的に受ける権利が、全ての女性に与えられてしかるべき。しかし、今なお、中絶が違法である、または、制限されている国が存在します。

 

赤く表示されている国は、「いかなる理由があっても」中絶は違法、あるいは、「母体の救命に必要と考えられる」以外の中絶は違法としている国々です。南米やアフリカ、中東やアジアの一部に多くみられます。ヨーロッパでは、アイルランドとマルタ。チリなどでは、強姦による妊娠の中絶や、母体の救命に必要な中絶であっても違法であり、法を犯せば収監されます。

最近、アイルランドで、「胎児の生存存続が望めない妊娠の中絶が、母体の救命に必要であったにも関わらず行われなかったことにより、女性が命を落とす。」という悲劇的な事件がありました。アイルランドは敬虔なカソリック教徒で知られる国。

死亡したのは、アイルランドに住む31歳のインド人歯科医。

10月21日に背部痛で病院を受診。その際、妊娠17週で、既に流産が進行しており、中絶手術が必要でした。

‘Sorry, can’t help you. It’s a Catholic country. Can’t help you. It’s a Catholic team.’

胎児の心拍が確認されている限り、「カソリックの国では中絶は許されない」という理由で、医師は中絶手術を拒絶しました。彼女はヒンズー教徒であるにもかかわず。その後、胎児が死亡したため掻爬術を行いましたが、女性は10月28日に、大腸菌とESBLによる敗血症のため死亡。

“They knew they couldn’t help the baby. Why did they not look at the bigger life?”

と、彼女の夫は語り、

“In an attempt to save a 4-month-old fetus they killed my 30-year-old daughter. How is that fair, you tell me?”

と、彼女の母親は憤りました。

 

アイルランドでは、「母体の救命のための中絶」は過去の判例で認められていますが、それは法制化されていないこと、また、医師が「母体の救命に中絶が必要かどうか」を判断することを敬遠するため、事実上、救命のために必要であっても中絶がなされないことが多いようです。実際、国民のわずか54%が「母体の救命のための中絶の法制化」に賛成だということは驚きです。今回の悲劇は、犠牲者がインド人だということもあり、アイルランド国内だけでなくインドでも、アイルランドの中絶に関する法律に批判の声が高まっています。

 

以下、写真はhttp://www.guardian.co.uk/から拝借。

 

 

母体の救命のための中絶は当然行われるべきで、それは、「女性の権利」以前のものです。それ以外の中絶に関しては、中絶の是非は別として、妊娠した女性自身の意思が尊重されるべきだと、私は考えています。よって、アメリカなどでの「反中絶」運動は、全くもって理解できません。進化論を受け入れられないキリスト教信者に対しても同じように感じます。

妊娠・出産は女性だけの生理であり、それに伴うリスクを負わなければならない性差による不平等は仕方がないとしても、中絶の意思決定と、安全で合法な中絶手術を受けられる権利は、全ての女性に保障されるべきだと思います。

 

 

間違い探し

少し前の話ですが、、、。

スウェーデン贔屓の姪っ子が、「swedish quality」と評して笑ってくれました。

 

しっかりしてね、Aftonbladet!

HIVがスウェーデンに上陸したとき

記事にしたいことは沢山あるのですが、仕事と双子の世話で毎日一杯一杯です。妊娠したことは日本の家族には内緒にしており、帝王切開が無事に済んでから電話連絡して驚かせましたし、出産後も誰にも頼らずにきましたので、それなりに大変です。診療所などでも、初産だし、双子だし、未熟児でもあるということで、第三者の手を借りるように勧められましたが、親の手を借りないというのが私の希望でもあり、父親の親も遠方在住である上、脳梗塞の後遺症に悩んでいるということもあって、借りる手がないのも現状でした。

昨日、SVT(スウェーデン国営放送)で放映した、HIV感染症、AIDSに関する番組はとても興味深いものでした。

Smittad – när hiv kom till Sverige(感染、HIVがスウェーデンにやってきたとき)

というタイトル。

AIDSは後天性免疫不全症候群の略であり、HIV感染により免疫不全を起こした場合の病名です。最初の症例報告は同性愛の男性に発症したもので、1981年。1983年にウイルスがフランス、パスツール研究所で発見され、そのフランスの研究者たちは2008年にノーベル医学・生理学賞を受賞しています。日本では1985年が最初。私が医学生だった頃、丁度、「カポジ肉腫」などが教科書に載るようになりました。日本では、主に、同性愛者、そして血液製剤を必要とする血液疾患患者、母子感染などが感染経路。もともとの起源としては、チンパンジーのウイルスが突然変異して人間に感染したという説が有力のようです。

スウェーデンでも80年代に最初の症例報告がありましたが、やはり同性愛者に多く、針を共有する薬物依存者、そして、感染者と性的接触をした人などに広まってゆきます。1990年代中ごろに、有効な抗ウイルス剤が開発され、その多剤併用によりAIDSによる死亡率は激減しますが、それまでは致死的な病でした。私が最初にAIDS患者を診察したのは、研修医の頃。当時、耳鼻科医として働いていた私は、小児科病棟から往診を依頼されました。血友病の小学校低学年の男の子で、輸血によりHIV感染を来しました。鼻出血が止まらないので何とかしてほしいという依頼でした。往診すると、隔離された個室で、鼻から大量に出血している小さな男の子がベッドに横たわっていました。個室の前室で、担当医が、「気を付けてください。死んでもそれは仕方がありません。」と。研修医の私には、あまりに重過ぎる言葉でしたが、80年代の当時は、AIDS発症はすなわち、死を意味したのですから、致し方なかったのかもしれません。帽子に目を防御できるマスクを2重にし、ガウンも手袋も2重という重装備で治療にのぞみ、持参したボスミンや鼻用ガーゼを使って何とか止血に成功しました。しかし、あのときは恐ろしかったし、あまりのことに涙が出たのを覚えています。

現在、診療をしていると、ときどきHIV陽性の患者さんを診察したり、ときには手術をしたりすることがあります。現在では、滅多なことでは感染しないことがわかっていますので、動揺しませんが、やはり、手術になると緊張します。20年以上医者として働いていると、針刺し事故などは何回も経験済み。診察する全ての患者さんのほとんどはHIVテストをしていませんから、針刺し事故のあとは落ち込みました。スウェーデンでは1回、前立腺生検をする際に、通常はエコーガイドでの穿刺のみ行うのですが、そのときは、直腸診上、硬結があったため、そこから生検を試みたため、自分の指を刺してしまいました。すぐに事故のレポートを提出して何回か検査し、幸い、何の感染も起こしませんでしたが、、、。日本では、手術のために入院する患者さんには、HIVテストをする施設が多いですが、スウェーデンでは行いません。医療従事者の安全のためにも、各種感染症は検査するべきではないかと思いますが、やはりコストの問題なのでしょうか?医療従事者が入職する際にも、HIV検査はやっていなかったように記憶しています。一方、MRSAなどは検査しました。私自身は、B型肝炎のワクチンを打っているので、その抗体が陽性である以外は陰性。度重なる不妊治療のたびに、HIVを含めた感染症の検査をしています。感染者は、医療機関を受診する際などは申告することが義務付けられていますが、たとえば、美容院などではどうなのでしょう?しかし、未だに偏見が多くあるのも事実です。スウェーデンでさえも、HIV陽性患者さんの半分は秘密にしているそうです。

プログラムでは、スウェーデンのAIDS治療に携わってきた医師や、患者さんなどが登場します。まだ治療法も無かった頃は、政治家たちの中では、「同性同士の性的接触の禁止」などを法制化しようという動きもあったことが紹介されています。薬物濫用の取り締まりはできても、同性愛の取り締まりは難しいという議論もありました。AIDSで亡くなった患者さんのご遺体は、黒いビニール袋に入れられ、消毒され、まるでごみのように扱われていたそうです。80年代のスウェーデンや医療現場を知ることもでき、非常に興味深い番組でした。

AIDS関連で、

「Torka aldrig tårar utan handskar」(手袋をせずに涙をぬぐわないで)

という映画があります。SVT playで途中まで見ましたが、これも非常に興味深いので、そのうち記事にしたいと思います。題名から、「涙でHIV感染が起こると信じられていた」ということが想像され、何とも心が痛みました。

 

多剤併用で良い予後が期待されるHIV感染ですが、細菌感染症と抗生剤と同じように、耐性HIVの発現なども問題になるのかもしれません。現在のところ、抗ウイルス薬で完治する訳ではなく、生涯、服用が必要なのです。

ストックホルムより速報!山中教授ノーベル医学・生理学賞受賞!!!!

「受賞は確実、それがいつなのか」、という山中先生へのノーベル賞。思ったより早くやってきました!!!

おめでとうございます!!!!とても嬉しい!!!!今年はあまりに嬉しすぎる年になりました!!!

 

国際女性デーに寄せて

スウェーデンに移住してから知った、国際女性デーの存在。毎年、3月8日です。

職場に転がっていたMetroを何気なく開くと、興味深い記事が載っていました。

(日本で言えば)男女共同参画大臣とでもいう肩書きの、jämställdhetsministerがFPのNyamko Sabuni(写真)が、「スウェーデンは男女平等ではない。」というコメントを出しました。

 

2011年の国連の統計(UNDP:s Gender Inequality Index )によると、

1位: スウェーデン

2位: オランダ

3位: デンマーク

4位: スイス

5位: フィンランド

以下、6位、ノルウェー、7位、ドイツ、8位、シンガポール、9位、アイスランド、10位、フランスの順になります。

それにもかかわらず、スウェーデンが男女平等の国である(ja)と答えたのは、女性(kvinnor)で9%、男性(män)で26%、全体では18%にしか過ぎません。大都市(Storstad)ではそれ以外の地域(övriga sverige)より高い傾向があります。流石に、「全く平等ではない(inte alls)と答えた人は女性でも11%にとどまりますが、かなりの不平等感がある(Nej、inte helt)と答えた人は、男女ともに高い割合を示しています。

日本から来た私にしてみれば、日本と比べると、非常に男女平等だと感激することが多いのですが、スウェーデン人にとってはまだまだのようです。特に、育児に対する女性の負担が大きいことや、賃金の男女格差が問題のようです。しかし、子供を産むのは女性だし、出産や育児に関する女性の負担が、男性に比べて大きいのは生物学的に考えても仕方がないことのようにも思いますが、専業主婦なるグループが未だに存在する日本と異なり、スウェーデンでは、殆どの女性が勤労しているという事実を考えれば、男女平等でないという評価も納得できるように思います。スウェーデンにおける専業主婦の割合を示す統計を探すのは非常に困難なのですが、移民を除く通常のグループに限って言えば、専業主婦は殆ど存在しないといって良いと思います。日本では、「夫が高収入」などの理由で専業主婦に甘んじている女性も多いですが、スウェーデンでは、高収入の夫であっても妻も働いているのが当たり前です。日本で問題になっている、「三号被保険者」の存在など、スウェーデン人には理解できません。

 

他業種と異なり、私はありとあらゆる階級の人間と毎日会っていますが、その中で出会う専業主婦(hemmafru)のほぼ全ては移民で、特に頻度が高いのがモスリムです。子沢山の人も多く、子供に対する手当てだけで、何年間も食いつなぐことができるという事情もあるようですが、長期間スウェーデンに住んでいてもスウェーデン語が話せず、外来受診には通訳をつける(勿論、公費です!)人がかなりいるのには、驚きです。やはり、スウェーデンに移住した以上、言語を学び、勤労して税金を納める努力をすることは、人間として当たり前のことだと思うのですが、、、。

 

女性が経済的に自立しているということは、男女平等の社会を形成する上で、必要不可欠なことだと思います。勿論、女性を支援する社会システムの確立も重要ですが、女性側の姿勢として、自立の努力なしに不平等を唱えるのは筋違いだと考えています。女性が経済的に自立していることで、スウェーデンでは離婚も多い。それを批判する人もいますが、「離婚したくても、経済的に自立できないが故に離婚できない」ことの方が、女性にとっては悲劇なのではないでしょうか。

 

この国際女性デーに合わせたかのように、スウェーデンを代表するカップルの別居が報道されました。

スウェーデンの若き首相、Frederik Reinfeldt(46歳)と、同じ穏健党の政治家である妻のFilippa Reinfeldt(44歳)。二人は若い時から政治に関わり、出会いは1989年、穏健党の青年部で、時に、Frederikは24歳。その後、1992年に結婚し、現在、18歳、16歳、11歳の3人の子供がいます。長男は同じく穏健党の青年部で活躍しています。今年、結婚20周年を迎える二人。若いながらそつなく首相の任務をこなすFrederikと、自立する女性Filippaは、まさにスウェーデンの顔ともいえるお似合いのカップルで、不和の噂なども今までありませんでした。既に、家族がそれまで住んでいた邸宅は売却され、カップルは別居しています。離婚届が受理されるまでに6ヶ月の考慮期間があるので、まだ離婚した訳ではなく、離婚に至る事情も殆ど報道されていません。

その後の新聞で、「Jag mår jättebra(とっても気分がいいわ)」という見出しの記事がありましたが、実は離婚をしたかったのはFilippaの方だったようです。First ladyということで、自身の政治家としての活動に制限が加わることも多く、FrederikはFilippaには、First ladyを優先してほしかった模様。Filippaは所謂、県の政治家で、医療に関する分野の仕事をしています。2007年にストックホルム地域の診療所だったSerafenを数人の医師グループにに694 500クローナで売却され、最近、そのSerafenが2千万クローナでCapioグループに転売された報道により(記事)、Filippaの最初の決断が大きく非難されました。その際、FrederikはFilippaを支持しない立場を取っていましたが(記事)、それが今年の1月で、このことも別居を加速させたのかもしれません。

因みにSerafenは、ストックホルム市庁舎の真向かいにあり、歴史のある建物の内部を改造して作られた大きな診療所。婦人科の定期健診などでは私もお世話になっています。

 

Fast ladyが離婚を希望するなんて、日本ではありえない話。その是非は別として、スウェーデン人女性の自立心を感じたニュースでした。

去年のノーベル賞の晩餐会では、仲睦まじい姿を見せていたのに、あれが最後だったのですね。

豊胸用シリコンで発癌?

日本で働いていた頃、健康診断のアルバイトを定期的にやっていました。診断の中には、聴診や触診なども含まれるのですが、その中で、豊胸手術をした女性も沢山診察しました。私自身、どちらかというと貧乳に近いのですが(笑)、年を取ると確実に重力に逆らえなくなる巨乳より、貧乳の方が醜くないと信じていること、健康診断で見る「シリコン胸」には違和感しか感じないことから、乳癌術後の乳房形成術以外の豊胸術には存在価値を認めていません。「シリコン胸」は、露出がほどほどの洋服を着用した場合には、確かに美しいこともあるかもしれませんが、露出すれば、「シリコン胸」だということは素人目にもわかるものです。

 

良い例が、Victoria Beckham。前後の写真を比較しなくても、術後の膨らみは明らかに不自然です。もっと露出を抑えればわからないのに、、、。

 

健康診断では、臥位にして診察をすることがありますが、通常の胸は重力に従って外側に流れますが、「シリコン胸」はそうではありません。美容形成外科医ではない私にも、すぐにわかってしまいます。それに、不自然なので美しくありません。

クリスマス前に、「豊胸用シリコンによる発癌」についてのニュースがフランスで流れました。

PIP(Poly Implant Prothese)というフランスの会社は、一時全世界で第3位のシェアを持っていたようですが、医療用グレードには達しない工業用シリコンを使った疑惑で調査が入り2010年に倒産しました。PIPのシリコンによる豊胸手術を、全世界で30万人、フランスでは3万人の女性が受けていますが、劣悪な素材などの原因で損傷する率が高いのだそうです。

シリコンが損傷することにより発癌するリスクが高いことを理由に挙げ、今回フランス政府は、PIPのシリコンを使っている3万人に対して、無料で除去術を行うことを発表しました。発癌性は大きな問題ですが、豊胸術を受けた女性の中にはその不自然さに後悔している人も少なくないのでは、、、。

福祉を食い物にしたCaremaスキャンダル

スウェーデンにおいて、老人ホームなどの医療・福祉サービスはKommunの管轄下で、私的・公的機関が行っています。会社によるサービスは全体の15%ほどですが、年々増加傾向にあります。会社がKommunの委託を受けてサービスを提供する場合、サービスに対する報酬の多くはKommunによって、すなわち、Kommun税から支払われます。具体的には、ストックホルムにおいてCaremaは14の老人ホームと8つのホームヘルパーの拠点を有していますが、毎日最高200万クローナをKommunより得ることができます。

 

医療・福祉サービスを提供する会社で最も大きなものは、Carema。最近、Caremaのスキャンダルがニュースを賑わせています。

2005年にイギリスのベンチャー会社3iがCaremaを買収した時の値段は18億5千万クローネ。その後、2009年にAmbea-gruppen(スウェーデンのTritonとアメリカの KKRという二つのベンチャー会社が所有)に売却されたときの額は何と、5倍以上の83億クローネだったそうです。

2011-11-12DNより )

以前から、Caremaのサービスの質に関しては問題があったようですが、今回のスキャンダルのきっかけは、「秘密のボーナスプログラム」です。

 

Caremaは営利を追求することにプライオリテイーをおいており、利益が上がれば管理者のボーナスに影響する秘密のシステムがあるとのことです。利益第一にすると、サービスの質が低下します。そのため、入所者の死亡につながった事例もあるようですが、従業員の削減は勿論、あらゆるコストの削減が行われており、その一つである、「おむつ重量計測指令」については、11月に大きく報道されました(記事)。

 

おむつのコストを下げるために、従業員は使用済みのおむつの重量計測を行うように指示されていたそうです。おむつが100%近く濡れるまでは、おむつの交換をしてはいけないのだそうです。

この「秘密のボーナスプログラム」によって、最も高額なボーナスを得た人たちは、、、。

庶民にはとても縁のない、億単位のボーナスを得ています。

その後、コスト削減のためのいろいろなからくりも暴露されました。

TritonとKKRに、3iからCarema Careが2009年に売却された際、通常税申告は、1月から12月の計算で行われるものを、売却後の2009年の5月1日から12ヶ月と変更し、このことにより、2億クローネの節税(脱税?)をしています。

さらに、TritonとKKRの属するAmbeaグループ内での資金の貸し借りにより、利益を最小限にするとともに、法人税が12%という「Skattteparadis(税金パラダイス)」であるルクセンブルグの会社に送金することにより、年間1.4億クローネの節税をしていることになるそうです。

 

この事件を受けて、医療・福祉サービスを提供する会社の利潤追求の禁止や、サービスの質の確保ほ方法など、政治家の間でも議論が始まっています。「弱者」と「税金」を食い物にして利潤を追求するなど、絶対に許せることではありません。日本の医療・福祉業界でも、大きな問題となっていますが、犠牲になるのは常に弱者です。そして、日本の場合は、膨張し続けるコストが、「医療崩壊」を起こす危惧さえ孕んでおり、スウェーデンよりも問題は大きいと言わざるを得ません。

 

Madame Curie(キュリー夫人)のノーベル化学賞から100周年

世界で最も美しいとも言われるスウェーデン国王の次女、Madeleine王女は、昨年婚約破棄をして以来(記事)、傷心を癒す目的もあって、ニューヨークに居を移しています。最近では、新しいボーイフレンドも出来たようで、ニューヨークでショッピングをしたり、カフェでタバコをふかしながらお茶をする姿も報道されています。ニューヨーク生活が合っているのか、国王一家が関る行事の前になると、Madeleineが帰国するのかどうかが取り沙汰されますが、今年のノーベル賞関連行事は欠席するということでした。

 

その代わりに、Madame Curieの二つ目のノーベル賞100周年を記念しての行事がニューヨークで行われ、それに出席することになったようです。Madame Curieは女性で初めてのノーベル賞受賞者。1903年に夫のPierre Curieと共に物理学賞を受賞、その数年後に、Pierreは荷馬車に轢かれて死亡。夫を亡くしても彼女の研究に対する情熱は消えることなく、「ラジウムとポロニウムの発見」により、1911年に化学賞を受賞します。radioactivity(放射能)は彼女の作った言葉だそうですが、当時は、放射線の効用だけで、副作用については知られておらず、放射線障害によると考えられる再生不良性貧血で命を落とします。研究者とは何か、全く知らなかった子供の頃、彼女の伝記を夢中になって何度も読みました。Madame Curieが夫のPierreと一緒に初めて見た、純粋ラジウム塩の青い光。彼女は「妖精のような光」と形容したそうですが、この場面には鼓動が高まったことを良く覚えています。

 

そんなMadame Curieのノーベル化学賞から100年ということで、若い女性研究者などのための会が12月10日ニューヨークで行われ、Madeleine王女が出席したそうです。彼氏がいるニューヨークからスウェーデンへ帰りたくない彼女には丁度良かったかもしれません。

 


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