ロボット前立腺全摘の術者を独立してするようになって1年以上が経ちました。1年間の執刀数は約100件程度。カロリンスカではこれが普通の数ですが、日本では一施設で100例ある施設はほとんどないと思われます。したがって、これだけの数を執刀する医師もいない訳ですが、少ない症例数で到達できる手術のレベルは限られるため、症例が分散してしまう日本のシステムは問題があるなと感じます。
日本と異なり、予定時間を超過してしまう手術になると、2例目、3例目がキャンセルされることも多々あるため、手術にはスピードも求められます。また、常に慣れた助手がつくとは限らず、慣れていない助手があたると、あっという間に30分、1時間近くの手術時間のロスがでることもあります。最近、新人が助手についたとき(もちろん、慣れた助手がもう一人監督としてついているのですが)、心臓が止まりそうになったことがありました。腹腔鏡用の器械を間違ったアングルで挿入したため、リンパ節郭清をした、腸骨動静脈の背側につっこんで、私が知らないあいだに動静脈を持ち上げていたのです。幸い血管は無事でしたが、もし血管を損傷したら直ちに開腹して止血しつつ血管外科を呼ぶ事態にもなりかねず、最悪、損傷側の足を失うなどということにも、、、。ロボット手術においては、術者は患者さんから離れたコンソールに座っているため、患者さん近辺のことは全く見えません。開腹手術でしたら、助手が失態をおかしそうであればすぐに対応できるのですが、、、。今回はロボット手術における怖さを感じました。
こんなことがあると、手術が終了すると、通常以上に疲労を感じます。すでに熟練した術者の仲間入りをしたために、割り当てられる症例も難しいものが増え、1日2例執刀しただけでも十分な疲労感。しかし、帰宅して少しゆっくりしたくても日々活動的になっている双子の世話が待っています。食事の支度、掃除、洗濯、お風呂、明日の準備、本を読んで寝かしつけるまで、休む暇もありません。これにオンコールが当たって、緊急手術に呼ばれたりすると、本当に悲惨。
今週は、昨年、カロリンスカでロボット前立腺全摘が602例、膀胱全摘が98例施行され、これまでの最多を記録、また、ヨーロッパではいずれの手術も最多、全世界でも膀胱全摘においてはトップレベルの症例数ということを祝うミニカンファレンスとパーテイーがありました。その中で、私は、スウェーデンでは初めての女性ロボット外科医であるという紹介を受けたことは、大変光栄でした。後輩の女医さんたちがやってきて、「これからも頑張って、私たちのお手本であってください。」と言ってくれましたが、何だか妙な気持ちでした。最も競争の激しい大手術の分野で、スウェーデン人の女医さんたちも近寄らないところに私などが無謀にも参戦しているのですが、やはり、若い女医さんたちもあとに続きたいという気持ちはあるようです。
パーテイーは夕方から始まりましたが、食事が終わると生DJ付きのダンスタイムがあって、夜が更けるまで続きました。私は勿論途中で退散しましたが。ママっ子の娘は、「ママ、ママ」と泣きじゃくってなかなかなか寝付かなかったようですが、私が帰宅したときには、スヤスヤと安らかな寝息をたてていてホッとしました。本来ならば、週末はしっかり休養して新しい週に備えるところでしょうけれど、週末は子育てにさらにエネルギーを奪われ、月曜日に保育園に双子を送り込むと、ホッと肩から力が抜けて仕事に出かけるという、そんな生活です。スウェーデン語には、「gillar läget」((良くも悪くも)おかれた状況を好きになる)という表現がありますが、まさにそれを唱えながら、忍耐の日々です。







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