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濃厚接触者の扱い

大阪の吉村知事のお嬢様がコロナ陽性になり、知事も濃厚接触者とのことで、無症状にも関わらず自宅待機というツイートを引用ツイートした。

スウェーデンでは、医療介護者など以外は感冒症状があっても検査はせず、症状がある期間は自宅療養となりますが、検査をしないため濃厚接触者に定義される人もいないことになる。

コロナ禍も3年目に入り、ワクチン接種は進み、オミクロン株の特性などがわかってきている中、ヨーロッパ諸国では軒並み規制撤廃し、インフルエンザに準じる扱いとなってきている。従って、日本のこの対応は周回遅れの感が否めずリツイートした。

私をフォローして下さっている方の多くが、元々、私のツイートやスウェーデンの政策に好意的であることもあり、リプライの殆どが、同じようなものだった。フォローしてくださっている方の中には、監視的目的の方もいらっしゃる。その方々は、元々、私のツイート自体に批判的な訳だ。私は基本的に批判されてもブロックをしない主義にしている。それは、賛同者ばかり集めることを是と考えていないこと、また、異なる意見の方にも読んでいただきたいと思っているからだ。ブロックされた場合には原則、ブロックすることにしている(多いので把握しきれていないが)。それは、私のツイートを引用ツイートされることを回避したいから。できれば鍵アカウントの引用ツイートも不可とするシステムが欲しいくらい。

今回のツイートに関する批判的ツイートの中に、それぞれの国にはそれぞれの国に適した方法があるというのがあった。それは一見、冷静な意見のように見えるが、「症状のない濃厚接触者」を自宅待機させる意義について説明がない。また、そうすることにより発生する弊害が加味されていない。コロナ禍が3年目に入って、いつまでこのような対応を続けるのだろうか。もし、この対応が日本という国にあったものであるならば、今後の出口戦略は?

インフルエンザやRSなど、これまで大流行が繰り返され、多数の死者が出ても、濃厚接触者隔離などの対応がされたことはなかった。コロナに対する最大の武器とされていたワクチンも期待されたほどの効果はなく、接種が進めば社会は通常化できるとの謳い文句は尻すぼみとなり、延々と意義不明の対策が続けられている。

スウェーデンを真似しようとツイートした訳ではなく、スウェーデンの現在の対応を紹介したに過ぎないが、それだけで過剰な反応が発生することは私には理解し難い。日本が取っている対策がベストでなくてもベターだと考えているのだろうか。あるいは、外から周回遅れだと言われることを好まないのであろうか。ゴールポストがどんどん遠くなるのは、多くの国民にとって辛いことのはずだと思うのだが。

週刊新潮に寄稿

https://www.dailyshincho.jp/article/2022/04150556/?all=1

お久しぶりです 「臨床研究と基礎研究」

最近、Twitterからの発信がメインとなっており、ご無沙汰しています。

Twitterで、基礎研究と臨床研究の比較について発信したところ、というより、某有名教授(臨床)が、基礎の教授に、臨床研究を貶されたとかでお怒りのツイートをされたのですが、そのリツイートで議論となった件を書いてみたいと思います。ツイートで対応しようと思ったのですが、長文になるのと、ツイートでは後からの微調整ができないため、こちらを利用しようと思った次第です。ツイートで感情的になってしまうと収集がつかなくなることがありますし(かなりメンタルにはトレーニングされましたが)。

https://twitter.com/bmtphysician/status/1490069603111821319?s=21

残念ながら、お二方とも理解されていません。以下に、私の経験と意見を述べさせていただきますね。

こちらのポスドク3年目のMDと思われる方は、「楽かどうかで選ぶなら、学位などいらない。」とおっしゃっていますが、そうでしょうか。「学位は足の裏についた米粒のようなものだ。取っても食えないが、取らないと気持ちが悪いものだ。」と、医師仲間では揶揄される学位ですが、アカデミックキャリアを目指すなら、学位は必要です。

この方から、「可哀想な人」と評されたので、これまでの私自身の経験から説明しますね。なお、私は好きで「結果が出るか保証の限りではない基礎研究」に従事してきたので、幸せなのです。

海外でポスドク。夢がある時期です。自分で研究費の心配はしなくて良いし、時間は十分にある。私がポスドク先を探した時は、メールが無かった時代なので、連絡は電話かファックスか手紙。今のように、自分に合うラボを探すことが難しかったです。上司には、「臨床家のポスドクなんてアカデミックポジションのための箔付けなんだから、どこでも行けば良いのだ。」と言われ、それに従ったという経緯でした。

日本でラッキーにも学位の仕事が当たった人なら、ポスドク先が給料を出すこともあるでしょうけれど、それはなかなか難しい。そうすると、自分で奨学金なりを獲得するか、貯金を食い潰す覚悟で留学する訳です。当時は、スウェーデンでは無給でポスドクを雇用して良いことになっていたので、無給のポスドクが沢山いました。日本人は勤勉であることが知られていたので、無給であれば雇ってくれるところはありました。今は、基礎研究には当時以上の高額なランニングコストがかかるため、さらに難しいと思います。私の場合、一回目のポスドクは無給で、奨学金を獲得しました。2回目のポスドクは有給でした。合わせて8年くらいは基礎研究オンリーのポスドク生活をしました。時間をかけ、お金をかけて頑張ってもゴミ箱行きの実験の方が多いくらいで、その厳しさを身を持って体験しました。

ポスドクで良いラボに留学できれば、Natureなどの超一流誌に論文が出せることもあります。ただ、それで舞い上がるのは早い。通常、その業績は本人が優秀というよりは、出来るボスがいたことによるもの。しかし、自分が優秀だと勘違いしてしまった場合、ポスドクが終了してPIの道を歩み始めるとしっぺ返しがきます。基礎研究のための高額なランニングコストを捻出するためには高額な研究費を獲得する必要があります。ポスドク後すぐであれば、ポスドクの業績で何とかなるかもしれませんが、年月が経つのは早い。あっという間に5年くらいは過ぎます。そうすると、Natureであっても賞味期限が切れる。業績が出てなければ、それからは地獄の苦しみです。以前は、新しくPI候補をポスドク終了者から採用する時に、Natureなどに論文があれば非常に強かったのですが、むしろ、もう少しインパクトファクターが低めでも、ファーストオーサーが複数ある方が本物であろうという見方も出てきています。NatureにファーストオーサーがあってPIとして採用されたけれど、鳴かず飛ばずという研究者も少なくないからです。

MDが日本で臨床をしながらハイレベルの基礎研究をするのは、現在では難しくなっています。私がポスドクをしていた頃は、Natureでも、アイデアと結果さえユニークであれば、図表が10個以内でもアクセプトされました。Data not shownと記載して、言葉で説明すれば図表を示す必要が無かったのも過去のものとなりました。今は大変ですね。ウェスタンブロットのバンドの写真を提示するのであれば、元ブロットも提出しなければならない。統計処理をしてヒストグラムを提示するのであれば、スキャタープロットで全てのデータを示すだけでなく、エクセルファイルで全てのローデータを提出しなければならない。STAP細胞事件以来も相当改革がなされています。Supplementary figuresの情報量の多さも以前とは桁違い。

先日、リバイス、追加実験を含め、プロジェクトを始めてから10年近くかかってアクセプトされた論文の件をツイートしましたが(まだ掲載されていませんが)、ランニングコストだけでも数千万円かかっています。研究費の獲得だけでなく、研究にかかった膨大な時間を考えると、臨床をしながらできるようなものではありません。

ですから、最近の若いMDが、学位を取るために臨床研究を選ぶのは合理的なのです。カロリンスカ大学では、臨床研究であれば4年程度(それも臨床の片手間に)あれば学位が取得できますが、基礎研究であれば、フルタイムで研究をしても4年で取得できるのは運が良い方です。また、MDであれば、臨床から長く遠ざかることを嫌う人も多いです。臨床研究と基礎研究、どちらの研究が優れているかということではなく、どちらも医学の進歩のために必要なものである。優劣をつけるべきものではありません。しかし、基礎研究は時間がかかって大変であること、臨床をしながら基礎研究をするのは難しいということを表現したかったのに、「臨床研究は楽であるというのは差別である。」というような歪曲した理解をする方がいらっしゃるのは残念です。

件のアメリカでポスドク3年目のMDの方の発言はとてもナイーブです。ただ、「興味があることを研究するのが王道」と言えるのは幸せ、夢に溢れたポスドク時代ならではですので、是非、頑張っていただきたいと思います。10年、20年後になれば、私の申し上げたことを理解していただけるのではないでしょうか。

私の2回目のポスドクの際、憧れの雑誌、Cellにほぼアクセプトというところまで行ったことがあります。その時のプロジェクトというのは、まさに偶然の発見に始まりました。プロジェクトの前段階でステロイドホルモン刺激下での培養細胞の免疫染色を色々としていたのですが、その時に鳥肌ものの結果が出たことがきっかけでした。まさかのリジェクトをCellから食らったその論文は、Nature Cell Biologyでレビューに回りましたが結局リジェクト。最終的にインパクトファクター7程度の雑誌に掲載されましたが。Cellに掲載されていたら、私も勘違いして道を踏み外し、研究者として生きる道を選んだかもしれないため、リジェクトされて良かったと思っています。臨床医には研究者とは異なるプレッシャーや責任がありますが、毎日、患者さんに対して診療行為をしていれば生きて行けるため、個人的には、研究者の方が過酷な環境にあると思っています。好きなことを選んで研究すれば生きていけるというのは本当にナイーブです。

Forbes Japanに第2弾を寄稿しました。

スウェーデンの新型コロナ対策は良しにつけ悪しきにつけ、注目を集め、さらには、日本語による報道や記事には、フェイクニュースや誤解釈も多いのが現状です。

スウェーデン各省庁などの発表している一次データを示しながら解説しています。

https://forbesjapan.com/articles/detail/35156/1/1/1

たけしのTVタックルに出演します。

2029年5月31日、正午の放映分のインタビュー映像で登場する予定です。

https://www.tv-asahi.co.jp/tvtackle/?device_mode=pc

SASのクルーが病院で働いています。

ストックホルム内の私立の看護大学が、SASのクルーが医療現場で働けるように短期の教育を始めました。https://www.di.se/nyheter/sophiahemmet-skolar-om-sas-kabinpersonal-till-sjukvardsbitraden/

カロリンスカ大学病院でも、ICUなどで働いているようです。

SASのFBページに、ビデオが掲載されていました。

もともと、CAさんなどは、究極のサービス業として訓練されていますから、医療従事者として再教育して現場に出てもらうのは、素晴らしいアイデアだと思います。彼らも、失職中(休職中)ですからまさにwin winではないでしょうか。

こういう動きは、北欧らしいかなあと思った次第です。

https://www.facebook.com/SAS/videos/266803784704434/
https://www.di.se/nyheter/sophiahemmet-skolar-om-sas-kabinpersonal-till-sjukvardsbitraden/

Gretaちゃん

スウェーデンは勿論のこと、世界中で今や有名人となったスウェーデン人少女のGreta Thunberg、16歳。約1年前のスウェーデン山火事をきっかけとして、CO2排出削減などを求めて、総選挙に合わせて国会の前で毎日座り込みをしました。その後も、毎週金曜日は学校を休んで「Skolstrejk för klimatet」(気候変動問題のための学校ストライキ)というプラカードを抱えて座り込みを続けました。当時、彼女は中学三年生。彼女の座り込み運動は、爆発的に拡大し、金曜日の学校ストライキは全世界に広がった。彼女は「アスペルガー症候群の環境活動家」と自称。

私がこの6月に日本に帰国した際に、母校でセミナーを開く機会がありましたが、そのセミナーで、Gretaちゃんについて尋ねたら、日本でも生え抜きのエリートであるはずの彼らは誰一人として彼女のことを知りませんでした。これはとてもショックでした。

日本でも、彼女が国連前にヨットでアメリカへ渡った頃から少しずつ報道されるようになり、国連で演説をしてから、さらに報道されています。しかし、環境問題を信じない人たちが、トランプ大統領を筆頭として沢山いることにも驚きます。そして、(これまでCO2を放出しながら発展してきた)先進国だけでなく、発展途上国にもCO2削減を求めることに矛盾を感じている人など、私には理解できない人たちが沢山います。先進国が発展してきた時代と今の時代は違います。昔の常識は現在の常識ではないと思います。

今回、Gretaちゃんの記者会見は、感情に流されすぎて、今ひとつでした。「How dare you,,,」の下りも、言葉の選び方が過激すぎたと個人的には感じました。この部分が有名になって、彼女のスピーチを初めて聞いた人たちに、アレルギー反応を与えたかもしれないと思います。いつもの彼女はとても冷静で説得力があります。だからこそ、世界中でここまで大きな運動となったのです。環境問題における貢献でノーベル平和賞を受賞したゴアよりもインパクトは大きいのでは。もうすぐ、ノーベル賞受賞者の発表がありますが、Gretaちゃんが是非平和賞を受賞してほしい、いいえ、受賞するに違いないと思っています。

しかし、環境問題って、政治や宗教、フェミニズムなどの議論と一緒で、ちょっと恐ろしい。意見の異なる人とは絶対に意見が一致することはないので、議論してはいけないんですね。彼女の後ろに暗躍する人物がいると信じている人が多いのには驚きました。彼女はまだ16歳ですから、わかっていないことも多いでしょう。だから、彼女は、自分ではないくて科学者の声を聞いてくれと言っています。

新しく環境大臣に就任した、今時の人、小泉進次郎。彼のFNでの発言や、記者会見での発言が幼稚すぎて、世界で失笑を買っています。環境問題はセクシーにって、ギャグ?一国の大臣の発言とは思えない恥ずかしさ。日本で彼がなぜ人気があるのか理解できません。そして、彼の失言を援護する人たちがいるんですね。他の人の発言をcitationした、とか弁解していますが、公人の立場で、世界に失笑されるような表現をすべきではないし、英語の表現も砕けすぎです。温暖化に対する具体策がまるでないのも、政治家としては片腹痛いとしか言いようがありません。「今日から日本は変わる。」って、どう変わるのか言えないでの発言は、まさにパフォーマンス。まあ、彼が有名なのは、スピーチだけで、政治家としての業績についてはクエッションマークであるというのが、良識ある人間の認識だと思っています。

とにかく、Gretaちゃんの出現で、より多くの人が環境問題に関心を持ち、一人一人ができる小さな努力を積み重ねるだけでも、地球にはプラスになるはずです。その意味で、彼女は偉大です。私も、常にエコバッグを持ち歩き、水筒を持ち歩き、歩けるところは歩いて、小さなエコ活動を行なっていきたいと思います。

優しさ、思いやり、心遣い。弱者強者両方向。

ご存知のように、夫は脊損患者ですので車椅子での生活です。

同じ車椅子で外出するし、その車椅子で室内にも入ります。外履きからスリッパに履き替えるという訳には行きません。

一緒に生活をするようになった時、特に日本人の私にとっては、それに違和感がないと言ったら嘘になります。今は、帰宅したらタオルで車輪を拭くようにしていますが、、、。

お呼ばれの時はやはりどうしても気になります。日本にやってきて、妹や親の家へ入る時。その時もタオルをお願いします。家族はあまりコメントしませんでしたが、きっと私と同じように違和感を持った(持っている)に違いありません。

知人の話。脳梗塞後で足元が不確かな高齢者が、実家から独立したばかりの孫のアパートを訪問しました。外出時は杖が手放せないため、アパートの中にも杖を持って入りました。孫はそれに反応し、「(汚いから)杖は中でつかないで。」と言ったそうです。何と冷たい言葉でしょう。彼女か彼氏の言葉だったら、その一言だけでアウト。

杖に比べたら、車椅子はさらに不潔に違いありません。それでも、車椅子がなければ移動は不可能です。弱者になって見なければわからないことがあることは確かです。しかし、少し考えれば(いえ、考えなくても)「杖は中でつかないで。」という言葉に、優しさや思いやりが全くないのは明らか。同時に、弱者である夫が上手に生きてゆくためには、弱者なりの心遣いが必要なのかもしれません。今後、夫がお呼ばれするときには、車輪を拭くためのタオルをできる限り用意しようと思います。思いやりは、強者から弱者だけではなく、弱者からも示すべきなのでしょう。

日本とスウェーデンを比べると、日本は多様性を認めたがらない社会だと感じます。表面下の差別も実は沢山あります。社会不安や厳しい労働条件などからくるストレスがヘイトとして吐き出されているような気もします。オリンピックを控え、日本が、より開かれた優しい社会になりますように。

ileal ureter interposition

スウェーデンで働くようになって、日本では見なかったような大手術を見ることがあります。一緒に働くことの多い、下部消化器外科は、再発癌に対してしつこく外科的切除をしますし、HIPECもかなりやっています。婦人科も同様。肉腫グループに至っては、hemipelvectomy(両足切除含め)などもやります。

ですから、回腸導管や、尿管の膀胱への吻合くらいは、各科でやってしまうことが多いのですが、複雑な尿路再建になると声がかかります。事前に話があることもありますが、緊急に呼ばれることも少なくありません。

泌尿器科では、ほとんどの医師がロボット手術しかしないため、開腹手術でかつ高難度の手術ができる人は、ほとんどいません。そしてそれは、先夏に大騒動を起こした男女差別をするイラン人と、私。ちなみに、先夏以来、彼は挨拶もしません。

最近も、緊急に何回も呼ばれ、ileal ureter interpositionを執刀しました。日本では見たことがありませんでした。

巨大な腫瘍や、周辺臓器に浸潤するような腫瘍を切除する場合、膀胱や尿管を合併切除しなければならないことがあります。その時に、症例に合わせて尿路の再建をするのです。膀胱に尿管を直接吻合するのが一番簡単ですが、尿管の長さが足りない場合には、膀胱の一部を尿管とするボアリ法が有名です。膀胱容量が少なかったり、それでは長さが足りない場合には、小腸を使って再建します。また、小腸もそのまま使ったり、Yang Monti管といって、小腸を開いてそれを90度違う方向で管として縫い直すことにより、短い小腸から長い管を作って再建するなどの、様々な方法があります。

しかも、尿管として用いる小腸には血管が付いていますから、それを大腸の腸間膜のどちら側に引き抜いたら良いのかなどの判断をしなければならず、複雑な手術です。膀胱全摘などよりも、ずっと難しいのではないかなあと思います。

先日、肉腫チームのオペに呼ばれて手伝いに言ったら、「こんな風に再建ができるなら、今度からもっとお願いしたいなあ。これまで、尿管が短くなったら腎臓も切除してたんだ。」と言われました。正常に機能している腎臓を捨ててしまうのは勿体ない。

夏休みが迫っているこの時期も、直接電話がかかってきてオペの手伝いの予約が入ります。「Ayakoにお願いしたいから、何とか時間を開けて。」と頼まれるのですが、外来をキャンセルしたりしてリスケしなければならないので大変。本来は、若い先生に教えて、再建手術のできる術者を増やさなければならないのですが、それも大変。

機能再建は実に奥が深い。癌の手術は、取るだけ。あとで再発したりしても、癌のせいにできます。対して、機能再建は、その名の通り、機能しなければならない。先日、脊損患者さんの膀胱拡大術(これも小腸を使う)と腹部に膀胱にカテーテルを挿入して導尿する管を作る手術をしました。導尿用の管は、Yang Montiで作成したり、盲腸を使ったりします。オペ後に、導尿がちゃんとできて、漏れもないと患者さんから報告してもらった時の嬉しさといったら!

外科医は辛いけれど、天職かなあと思います。

超過勤務は当たり前で、子供達のお迎えには、私はまず行けないので、行ってくれる夫にも感謝。

da Vinci Xi 初体験!

カロリンスカ大学病院には、手術支援ロボットda Vinciの旧型が3台、最新機種のXiが一台あります。最新機種はカメラが細くて、手術アームが自在に動くため、カメラ用のポート以外からもカメラが挿入でき、術野や患者さんの体位の自由度が増すことで、旧型と大きな違いがあります。

今まで旧型で手術をしてきましたが、今週、助手の先生が、「Xiが空いているから、使ってみましょうよー!」と言うので初めて使ってみました。Intuitiveからも担当者が来てくれたので、安心でした。

中央にある、肝心の本体のアーム部分が不潔にならないように布で覆われていて見えませんが、私は、左手にあるコンソールに座って手術をします。この大きさの手術室が新病院ではスタンダードな広さで、60平米ほどあります。広いです。一番大きな部屋は120平米もあります。

大お家騒動の末、執刀を始めた膀胱全摘ですが、既に30例以上を執刀しました。大きな合併症は一例。ステロイドを使っていた患者さんが、イレウスになり、小腸吻合不全となりました。これは私の技術が悪いと言うより、不運だった症例でした。指導者なしで手術をしてきた厳しい状況では上出来とかなあと思います。自分なりに手術法も改良して、これからも現状に甘んじることなく、少しでも良い手術ができるように努力したいと思っています。


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