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Covid 19パンデミーのピークを過ぎたストックホルムから

2020年は、2019年末に始まったオーストラリアの山火事、イランの誤射による民間機墜落など、悲惨な出来事で幕開けしましたが、これらに続いてCovid 19のパンデミー。病院もこれまで大変な状態でした。私の病棟もCovid 19病棟となり、通常診療を縮小して治療に当たっていました。現在は、ICU以外の患者さんの数は順調に減り、通常診療に戻りつつあります。

インタビュー形式の記事が掲載されましたので、ご紹介します。

Forbes Japanへ掲載されました。

掲載されてから1週間以上経ちましたが、ずっと上位10位以内に入っており、沢山の方に読んでいただいているようです。

日本で報道されているスウェーデンは、実際と異なっていることが多いので、ぜひ本当のスウェーデンを知っていただきたいと思います。

Forbesは、主に私が原稿を起こしましたが、完全なインタビュー記事がNewspicksにも掲載されています。

論文がNatureで紹介されました!

最新号のNatureに、Transparent tissues bring biology into focusという記事が掲載されました。

これは、その記事の冒頭で紹介された写真。8週の人間の胎児ですが、組織が透明化された上で、末梢神経が緑色に標識された3D画像です。透明化することで、詳細な3D画像が構築できます。

 

この組織の透明化のテクニックの大御所がKarl Deisserothという、スタンフォード大学の神経生理学者なのですが、私たちの論文 は彼との共同研究でもあり、彼が始めた透明化の手法の変法を用いて、人間の組織を観察した研究です。

Natureの記事に、このような紹介文がのていますが、3DISCOというのが我々の手法の略称です。臨床の場では、今もなお、HE染色が主に使われ、診断の困難な症例では、様々な免疫染色が並行して用いられるのが通常です。また、これらは全て2Dになります。私の専門とする膀胱癌では、最初の外科的治療である経尿道的膀胱腫瘍切除術の切除検体で、筋層浸潤の有無の判定が、しばしば困難です。その判定によりその後の治療計画が全く異なるため、非常に重要な診断なのですが、underdiagnos、つまり、筋層浸潤があるのに表在性だと診断されれば過少治療となり手遅れになりかねません。実際に、表在性だと診断され、BCGの膀胱内注入を受けている間に、あっという間に転移が出て来たという例を少なからず経験しています。

 

基礎的研究と臨床に関わるものとしては、基礎的研究の結果が臨床で使われるようになることが夢です。

今年のノーベル賞を受賞された本庶先生は、来週の授賞式を控え明日ストックホルムに到着されるようですが、最初の発見から受賞まで約30年を要しました。それでも、臨床応用されるまでは早かったと言えるでしょうし、研究者としては研究結果が多くの患者さんの命を救うということは、最大の喜びに違いありません。カロリンスカでのレセプションや大使館主催のレセプションに招待されているので、どこかでお目にかかれたらいいなあ。

続・女性泌尿器科医の会

ストレスに関する講義は続きます。

医療者のストレスに関して、傷病休暇取得の状態についてなどの話がありました。

ストレスがあると、当然、ストレスホルモン(ステロイド)の分泌が高まります。長期的には、心血管系疾患などのリスクが高まることになります。日本でも、若い人の過労による突然死が増えている印象ですが、おそらく心血管系の発作によるものではないでしょうか。

 

ストレスにより働けない状態になるまでには、かなりの時間を要します。個人差もあります。また、一度そのような状態になってしまったら、そこから回復するにはさらにそれ以上の時間がかかります。

クラッシュする前に、些細な症状を危険信号と捉えて対策をたてることが大切。

痛み、消化器症状、睡眠障害、エネルギーがなくなる、記憶障害、罪悪感、幸福感の喪失、デプレッション、、、。

自身がデプレッションに陥った精神科の女性医師の本の紹介がありました。時間があったら読みたい。

しかし、私もそうですが、仕事というのはストレスから身を守るものでもあるんですね。職場での闘いの中で、「仕事を投げ出してしまいたい。」と思うことも度々でしたが、「仕事を休むことは、相手だけにではなく、自分に負けること。」という意識が強くあり、逆に、「体調が悪くても休まないぞ。」と考えていました。しかし、本当は、クラッシュするときには、前触れなくいきなりくるのかもしれません。

ストレスを感じやすい人間の典型的な例かも。この漫画、笑えます。

 

 

サウナの後に夕食になりましたが、今年はなかなか美味しかったです。

卵の黄身のフライ。

 

ユッケ。フォアグラなどがふりかけられてます。

何の魚だったか忘れてしまいました。赤カブが飾られています。ブロッコリー4分の1がグリルされてドカーンと。シャンパンソースと共に。

ショコラードフォンダンは一口味見しましたが、お腹いっぱいでギブアップ。

いつもながら、スウェーデンらしくクラシカルな可愛いお部屋でした。

 

 

スウェーデン女性泌尿器科医の会

毎年恒例行事で、スウェーデンの女性泌尿器会が集まる会が行われたので参加してきました。場所はKrägga Herrgård。メーラレン湖沿いの美しい場所で、ストックホルムから車で40分くらい。

 

その日から最高気温も零下という、本格的な寒さもやってきました。

この会は、木曜日のランチから始まり、午後は講演会、その後、皆でサウナに入りながらビールを飲みます。このサウナはメーラレン湖の上に建てらていて、床板を外すと湖にドボンと潜ることができます。暑くなったら湖にドボン。そしてまた暖まる。北欧の醍醐味ですねー。湖の上にある小さな小屋がサウナです。側には、屋外ジャグジーもあり、この日は晴天だったため、満点の星を眺めながらジャグジーに浸かり、ガールズトークを楽しみました。

初日の講演は、御歳80歳になる精神科の女性名誉教授による「ストレス」について。

何と、ミニスカートで登場。エネルギーに満ち溢れていて、最新の研究も網羅していて素晴らしい。話も上手。

ストレスという概念は、歴史的にいつ頃から存在したのか、という話から。


 

この、Turistという映画、観てみたい。

 

グーグルでストレスという言葉を検索すると、年代的にこのような推移になるのだとか。近代、現代における人間の反応なんでしょうね。

社会が近代化し、家にいるべき女性が高い教育を受けるようになってからの現象。という記述が論文にあるそうで、大爆笑。

ストレスに続いて、バーンアウト症候群についての講義。

1800年代から現在まで、いろいろな名前がつけられているそうです。国際的に統一された名前はないのだとか。スウェーデン語では、utmattningssyndromと言います。

長くなるので続きは次の回に。

 

新病院!Here we come!

我が骨盤内癌のうち泌尿器系癌(膀胱癌、前立腺癌)の新しい入院病棟は、G7と呼ばれます。新病院本棟と旧病院の間にある新しい建物の中にあります。


オープニングにスタッフが自主的に用意した風船!!!雰囲気を盛り上げる名脇役!

そして、日曜日にも関わらず出勤して活躍した引越し部隊! いつも快活、ポジテイブでパワフルな看護師、医師の同僚たち!You are the best!!! I love you!!!

新しい病院の歴史の始まりに参加できることを幸せに思います!

 

新病院引越しへカウントダウン

新病院への引越しに向けてカウントダウン!

10月28日日曜日に旧病棟にサヨウナラをして、新しい病棟に引っ越します。

私はこの週末オンコールに当たっていますが、今週は引越しに向けてオペがなかったため、入院患者数も数名しかいません。勿論、救急患者さんがくれば対応しなければなりませんが、新病院へ搬送する患者さんに医師が付き添わなければならないほど重症は今のところいないので、このまま無事に過ぎることを願っています。

 

新旧病院を結ぶ地下通路では、物品の運搬も盛んに行われており、ロボットたちの交通渋滞も起こっています。

ロボットの行く手を阻もうものなら、「どいてください」とロボットに言われてしまいます。沢山のロボットが連なっている光景は圧巻。

土日の間で冬時間になります。1時間夜が長い。得をした、、、と普段なら言うところですが、オンコールなら、1時間余計にオンコールになってしまいます。この歳になったら夜起こされたくないので、何とか静かな夜になりますように。

祝、10例達成!

来週末には、病棟と手術部門が全て新病院へ引っ越します。

それに伴って、来週は膀胱全摘のような大きな手術はなし。従って、今週の膀胱全摘が旧病院での最後の症例ということになります。奇しくも、私がその症例を執刀し、また、私自身の10例目の症例となりました。

 

新体制になってからの権力抗争はまだ続いています。6月末に手術室で怒鳴り合い(正確には、私は怒鳴ってはいないのですが)の喧嘩になり、ボスに呼び出しをくらったイスラム教徒の同僚が、男尊女卑以外では説明できない彼の態度を釈明できないため、仮病を使って欠勤。彼が執刀するはずだった症例を担当できるかとボスから打診され、今まで執刀したことのないロボットによる膀胱全摘を指導者なしで始めることになったのです。7月から約3ヶ月で今回10例目。熟練した助手を横取りされたり、T4のような高度浸潤癌で高難度の症例も含まれています。ロボットによるオペ時間は今までの術者と遜色なく、在院日数も平均すると1週間以内で、大きな合併症もないという事実は、私の実力を示して余りあるものでした。ボスからも称賛の言葉をもらいました。

「あなたは何て強くて優秀なんでしょう!こんな大きなプレッシャーの中で、やったことのないオペを成功させるなんて素晴らしい!」

自画自賛はほとんどしない私ですが、確かに、第三者の立場で考えればその通りです。最初の症例は始める前には手足が震えていました。勿論、やったことがないとはいえ、ロボットでできなければ開腹して良いというボスからの指令だったので、患者さんにリスクを負わせることはないという自信があったからこそ引き受けたのです。それでも、執行部への反対勢力を喜ばせる訳には行きませんから、何としてもロボットで完投しなければ、という気持ちはありました。これまでに膀胱全摘のロボット手術の助手は100例、前立腺全摘の助手は300例以上、前立腺全摘の術者は300例以上手がけた経験もあります。尿路変向も10例程度、教授の指導で執刀しました。これだけ経験があってできない訳がありません。

 

しかし、私が執刀を始めてから、反対勢力は、「やったことのないオペを指導者なしでやるなんて危険だ」ということを盾に、攻撃を続けています。反対勢力の中には、開腹による膀胱全摘ができない医師がいて、私的には、彼が執刀する方がずっと危険だと思っています。この次に攻撃されたら、その点で反撃するつもりです。ボスがミーテイングを招集しても彼らは逃げ回っていて、今後どうなるのでしょうか。イスラム教徒の彼は会っても挨拶もせず、彼の方が窮地に立っているのだとは思いながらも、私も毎日ストレスの塊です。

 

それでも、誰にも頼らずにもはやオペができるという自信は、私に自由とさらに大きな自信を与えてくれました。彼らの一部は世界的にも有名で、学会でライブサージェリーをしたり、世界中から講師として招請されていて、このタイプの手術の術者としては超一流ということになりますが、いまでは、彼らよりもクオリテイーの高いオペをするぞいう気持ちです。外科や婦人科から助っ人を頼まれることもあるのですが、他科からも高く評価してもらっていて、今週は、小腸を使って尿管を延長して膀胱へ吻合するケースと、ボアリ手術といって膀胱を使って尿管の延長をするケースを頼まれました。喜んでもらってとても嬉しい。本望です。

 

今日、先週執刀した、離島からきた患者さんが、ヘリコプターで帰ってゆきました。元気になって喜んで帰ってもらえることが、この上ない喜びとエネルギーを与えてくれます。1日1日が、いつ終わるともしれない戦いで、プロトンポンプインヒビターを内服しながら生活していますが、ボスが解決策を探ってくれているので、戦わずに働ける環境が整うのを心待ちにするばかりです。

 

10例無事に達成したこの週末は、何か美味しいものでも作ってお祝いしたいなあ。

ズルズルとキープ、日本の専門医

日本の泌尿器科専門医は5年に1回の更新制になっています。そのためには、毎年の学会費、そして、期間中に総会1回出席を含む点数で、100点を稼ぐ必要があります。

 

海外で勤務している場合は、勤務証明書を提出すれば5年ではなく6年に1回の更新が認められています。

6年、長いようであっという間。日本の専門医の価値も危ぶまれており、実力さえあれば更新しなくても良いのではと思いながら、今回も更新してしまいました。

結構、費用もかかります。開業して泌尿器科疾患をあまり診察しなくなっても、極論すれば、臨床をやめてしまっても、点数を集めさえすれば専門医を更新できます。これでは専門医を標榜していても臨床医としての実力の保証はどこにもありません。学会がお金を集め、権威を保つために専門医制度があるようなものです。

この次はどうしようかなあ。

ノーベル医学生理学賞、本庶先生に!!!

本日、スウェーデン時間の11時半にノーベル医学生理学賞の発表がありました。

いつかは取ると言われていた本庶先生が受賞!

 

programed cell deathに関係すると予想されたため、PD-1と名付けられた蛋白が腫瘍免疫に関わることがわかり、そこからオブジーボに始まる免疫チェックポイント阻害薬という、新しい抗腫瘍治療の時代の幕開けとなりました。PD-1の発見から臨床まで20年以上を要しましたが、正に日本産の新しい治療方法と言えます。

私の専門分野ではオブジーボは腎臓癌に対して使われています。同じようなチェックポイント阻害剤が、転移性の膀胱癌にも使われ始めています。

 

 

この20年、転移性膀胱癌に対する全身療法は、シスプラチンを中心とした抗腫瘍剤療法のみだったので、これは大きな進歩だと言えます。スウェーデンではこれらの治療は外科医が担当せず腫瘍専門医が行うため、実際の診療で使ったことはありませんが、手術後の患者さんがお世話になっています。

本当に嬉しい本庶先生の受賞でした!!!

遅きに失す?

とうとう、というより、やっと、カロリンスカ大学病院の院長が辞表を出しました(ニュース)。オランダ人のMelvin Samson氏です。

巨額の予算をボストンコンサルティングに払い、多くの医師が退職し、スキャンダルには事欠くことのなかった、新病院プロジェクト。この度、以前の同僚であるオランダ人を雇用し高額な給料を払っていたということがニュースになりましたが、それがトドメとなったようです。

遅きに失した感はあります。病棟とオペ室の引越しを1ヶ月先に控え、ホッとしたというか複雑な気持ちです。


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