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大学における教授法についてのコース

現在、大学での学生への教育法についてのコースに出席しています。

参加者は26名。医師、歯科医師、看護師、作業療法士、研究者など、大学で教える立場にある人達が参加しています。純粋に教育に興味がある人もいれば、自分のキャリアのために必要な単位だから取っている人もいて、興味の度合いは人それぞれ。

教科書は、「Universitetspedagogik」。

講義とグループデイスカッションが主なのですが、普段使わない抽象的な単語が沢山出てきて、私にはかなり荷が重い。スウェーデン語を母国語としないのは私くらいです。英語のコースを取れば良かったかなと、かなり後悔しています。

講義をデザインするときに、最も大事なことは、「学習目標」を明らかとすること。何がどうして大事であるのかをはっきりさせなければなりません。学生のレベルを早い時点で見極め、レベルにあわせた授業内容としなければならない。学生とのコミュニケーションを取るにはどうしたらよいか。学生の理解が、「表面的」だけでなく、「より深い」ものとするには、どうしたら良いのか。

学生の進路には、「アカデミック」と「ノン・アカデミック」とがあります。アカデミックとは、教育・研究を伴った活動のこと。医師でもそうです。割合からすれば、「アカデミック」に属する医師はマイノリテイーですが、権威は「アカデミック」にどうしても付随するもの。「ノン・アカデミック」が進路であれば、学生の大学での目標は、究極のところ、「試験に合格する」というレベルで良いことになります。「暗記」だけで終わるのか、「深い理解」の試みをするのか。こんなことも、グループデイスカッションします。「暗記」だけで終わるような学習の仕方は、文化とも深い関わりがあって、それはアジア諸国に顕著だという記述が、既に教科書にもあり、それを日本の問題点として捉えていた私にとっては、とても印象深いものでした。

これまで、カロリンスカ医科大学でも、医学生や大学院生、留学生などの指導をしてきました。

奇しくも、2月に入って、私が指導教官であった大学院生が学位審査に合格しました。彼女が大学院生となった当初は、論文のプレゼンテーションもできないし、発表は原稿がないといけないという状況。しかも、性格的に、「bad loser」なのです。自分の非を認めない、謝罪できない人がいますね。これは本当に厄介です。自分をどうにかして正当化しようとしてきますが、相手にする方も厭になります。医師の後輩にもいます。医師の知識や臨床感覚は、どうしても経験値、つまり、勤務年数抜きには語れないところがありますが、先輩の言葉が素直に聞けない人がいます。まずは、先輩の言葉には耳を傾けるべきでなのですが、それができない人の指導は難しいものです。外科医の世界は特に。学問の世界では、優秀であり、自信がある人ほど、loserとなることを怖れないものだと理解しています。私も駆け出しの医師であったころは、「○○を知らない」と認めることが難しかった。しかし、専門医としても長い経験がある今は、「知らない」ということがそれほど恐くなくなりました(勿論、知らなくても許される分野についての質問に対してですが)。

「bad loser」は悪いことばかりではありません。例えば、世界のトップアスリートなどは、漏れなく「bad loser」だと思います。だからこそ、負けたときの悔しさをリベンジしようとすることで、次のステップがあるのです。脱線しましたが、大学院生の彼女Mが学位審査を受ける前に、「grillning」という機会を設けます。要は、「焼く。バーベキューする。」から転じて、本番同様の発表をしてもらい、厳しい質問や批評をする会のことです。彼女の最後のgrillningは3時間余りとなり、私もかなり虐めましたが、「negative feedback」をする、つまり、「批判」をするのは、かなり難しい。心配りが必要です。知識不足や、パワーポイントの不備などについては、簡単に指摘できますが、批判が難しい場合も稀ではない。目的はあくまでも、「向上」であって、「恥をかかせること」ではないのです。Mの場合、発表や質疑応答を貫くトーンが常にネガテイブで、これを何とかしたかった。ある問題点に気付いたのですが、それを指摘するかどうか随分悩みました。悩んだ挙句、比較的適したチャンスを見つけてコメントしました。

「あなたが質問に答えるとき、必ず「BUT」で始めるのよね。「BUT」で始めると、印象がネガテイブになるから、「BUT」を省くか、究極、「YES」に変えたらどうかしら。」

これに対しMは、

「BUT,,,,」

と応答し、一同大笑い。場も和んで救われました。

Abraham Lincolnの言葉にこんなものがあります。

「He has a right to criticize who has a heart to help.」

批判するだけで、助ける心が無いのであれば、批判する資格がない。逆に訳すとそういうことになります。

大学病院という、教育の場で働く私が、常に考えていることです。医者は一生発展途上。批判してくれる同僚には、感謝します。良薬は口に苦しですが、批判する方も辛い。批判せずに流す方がずっと楽なのです。そして、これは、人生に通じるもの。

今回は、「negative feedback」つまり「批判」について書きましたが、それと同じように大事なことは、「positiv feedback」、つまり「賞賛」。日本人は比較的これが下手だと言われていますね。職場だけでなく、子育て、夫婦、友達との関係でも、「褒めること」は、非常に大事だと考えています。

次のエントリーでは、カロリンスカでのPhD取得と、Mの学位審査について書いてみたいと思います。

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