日本でもそうですが、スウェーデンでも医療へのアクセスやレベルの明らかな地域格差が存在します。
双子という文字に惹きつけられて、たまたま買って読んだ数日間の新聞記事。
Aftonbladetですが、ネット上ではExpressenとKristianstadsbladetに記事がありました。
Landskronaに住む双子を妊娠していた41歳のLindaに起こった悲劇。40代で双子を妊娠ということで、とても人事とは思えませんでした。
陣痛が起こったのは、妊娠第33週。ここで陣痛を止められなかった時点で帝王切開にならなかったのは、まず驚きでした。スウェーデン、いいえ、ストックホルムでは、34週に満たない双胎妊娠の場合は帝王切開がルチーンであったため、私の妊娠中も34週まで何とかもって欲しいと思っていましたが、31週で破水、32週で陣痛が止まらなかったため、選択の余地なく帝王切開となりました。Lindaの体重は妊娠前と比べて30kgも増えていて、妊娠中毒症には注意しなければいけないはずなのですが、MVCでの検診も不十分だったようです。さらには、分娩室に入っても、看護師は血圧のチェックさえしなかったといいます。
分娩後、Lindaは腹部の痛み、そして、強烈な頭痛を訴えます。双子の女の子が生まれたのが、午後1時ごろ。痛みを訴え続けたにもかかわらず、その日の午後は医師が診察に現れることはありませんでした。初めて看護師が血圧を測定したのが、午後8時前、そのときの血圧は196/97。その後、Lindaは意識不明の重態となり、彼女の意識が戻ることはありませんでした。
解剖の結果、広汎な脳出血に加え、肝臓および腎臓の出血もみられたそうです。Lindaが、おそらく妊娠中毒症があり、子癇による合併症のために死亡したことは間違いありません。Lindaが出産したKristianstad Lasarett(Kristianstad中央病院)は、南スウェーデンの300床を有する中核病院ですが、今回の件では、その対応の全てがお粗末としかいいようがありません。病院側は既にミスを認めているようで、それは、Lex Maria法によるSocialstyrelsenへの報告がなされていることからも明らかです。これは、医師が医療ミスがあったときに、医師側から報告書を提出するシステムです。それにしても、患者さんが苦しんでいるのに、医師が診察に来ないというのも、スウェーデンらしい。それでも、ストックホルムでこのようなミスが起こる確率はずっと低いと思います。日本であれば、双胎妊娠の場合は、予定日の数週間前から管理入院などが行われるようですが、スウェーデンではありません。私も1-2週間に一度の看護師さんおよび医師による検診を受けるくらいで、破水の前日まで手術もしていました。破水して緊急入院してからは、数時間おきのCTGや胎児の心拍数のチェックなどが行われ、同時に感染予防のための抗生物質、胎児の肺サーファクタント産生刺激のためのステロイド投与もあり、十分な管理体制でした。最後に夜中に陣痛がおさまらなくなってきたときにCTGを測定しようとしたときには、流石に、当直医に来てもらうようにお願いしましたが。いずれにしても、医療レベルに対して不満なことはありませんでした。
スウェーデンでも医療レベルの低さで悪名高いのがダーラナ地方。ここに住む夫の母は数年前に若くして脳梗塞を患いました。発症のその日、普段どおりに自転車で出勤した彼女は、気分が悪いため病院を受診し、脳梗塞という診断を結局受けましたが、発症して半日以上経っても治療が開始される気配もありませんでした。私は脳疾患は素人ですが、最新の脳梗塞の治療の一つである、早期の血栓溶解剤の使用が有効だと理解しています。これは発症して3時間以内に治療開始の必要があるため、それ以前に受診してなければいけないのですが、彼女の場合は十分早期の受診だったと思います。受診したMora lasarettは夫が子供の頃に誤診による治療遅延で脊髄損傷となってしまった、いわくつきの病院ですが、義母の診断や治療が遅々として進まないことにしびれを切らした私が、つたないスウェーデン語で担当医と話をしてみても、いかにもレベルが低そうな印象でした。彼女は現在、中等度の半身不随がありますが、もしストックホルムに住んでいたら、このような後遺症は残らなかったと思います。
ダーラナは北ですが、南スウェーデンの大学病院でさえ、いろいろととんでもない話を聞くことがあります。小児科が頼りになることは子供を持つ親としては重要です。ストックホルムでは待ち時間は別としても必ず診察を受けることができますが、そうではない地域もあるようです。また、ストックホルムでは必然的に院内、あるいは、ストックホルム内には、各専門分野のスペシャリストが多い、つまり、医師同士の相談もしやすいため、診断もつけやすく、受診の門戸も広いということになります。子供や自分自身の健康を考えても、やはり、ストックホルム以外に住む気にはなれません。以前にも述べましたが、スウェーデンでは、住所によって受診できる大病院が決められているため、その病院の事情(医師のレベル、経済状況、外来やベッドの混み具合など)によって、受診さえ制限されることがあります。私も、診療所から送られてくる紹介状の初期判断をしますが、かなり多くの紹介状をつき返しています。「大学病院で診察する疾患ではない。」というのが主な理由です。特殊な疾患で、明らかにその地域には専門医や技術がないということであれば、圏外の大病院へ特別な紹介状を(専門医が)書くことにより受診が可能となりますが、そういう状況は極めて稀です。つまり、同じように税金を払っていても、住んでいる地域により、恐ろしいほどの医療格差があるため、その餌食になる危険があるのです。ストックホルム地域でも、一般的に最もレベルが高いとされるカロリンスカ大学のソルナ病院には、ストックホルム中心部とそれより北に住んでいる人が属しており、それより南に関しては、南病院やカロリンスカ大学のHuddinge病院ということになります。そういう事情からも、私はストックホルムでも南に住むつもりはありません。勿論、カロリンスカなら大丈夫ということではなく、当たる医師によって大きな差があり、カロリンスカにもとんでもない医師もいます。このあたりは、医師であっても他科のどの医師が優秀なのか見分けるのは難しいので、もはや運を信じるしかない場合も多いのですが。
母Lindaの命と引き換えに生まれてきた双子の姉妹は、すくすくと成長しているのがせめてもの幸い。医療ミスによる周産期の母の死亡であれば、日本では相当な補償金が支払われるはずですが、スウェーデンではそういうことはありません。死んでしまった人間のための補償はわずか。最近、帝王切開をしなかったために脳性麻痺となった息子を持つ知人の話を聞くことがありましたが、医療ミスがあったと認定されたにもかかわらず、彼らが受け取った補償は140万クローネだそうです。しかし、スウェーデンにしては高額の補償であり、それは息子が生きているからゆえです。日本やアメリカのように、不当に高額の慰謝料が動くのも医療崩壊に繋がりますが、スウェーデンは逆に低すぎると感じることもあります。医療ミスをしても、慰謝料が医師に降りかかってくることはまず無いので、とんでもない医師がはびこっている土壌にもなっていると思います。スウェーデンのとんでもない医師や、医療システムに切り込む「Arga doktorn」という番組が現在放映されていますので、そのうちご紹介をしたいと思っていますが、それを見ても、「住むのはストックホルム」という感を強くした次第です。







辛い話ですね〜70年代はまだまだ余裕が有ったのか若干サービスに問題がありましたが病院の数も多くてそんなに酷くはなかったようです。友人達は弁護士と医者の知り合いがいたほうが何かと便利よ言っていました。幸い両方とも友人にいたのですが何しろ病気をほとんどしなかったので病院に行く必要も無かったので事実はどうなんでしょうね?友人の息子がカロリンスカで小児科医ですが性格が良いので?色々押し付けられて結構なハードワークのようです。Arga doktorn面白そうですね。
ゼペットおばさん。
最近は、あまりに専門化が進みすぎていて、逆に難しい面も多くなってきたような気がします。やはり、関係者が知り合いにいると、便利ですね。どんな場合でもショートカットがあるものです。
確かに、親切だと仕事が増えます。私もその口です。SVTのこの番組は、日本のスウェーデン医療信仰者にも是非見ていただきたいと思いますね。日本では考えられないことが多いです。