Visits

Online: 1
Today: 431
Week: 2210
Overall: 4956249

Flag counter

free counters

法律が粉ミルク授乳を差別!?

先日の医師向け雑誌läkaretidningenにも大きく取り上げられました。

anmaOrättvis och icke-empatisk

「不平等で思いやりにかける」

という見出しです。

 

11月28日、スウェーデンの国会は、次のような法律を可決しました。

riksdag

amning2

粉ミルクの宣伝を制限するという法律ですが、広告は学術的論文か、新生児を対象とした出版物に限定するというものです。この法律に対して、多くの専門家や母親たちが怒りの声を上げています。誰でも母乳による育児が最善であることは理解しています。しかし、最近の調整ミルクは母乳に近づき、調整ミルクが母乳に劣るというエビデンスはないそうです。調整ミルクで育てている母親からは、「新法は授乳法の選択の自由に対する圧力」、「母乳育児ができない母親への負の圧力になる」などの声が上がっています。FBにも「Rätten att välja Flaskmatning(哺乳瓶授乳を選択する権利)」というグループが存在します。

 

母乳育児をしたくてもできなかった私としては、やはり、新法には疑問符が。

妊娠中から母乳育児を心待ちにしていました。子供がおっぱいを飲んでくれること、それにより得られるフィジカルなコンタクトは素晴らしいに違いないと。手押しの搾乳ポンプも買いました。しかし、現実は期待を裏切る辛いものでした。

31週に破水し、ステロイドと抗生剤の投与を始めて、何とか子供の肺のサーファクタントが産生されるようになる48時間を持ちこたえることができましたが、32週で緊急帝王切開となりました。最初の数日は、寄付された母乳を胃管から注入しました。その間、母親である私は、毎日、3時間置きに、電動ポンプを使っての乳腺刺激をしました。やっと出た数ミリリットルの初乳を、きっちり2等分して、双子に与えました。CPAPを外した頃から、最初は一人ずつ授乳。

Exif_JPEG_PICTURE

しかし、双子は2キロもない小さな体。おっぱいを吸う力も強くありません。

おしゃぶりの大きさから、いかに小さかったかが思い出されます。しかも、脂肪がまだつききっていない、骨と皮だけに近い状態。

Exif_JPEG_PICTURE

この小さな体でおっぱいを直接吸うのは大変なので、おっぱいの上から吸いやすい形の人工おっぱいのような装具を付けて授乳します。電動搾乳機を使っても、10ccなど夢のまた夢。それでも搾乳された母乳を看護師さんに渡して次の授乳で使います。搾乳された母乳を置くカウンターがあるのですが、大きなボトルになみなみと入った、他のママの母乳を見ると、涙がこぼれそうになりました。そのうち、ダブル授乳を勧められ、小さな小さな双子を両胸に。

 

次の写真は、ダブル授乳のあと、通常量のミルクを注射器で胃管から注入しているところ。

Exif_JPEG_PICTURE

看護師さんが病室に回ってくるたびに、搾乳したかチェックされます。毎回授乳のあとに搾乳するようにということだったので、夜中も3時間おきに搾乳。空に近い容器を見るたびに、悲しみと疲労とで、涙が出そうになりました。そのうち出るようになると言われていましたが、3週間の入院期間にはさっぱりでした。

胃管と呼吸モニターのついたままの双子を連れて帰宅したのが、出産からおよそ3週間後。レンタルの電動搾乳機も持って帰りました。自宅には毎週2回、訪問診療の看護師さんが往診してくれます。呼吸管理のモニターはそのうちに外れました。最後に残るのが胃管です。時が経つにつれ、双子は鼻から挿入され、テープで固定されている胃管を嫌がって、自分で抜くようになりました。通常は、訪問診療の看護師さんに連絡するか、時間外であれば救急外来へ連れて行かなければならないですが、私は外科医ですから、自分で挿入しなおしました。母乳授乳を希望するならば、胃管は残しておかなければなりません。哺乳瓶を与えてしまうと、赤ちゃんはおっぱいを吸わなくなり、楽な哺乳瓶を好むようになるからです。当初は母乳で頑張ろうと思っていましたが、管を嫌がる双子を見ているうちに、「この管を抜いてあげたい」と思うようになりました。そうなれば、母乳を諦めなければなりません。苦渋の決断でした。「子供のために母乳授乳を諦める」というのが、私の出した結論でした。双子は上手に哺乳瓶からミルクを飲んでくれたので、まもなく胃管を抜くことができました。母乳授乳ができなかったにもかかわらず、保育園に入るまで、風邪もひかず、ウイルス性胃腸炎になったくらいで、健康に育ちました。身長、体重も、2ヶ月の早産児にもかかわらず、正期産児に負けない成長ぶりでした。母乳を諦めた決断は間違ってはいなかったと思いますが、小さな双子がおっぱいを吸ってくれたあのときの感触、体の中から沸き起こってくる幸せな気持ちを忘れることができません。もう一度生まれ変わったら、是非、母乳育児を思いっきりしてみたいものです。

そんな経験をした私にとっては、新法が「母乳授乳のできない母親に対する精神的圧迫になる」という議論も理解できます。母乳授乳が簡単にできる人にとっては、「過敏な反応」と一笑されるのかもしれませんが、母乳授乳が叶わない母親にとってはセンシティブな話題です。「母親失格」と思う人もいるでしょう。私も双子に、「おっぱいあげられなくて、ごめんね。」と心の中で語りかけたものです。

そもそも、今回の新法は、WHOやEUの指針に従ったものらしいのですが、大きな問題なのは、母乳が推奨される途上国で、調整ミルクがはびこっていること。不潔な水や容器などを用いて哺乳瓶授乳することは危険です。勿論、垂直感染の可能性のある感染症などがある場合は例外ですが。日本やスウェーデンなど先進国では、母乳であっても哺乳瓶授乳であっても、大差はないと考えてよいのが常識的です。各方面で議論が白熱しているのをみて、自分なりに思いを巡らせてしまいました。

4 comments to 法律が粉ミルク授乳を差別!?

  • taka

    はじめまして。
    かなり昔からブロクを拝見しています。
    母乳育児…とても素晴らしいことです。でも最近の母乳信仰は心が痛みます。出したくても出なくて涙したお母さんたちのことを考えると。

    私の持病と服薬の関係で、2人の子は完全ミルクで育ちました。出産後すぐに母乳を止める薬を飲んだので、授乳の経験なしです。とても残念でしたが、今は幸せです。

    多様性を認める社会、どこにあるのかな。

    • takaさん。はじめまして!

      本当ですね。
      母乳育児をしない(できない)理由も人それぞれ。
      それぞれの選択、生き方を尊重して、思いやりのある優しい社会ができるとと良いなと思います。

  • Nao

    drpionさんがされた経験すべてをこのブログを通して拝読することができないのは当然のことですが、いつも読ませてただいると、つい体験を共有している気分になってしまうのが不思議です。書かれていないことでも、辛い思いをたくさんされていたのですね。母乳育児をしたくてもできなかった、その苦しい、悲しい思い、わかります。私は三人とも完全母乳でしたが、第一子が生まれて3日間は母乳がほとんど出ず、幸せそうに横で授乳している母子を見ると心が折れそうになりました。幸い、その後は有り余るほど母乳が生産され、無事授乳することができたのですが。最初の3日は泣いていました。次男の時は生後すぐにインフルエンザになり、タミフルを服用しないと!と言われ、でも母乳は止めて!と言われて、思わず泣いてしまったくらい、知らないうちに母乳に執着している自分に気付きました。苦渋の決断をされたdrpionさん。でもスクスク、のびのびと成長されている、ぼくとわたしを見ると、双子ちゃんにとっては、それが正しい決断だったのだなと思います!

    • Naoさん。

      「ごく当たり前のことができない。」ということで自分自身傷付くとともに、それが出来る人にとっては、「ごく当たり前のこと」であるだけに、とるにも足らぬことで、それが出来ない人がいることに気付くことさえなく、知らない間に、出来ない人を傷付けている、ということは、母乳育児に限ったことではありませんよね。

      結果オーライだった私の母乳を諦める決断でしたが、当時は、それは辛いものでした。この気持ちは忘れないでいようと思います。

Leave a Reply

You can use these HTML tags

<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

  

  

  


Warning: mysql_query() [function.mysql-query]: No such file or directory in /var/www/drpion.se/public_html/alltidleende/wp-content/plugins/quickstats/quickstats.php on line 345

Warning: mysql_query() [function.mysql-query]: A link to the server could not be established in /var/www/drpion.se/public_html/alltidleende/wp-content/plugins/quickstats/quickstats.php on line 345

Warning: mysql_query() [function.mysql-query]: No such file or directory in /var/www/drpion.se/public_html/alltidleende/wp-content/plugins/quickstats/quickstats.php on line 346

Warning: mysql_query() [function.mysql-query]: A link to the server could not be established in /var/www/drpion.se/public_html/alltidleende/wp-content/plugins/quickstats/quickstats.php on line 346

Warning: mysql_fetch_row() expects parameter 1 to be resource, boolean given in /var/www/drpion.se/public_html/alltidleende/wp-content/plugins/quickstats/quickstats.php on line 346