日本では多剤耐性アシネトバクター事件で警察が介入すると報道されるなど、大きな騒ぎになっているのを見守っていました。
もともと、こんな弱毒菌は、健康であれば何の害もないもの。抵抗力のない患者さんへの日和見感染だから危険なのです。そもそも、重篤な原疾患があるので、日和見感染が死因かどうかを判断するのも難しいのではないのでしょうか。
この事件に関してのコメントは、専門家の先生方に譲るとして、スウェーデンでの院内感染予防や感染症の扱いについて、少しだけ述べたいと思います。スウェーデンでは、「感染症科」という独立した診療科があります。カロリンスカでも、感染症科の日直やオンコールがいて、耐性菌にかかわらず、抗生剤の選択や投与法をいつでも相談できるようになっています。細菌培養室にも専属の医師がいて、血液培養で陽性となると、逐次、担当医師に連絡がくるため、時を逸せず適切な抗生剤の投与が可能です。
MRSA陽性患者さんには、「MRSA陽性カード」が発行され、外来での扱いが特別となるのは勿論のこと、入院の際には、感染症病棟にしか入院ができません。勿論、この感染症病棟は全室個室です。
細菌ではありませんが、ときどきノロウイルス感染が顕在化することがあります。その際には、病棟を全閉鎖するなどの対応も取られます。
多剤耐性菌の出現は、抗生剤を多用する環境では避けて通れないもの。しかし、日瑞の医療現場や患者さんの意識には、大きな差があります。
スウェーデンの街の診療所で、抗生剤が処方してもらうためには、細菌感染であるという証拠が無い限り、非常に難しい。医師は、安易な抗生剤投与は、耐性菌を作ることになるので、簡単には処方しません。それが、患者さんにも徹底していて、患者さんも医師に処方を無理強いすることはありません。日本では、単なる風邪でも抗生剤がたいて処方されます。もともと、ウイルス疾患なので、抗生剤が有効であるはずがありません。大学病院における周術期の抗生剤の予防投与についても、以前も述べたとおり、日瑞では大きな差があります。私が研修医だった頃の話。病棟のある引き出しには、曜日毎に処方すべき静注抗生剤のリストが入っていました。ときには、2剤を投与することもありました。医局近くの廊下には、MRさんが並んでいて、「xx(製薬会社の名前)です。いつもお世話になっております。oo(抗生剤の名前)、ちょっと苦戦してるんですよねー。よろしくお願いいたします。」といったような会話を、耳にたこができるまで聞きました。「鉄人」のレストランでご馳走になったりもしました。男性医師に対しては、歌舞伎町ツアーもありました。
脱線してしまいましたが、抗生剤に対する意識は、日瑞ではとにかく大きく異なります。
では、感染予防についてはどうでしょうか。
日本で私は複数の大学病院を経験しましたが、医療従事者自身の衛生管理という点で、日本は劣っていると思います。
日本では、医者や看護師が、指輪や時計をしているのは当たり前ですが、スウェーデンでは禁止されています。
この写真は指輪や時計などから培養して、細菌が検出されるということを示しています。また、長い髪の毛は結ぶこと、私服は着用せず、白衣は原則として、毎日新しいものに交換するとともに、病棟や外来では、長袖の白衣は禁止です。袖があることで、感染を媒介する可能性が高くなるからです。患者さんの処置をするときには、白衣の上に必ず、使い捨てのビニールの前掛けを付けなければいけません。回診の際も、一人回診するたびに、手のアルコール消毒をします。
日本では、例えば外科医であっても勤務中に指輪をしている人もいます。時計は殆どの医師がつけているのではないでしょうか。少し前に母校に寄ったら、長い髪の女医さんが、ハイヒールを履いて、派手な洋服の上に白衣を着て、さらに白衣の前を開けて、勿論、指輪もつけて闊歩している人を結構見かけて、非常に違和感を覚えました。男性医師も、黄ばんだ白衣、白衣の前を開けて、ネクタイがひらひら。
スウェーデンに移住したのはおよそ3年ほど前ですが、その直前まで勤務していた大学病院の手術場では、まだ手洗い用にタワシを使っていました。
こんなタワシと、
イソジンで手洗いをするのが、以前は普通でした。
液体石鹸で手を洗ったあと、通常のティッシュで水分をふき取り、
アルコールで消毒するだけ。
3年も経てば浦島太郎。日本も変わっているのでしょうか。
院内感染を最小限にするためには、医師の白衣の着用法や、指輪などについて、自己改善努力をした方が良いのではないでしょうか。







こんにちは。
たわしでごしごしの方が清潔に思えるのですが(笑)。
院内感染への措置がきちんとされているのでアルコールで消毒するだけで十分なのでしょうか?
たわしでごしごしすると、皮膚に傷が付き、却ってよくないのだそうです。それに、長時間の手術では、毛根にいる細菌の繁殖はどうしても防げる訳もないですね。
こんにちは。
なるほど傷がつく可能性もあるんですね。それとよくよく考えたら手術室に入る時はいくらなんでも手袋をすると思いますのでアルコール消毒で十分なんでしょうね。
菌がついているかどうかは測定ができる測定器、試薬、etcがあるのでしたら手術室などを出る時ににそういうものを使ってでチェックする仕組みにすればよいと思います。でも菌の種類によって違うでしょうから難しいんでしょうね。
ところで昨日の朝刊でインドは抗生剤の管理が非常に甘いので耐性菌の発生源になっているという趣旨の記事を読みました。
インドは医療費(インドにおける水準の高い医療機関であっても)が欧米と比べると格安なので本国を離れてインドに手術を受けにくる欧米の方が多いとか(アメリカで無保険で心臓手術を受けると830万円のところがインドだと60万)。インドでは後発医薬品が普及していて、町中の薬屋で医者の処方箋が無くても(必要なことになっているそうなのですが)抗生剤をいくらでも購入できるそうです。買う側も、すぐ効くので安易に買ってしまうのだとか・・・。
記事を読んでいて怖くなってきました。
手洗い後に清潔かどうかを確認する器械は、手術室においてあります。ほとんど使うことはありませんが(笑)。
インドに限らず、安い医療を提供している国への渡航は、スウェーデンでもあります。
病院では、必ず。「海外で医療を受けたか」どうか、質問するようになっています。
国際的な衛生指針や、抗生剤の使用指針があると良いのですが、、。
感染症科って初めて聞きました!うちの大学は臨床検査部が担当していたような・・・院内感染もそうですが、総合診療科や救急医療、チーム医療など、日本は対応が諸外国に比べて遅れている気がします。初歩的というか、医療における根底のほうの分野だと思うのですけれど。
オペ場は、私の大学は手洗いでタワシ使う科と使わない科があります。統一されていません。「使わないほうがいいとは思うけどね、ま、どっちでもいいよ」と清潔で入るときに指導されたこともあります。学生としては、将来医師になる目線もありますが、患者側の目線もあるので、こういう中途半端な清潔意識で自分のオペには入ってもらいたくないなぁと微妙な心境です。
mikanさん。最近の大学病院の実情を教えていただいて、ありがとうございます!
タワシは皮膚に傷が付くので、却って最近の培地になるようですよ。
「どっちでもいいよ」といわれると、逆に心配になりますね。
こんばんは。物凄いスピードでの更新、完全復活ですね。日本の感染管理はまだまだ、施設毎に凄く格差があります。手洗い一つにしても、ブラッシングでのマイクロスクラブが感染源になるのはわかっているのに、習慣と伝統から脱却できない外科医の山です。現在の臨床研修を終えた新しい臨床医が増えてくれば変わるのかなあ、と思っています。先日以前の勤務病院の診療部長と会いましたが、感染に対する認識が10年前と変わっていないのに驚きました。時間が止まっています。ところで、ボルチーニ美味しそう・・・タラの舌は、ノルウェー料理と思っていました。
実は復活していないんですよ。でも、頑張って忙しくしていた方が気が紛れます。落ち込んでいてもいいことないですよね。毎日暗くなる一方で、これもこたえます!
おっしゃるように、日本では施設間格差がありそうですね。軍隊式に叩き込まれた古い外科の作法は、なかなか変えられないのでしょうか。そういう意味では、スウェーデンでは変化を怖れない社会という印象です。
タラの舌って、ノルウェー料理なんですか?今度調べてみます。北欧にいるのに、灯台下暗しとは、このことですね!