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涙と抱擁と

激動の夏を終えても闘いの続いている職場です。

壮絶な闘いの中で、ロボット前立腺全摘に続き、ロボットによる膀胱全摘+回腸導管造設術の術者を勝ち取る立ち位置につくことができました。指導者のない中で、出来なければ開腹しても良いから執刀できるか、というボスの希望に答えて執刀医となってから2ヶ月以上が経ちます。これまでの多くの膀胱全摘を含む開腹手術と、ロボット前立腺全摘の経験から、今まで執刀したことはないものの、できるだろうと考えて引き受けましたが、そのプレッシャーは筆舌に尽くし難いものでした。膀胱全摘、リンパ節郭清、そして尿路変向の全てのステップを内視鏡手術で行うというもので、非常に難易度の高い手術です。敵対勢力は完全なる女性蔑視で、私が失敗するのを虎視眈々と狙っている訳ですし、並列で膀胱全摘の手術があったときには、出来る助手を横取りし、私に初心者の助手を押し付けたりしてきました。幸い、これまで執刀した全ての症例は手術も術後も順調、病理的にも根治的切除ということで、付け入る隙を与えてはいないものの、確執のある職場で戦い続けるのは辛いものがあります。ボス、その上のボス、さらにその上のボスと全て私の味方、というより、私がボスの切り札となって働いている状況ではあるのですが。新しい病院のシステムで生まれた新しいボスたちと、女性蔑視の男性グループとの対立に私が巻き込まれている構図です。

 

外科領域、殊に、今流行りのロボット手術は、世界的に見ても圧倒的な男性優位です。ロボット手術の学会には、殆ど女医さんはいません。数の多い前立腺全摘術や、女性の失禁手術などでは女性の執刀医もいるようですが、膀胱全摘術になると皆無。スウェーデンでも他にはいませんし、ましてや、つい最近、ロボット手術が膀胱全摘に保険適応になった日本では女性の執刀医がいないだけでなく、男性の執刀医もあまりいないと思います。男性の嫉妬というのは女性の嫉妬よりもタチが悪く、特に、女性に対する嫉妬は男性の性(さが)が許さないのか、凄まじいものがあります。「練習もせずに手術するのは危険で許せない」と言ってきたらしいですが、私としては、「開腹手術もできないのにロボット手術する方が危険だ」と言い返したいくらいです。

 

厳しい闘いの中で、術後の患者さんの喜ぶ顔は、疲弊した心や体にエネルギーをくれます。執刀した症例で術後麻痺性イレウスが遷延し、1週間以上の入院が必要になった唯一の患者さんがいました。胃管とコリン剤で何とかイレウスを脱したため無事に退院となりました。「これからしばらく生きることができるでしょうか?」と聞かれ、「勿論です。」と答えました。彼の眼から涙がこぼれました。内視鏡手術で見える傷は小さいとはいえ、膀胱全摘は大手術といえます。突然受けた進行癌の診断以来、精神的にも肉体的にも、とても辛かったんだと思います。そして迎えた退院の日の感極まった涙。そんな患者さんの涙を見たら、やはりハグしかありません。どんな言葉よりもハグの方が気持ちが伝わるような気がします。これから10年、責任を持ってフォローするつもりです。手術だけすれば良いというものではなく、経過が良くも悪くもずっと主治医の立場から逃げないことが大切です。外科医の道に入ってから30年近くになりますが、執刀するということの重みはいつになっても変わることはありません。

 

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