一通のメッセージが職場のメールボックスに入っていました。
「再診のお知らせが届いたのですが、私の今の経済状況で再診料の320クローネは払えないから、予約はキャンセルさせてください。もし、研究などの目的があって、無料で診てもらえるなら、喜んで行きます。」
差出人は70歳代のスウェーデン人の男性。
私が担当している外来は、大学病院の専門医の外来。ストックホルムでは、専門医受診は320クローネの受診料がかかります(2010年)。街の診療所の医師受診であれば、150クローネ。1年間の最大支払額が決まっており、支払いが900クローネを越えるとFrikortというカードが発行され、それ以上の支払いはする必要はありません。
受診料だけでなく、処方箋による薬の購入も、最大限度額が1年間あたり1800クローネと定められています。
余談ですが、最大限度額を越えたあとに処方される薬については、医師による「変更不可」の指示がないかぎり、同成分で安い後発医薬品に薬剤師が独断で変更するようになります。
前述の経済事情により受診をしたくないスウェーデン人男性。福祉大国スウェーデンでもこんなことがあるのです。
大学病院へは、スウェーデン人だけではなく、当然、移民、難民も受診します。
国連が定める難民に対しては、LMA(lagen om mottagande av asylsökande)カードが、移民局から発行されます。
これにより、難民は特別低額にて、医療を受けることができます。
因みに、街の診療所医師受診は50クローネ、診療所からの紹介状があれば、専門医受診でも50クローネ。
一回一医師一処方箋あたりの最高支払額も50クローネ。スウェーデン語および英語ができなければ、無料で通訳も頼むことができます。
数日前に診察したソマリア人の女性。スウェーデンで3回帝王切開をしています。しかし、スウェーデン語は全くできず、通訳とともに受診。二人とも、ニカブ着用。ニカブのいでたちをした人の膀胱鏡は流石に初めてでした。印象的だったのは彼女はとても美しい歯を持っていたこと。スウェーデンで通常診療科以上に実はお金がかかるのが歯科受診です。一回に1000クローネを越えることは珍しくありません。しかし、難民に対しては、1回受診わずか50クローネ、、。これは、彼女の美しい歯をみて私が妄想したこと。
スウェーデンで診療をしていて、ときどき考えることは、これだけ、移民難民に手厚い社会保障が、本当に継続できるのかということ。
例を挙げればきりがありませんが、、、。少し前に入院していた某国からの難民。実は隣国へも難民申請をしていて、その間に進行した膀胱癌が発見されました。隣国で放射線治療を受けましたが、スウェーデンの方が良い暮らしができそうだということで、スウェーデンへ入国。2年以上の収監となる罪でなければ、病院としては報告義務はない、というか、それ以前に、守秘義務があるようで、このケースも、移民局が知れば隣国へ送り返されるところですが、移民局は新たな難民申請のケースとして審査を開始します。彼には、既に4人の子供がおり、妻は妊娠中。ヘビースモーカー。当然、膀胱癌は喫煙が原因であろうことが推測されます。医師との面談には、某国の言葉でも特別な方言を話す通訳が必要。私が病状説明目的で面談をすると、「私の家族には今のアパートは小さすぎる。洗濯機もない。大きなアパートと洗濯機が、医学的に必要だという証明書を書いてくれ。」
流石の私も、心の中でぷっつんしてしまいました。
「私ができることは、あなたの病気の治療に関してであって、大きなアパートを手配することじゃない。」
スウェーデンに20年以上も住んでいるのに、通訳が必要な難民。
スウェーデン人以上に要求の多い難民。
スウェーデン人では殆どいない、「専業主婦」の多いこと。
難民を受け入れるということは、こういうことも含まれるんだ、と実感します。
難民とは無関係ですが、外来で多くみかけるのが、「疾病による早期年金受給者、(sjukpensionär)」です。
多くは、働けないほどの病気を抱えているとは思えません。
現在の政府は、sjukpensionärと認定する条件を厳しくし、新規sjukpensionärを50%にまで削減しました。このことを野党連合は、個別の不幸な例をいくつも提示して、与党を攻撃していますが、医療現場にいると、与党の方針は正しいと思えます。働きたくなくてsjukpensionärになろうとする人間を出来るだけ減らす努力をした上で、救われるべき人が制度上漏れてしまうのであれば、制度を修正していくべきではないかと。
「働く人が報われる」べきだと考えている私にとっては、今回、社会民主党が惨敗した(最終的な結果は明日明らかになりますが)ことは、おおいに歓迎します。スウェーデン人だけでなく、移民であっても、社会保障制度に、おんぶにだっこという状態は好ましくないと、医療現場で感じるからです。ですから、スウェーデン民主党の国会への参加で、良い形での移民問題の議論が行われることを期待しています。しかし、職場でも、スウェーデン民主党の話題が出ましたが、やはり「ラシスト」だという評価のようです。南スウェーデンには住みたくないな、、と感じてしまいました。
受診料が払えずに受診をキャンセルするスウェーデン人。どうして受診料が払えないのか、バックグラウンドは定かではありませんが、頑張って働いている人が報われなかったり、難民の方が逆に受診しやすかったりという社会現象に、いろいろと思いを馳せました。
この記事では、「移民を受け入れることのデメリット」が強調されてしまったかもしれませんが、実際にはデメリットばかりではありませんし、移民でも頑張っている人は沢山います。
私の同僚にも数名、戦争難民がいますが、彼らはとても真面目で優秀な外科医です。手術室を掃除してくれる難民の女性は、スウェーデン語も堪能だし、まじめだし、いつも明るく挨拶してくれる。やはり、「移民」が、「スウェーデン人」が、「日本人」が、ということではなく、個人の意識の問題なのでしょう。








自国民がお金がなくて診療すら受けられないのに、難民だからといって手厚く保護するというのは政策がずれてますね。SDが今回伸びたというのはこんなことへの不満が積もりに積もって現れた有権者の意思表示なので、私としては今回の結果にさほど驚きはしません。難民を受け入れるならただ住居や福祉をふんだんに提供するだけじゃなくて、かれらがどうやってスウェーデン社会に貢献できるかを考えて教育するなり、労働の義務を課すなりしていかないとだめですね。その移民教育のキャパがスウェにないなら、カッコつけて他の国に「難民を多く受け入れてます」なんていい人ぶった宣伝しないでほしいです。
そもそも平等ってだれにでも等しく富を分配するんじゃなくて、働いている人にはその分相応のリターンがあって、働かないものにはそれなりというのが本当の平等だと思うんですよ。だから、がんばって働いているのにさらに課税なんてしていたらスウェーデンから勤労意欲のある者はどんどん減っていくでしょう。Sが勝っていたら脱出すると話していたスウェーデン人ちらほらいましたよ。Sの政策だと怠け者はのほほんと暮らせて、がんばる人々がばかをみるだけですもん。
Vårrulleさん。いつもながら、直球ストライクのコメントありがとうございます。
難民を受け入れるにも、受け皿がきちんとしていなければいけませんよね。
平等の定義については、おっしゃるとおりだと思います。
しかし、どんなシステムにも、グレーゾーンで楽をしようとする輩がいて、それをゼロにすることはできませんね。私のまわりには、やはり、MかFあたりに投票する人が多かったようです。
はじめまして。
地元商社勤務のÄppelvikenと申します。
10年程前、私がKomvuxに通っていた頃、先進国出身の移民や地元スウェーデン人の若者たちが、バスや電車・自転車で学校に通っている側を、「難民」が暖房の効いた自家用車で学校の駐車場に乗り付けていた事を決して忘れません。 一人二人ではなく、多くの彼らは既に車通学だった事に驚きました。
そして、同じく先進国出身の移民やスウェーデン人はCSNから借りた学生ローンの返済に長い間おわれますが、「難民」はその心配がありません。 これは、フェアなのでしょうか。
私は決してレイシストではありませんが、リアリスト(Realist)です。
全員とは言いませんが、実に多くの難民がスウェーデンシステムを悪用しているのは事実です。 彼らが本当の意味でスウェーデン社会に融合できる様にするのは、今までの政策では無理と考えられます。
SDが5%以上も獲得した事は、国として恥ずかしい事ですが、同時に分かる気もします。
はじめまして!コメントありがとうございます。
ご紹介いただいた、「難民の贅沢な生活」、心穏やかではいられませんね。
高社会福祉となると、どうしてもシステムを悪用する人間がでてきます。
それを少しでも少なくするためには、支援を出来る限り現物支給にすべきですね。補助金給付のために、学ぶ気持ちもないのに学校へ行ったりする人も沢山いるようです。医療現場でも、「難民」であることを逆手に取ったような態度の人間をみると、制度自体に疑問を持つこともあります。ヨーロッパの中でも、まだまだ平等主義が徹底しているスウェーデンですが、SDが躍進したということは、システムにほころびが出てきている証拠のような気がします。