日本ではモンスターペイシェントが増えていますが、スウェーデンでは殆どお目にかかることはありません。
以前にも述べたように、スウェーデンにおける医療過誤の扱いは日本とは全く異なります。
患者さんからの訴えにより、社会保険庁(Socialstyrelsen)や、HSANが事実関係の調査と判断を行いますが、患者さんが被った障害に対する保障は、このプロセスとは無関係に行われます。患者さんが医療従事者を相手に賠償金を争うことはないのです。以前の記事はこちら。
ですから、スウェーデンにおける「モンスターペイシェント」に近い患者さんは、医療従事者のミスを追求するのではなく、より良い対応を受けることが目的のことが多い訳です。
少し前にこんな患者さんがいました。
持病の慢性疾患があり、それに加えてアルツハイマーも発症。度々感染症などの問題を起こすのですが、奥さんが欧州のある先進国で医師として働いていた関係で、その国で処方された薬を使ったりもしていたよう。今回は、老人病院から敗血症の疑いで救急外来へ送られてきました。最初のCTで、腎盂腎炎疑いということで泌尿器科に入院しましたが、結局その後、胆石も見つかり、胆嚢炎ということになりました。当然、外科へ紹介状を書くのですが、「手術適応なし」ということで、引き受けてもらえません。患者さんを動かすのに2人が必要、すぐに不穏になるなど、非常に手がかかります。その上、家族の要求が尋常じゃない。朝も夕も誰かがつめていて、なんだかんだと苦情を言ってくるのです。老人病院に送り返すには、点滴が外れなければならないので、静注薬を内服に変えるのですが、家族が静注薬を注文してくる。利尿薬のためカリウムが下がってしまい、それを補う点滴をすれば、いつの間にか点滴の速度が全開になっている。
ストックホルム近郊の老人病院10件以上に、転院の紹介状を送りましたが、全部却下。コミューン(県)単位の医療サービスがあるのですが、そちらは、中心静脈ラインがあると引き受けてくれない。スウェーデンには、救急病院に入院適応がないけれど、高度の医療を必要とする患者さんに対する医療サービスで、Avancerad sjukvård i hemmet (ASIH)というシステムがあります。在宅でも、医師や看護師による治療を受けることができます。中心静脈ラインの管理もしてくれます。しかし、実際にこのシステムで面倒を見る患者さんは主に癌の患者さんで、この患者さんのように、慢性疾患で高度医療が必要でも、良性疾患であれば受けてもらえない。
泌尿器科病棟への入院は数週間に及び、患者さんを退院されるためのミーテイングが何度も開かれました。
家族からは、「何でも良いから癌の病名をつけてくれ。」という話まで出ました。
スウェーデンでは良く「resursが無い。」という表現を使います。英語の「resourse」と同義です。
この患者さんの受け入れを断ってくる理由の殆どが、「resursが無い」ことです。結局、それを話し始めると、政治問題となり、医療の中でどの分野に政治家が重きを置くか、ということになります。日本の大学病院と異なり、あくまでも大学病院は救急病院です。癌の末期を始めとして、大学病院でなければできない治療の対象にならない患者さんは、即刻転院させるのが原則です。
モンスターペイシェントの話から、医療システムの話になってしまいました、、、。
しかし、日本でもスウェーデンでも思うこと、、。要求の多い患者さんは、何故か治療がうまくいかないことが多いのですよね。嫌われる患者さんに対して異なる治療をする訳ではないのに、合併症が起こったり、、、。医療現場で働いている人は、自分が病気になったときは、なるべくかわいらしい患者さんになろうと思っている人は多いのではないでしょうか。
結局、この患者さん、転院ではなくて自宅へ退院となりました。この次に救急へ受診したときには、適切な診療科が主治医になることを祈るばかりです。








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