芸術には疎い私ですが、絵画や陶磁器のスカルプチャーに興味があります。
芸術家から直接贈られたスカルプチャーを2つほど持っていますが、この2つの顔がとてもよく似ていることに気付き、最近、大変驚きました。
一つ目は、4半世紀近く前、附属高校から医学部への推薦が決まったとき、高校1年生のときの担任だった美術の先生に頂いたもの。
斜め掛けにした籠の中には、ネズミが。
高校に入学したとき、学年4クラスのうち半分が外部からの進学者で、その殆どが入学当初は医学部志望でした。学年から4名が医学部への推薦を受けることができますが、私は当時トップ4には程遠い成績でした。担任だった彼には、おそらく、私には医学部の推薦を受けることは無理だとわかっていたのだと思いますが、卒業するまで私を励まし続けてくれました。最終的に私はなんとか推薦を受けることができたのです。彼は、ヘビースモーカーの上、大酒飲み。卒業のときには、「先生、摂生してくださいね。」とお願いしました。医学部卒業を間近に控えたある日、彼の訃報が突然伝えられました。医師免許を取ったら挨拶にいこうと思っていた矢先のことでした。学校の自室で、吐血して倒れているところを発見されたのだそうです。おそらく、アルコールによる肝硬変から食道静脈瘤の破裂を来たしたのではないかと思われます。海の近い先生の自宅で行われたお通夜に行き、遺影の前で涙を流し手を合わせました。
「先生に生きていて欲しかった。」
この人形の丸くて優しい顔が、先生の人柄を現しています。医学部卒業してフレッシュマンで初めて地方へ出張したときから、沖縄勤務まで国内では連れ回し、とうとう、先生の人形はスウェーデンまでやってきました。この人形を見ると、先生のことを想い出します。幾度とない先生の励ましが、どれだけ力になったことか、、、。
2つ目の人形は最近戴いたもの。
私は、ストックホルム中心の市場の片隅にある魚料理のレストランが好きで常連と化しています。このレストランはいつも混んでいて、相席は当たり前。ある日、相席となった老夫婦と話が始まりました。いつもでしたら、その場だけで終わるのですが、何故かその老夫婦に気に入って頂いたようで、名刺を頂きました。名刺には「芸術家」との肩書きがあり、どうやらかなり有名な方のようでした。その際、私も名刺を差し上げましたが、その後連絡があり、自宅に招かれました。超高級住宅街であるDjursholmに、ストックホルム市庁舎を手掛けた建築家Ragnar Östbergにより建てられた一軒家にお住まいでした。
アトリエへ案内されましたが、あまりの迫力に圧倒され、涙さえ出てきそうなほどでした。
これらはほんの一部です。
彼は、ハンガリー人。ハンガリー革命の際に隠れた業務に携わっていた関係で、秘密警察に逮捕されて銃殺されそうになったのですが、ハンガリーの首相と知り合いだったということで、オーストリアまで移送され開放されました。その後、銃殺されたスウェーデンの首相、オロフ・パルメとの出会いがあり、彼の助言によりスウェーデンに住みついたということでした。そんな関係もあって、彼の作品には、哲学や政治思想などが色濃く出たものが沢山あります。
「Varför」とは、「何故」という意味。彼の頭の中には、常にその問いかけがあるのでしょう。
ハンガリー料理をご馳走になり、グリーンランドを描いたリトグラフを戴きました。
その後ふたたびランチで会ったときに、人形を。
彼のスカルプチャーには、人の顔以外に、手、鳥といったモチーフが良くあります。
今回、彼のポケットから出てきたのは、鳥。
単純な形だからこそ難しい、完璧なバランス。そして、丸くて優しい顔。
先生に貰ったあの人形と、同じ顔。
その顔が表現しているのは、「愛」かな、と思いました。
そして、その2つの人形は仲良くならんでいます。出会うはずのなかった人形達。








私は、Drpionさんとは結構長いお付き合いだと思っていましたが、この先生の人形は知りませんでした。心温まるエピソードと同時にとても素敵なお人形ですね。今度、見せて下さいね。
実物はまたとてもいい感じなんですよ。今や「形見」となってしまいましたが、人がいなくなっても芸術は残りますね。医師の仕事は、私にとってこの上ない職業だと思っていますが、私がいなくなったら、何も残りません。水香さんの作品もずっと残っていくのでしょうね。素敵です。
もしかしたら出会うはずのなかったふたつのお人形・・・
物にも縁がありますね。
自分と物、自分の持ってる物と物。
人と人と物と物・・・これも他生の縁ですねぇ。ほっこり。
どれもこれも、「一期一会」ですね。何だか、感慨深いです。
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