Visits

Online: 1
Today: 203
Week: 3462
Overall: 5469101

Flag counter

free counters

Mの学位審査

2月4日はMの学位審査でした。

Mのバックグラウンドは、生物学。約5年前にカロリンスカのPhD studentとして登録しました。カロリンスカのシステムでは、30ポイントの授業(フルタイムでおよそ半年分に当たります)を受講し、試験に合格することが義務付けられています。また、日本と異なり、学生は給料を貰いながら研究するため、給料を払える能力のある指導教官を見つけ、合意に至らなければなりません。以前は、場合によっては10年近く学位取得までにかかることがあったのですが、現在では、原則4年程度という規定となっています。中間点で、ハーフタイムという中間審査がありますが、これ以降は、指導教官は学生の社会保障費を国に支払わなければならないため、30%以上の余分な人件費がかかることとなるため、ハーフタイムは中間点というより、少し遅れて行われることが多いようです。学位審査を受ける条件は、正式には、1999年に出されたBologna declarationに準じており、論文数については規定がありません。しかし、カロリンスカでは実務上は、出版された論文があって、しかも、当該学生が筆頭筆者であるものが最低1件あること、その他に1件の論文かマニュスクリプトがあることが、暗黙上の条件となっているようです。しかし、実際には、例えば、最も権威のある雑誌、「Cell」にshared first author(筆頭著者だが、筆頭著者が複数いる場合)の論文が1編という場合でも、論文数が少ないなどの理由で学位審査委員会で揉めることもあります。

Mの場合、

Proc Natl Acad Sci USAと、EMBO Jというトップジャーナルに論文があり、Proc Natl Acad Sci USAではshared first authorとなっているため、審査の条件は十分にクリアーしています。

そして、学位審査用に彼女が書いた冊子がこちら。

Introduction、Aims、Results and discussion、General conclusions、Acknowledgemens、Referencesで56ページ、これに、各論文が続いて、一冊の本となります。

とにかく、気が遠くなるほどの仕事量です。

それに対して、日本の医学博士はピンキリ。ある私立医大では、卒業生の殆どが開業医となります(もともと、開業医の子弟が入学するのですが)。開業医をするのに、研究生活の経験が必要だとは思いませんが、開業医として、「学位証明書」を診察室に飾ることは、大事であるようです。そんな大学はたいてい、「東大系列」などといって、一流大学の系列となっていることが少なくなく、教授、講師陣が外からやってくることが多い。そんな場合、講師陣が学位の下請けをして、数百万円の謝礼を受けるということも行われることがあるようです。もともと、授業料だけで5000万円近く、寄付金をあわせると6年間で1億円近くのお金をかけて医師となるのですから、数百万円で学位が取れるなら安いものなのでしょうけれど、そんな学位と、PhDが同列にされることは、納得がいきません。私の母校は当時は学費も安くて、普通のサラリーマン家庭の子弟が沢山いました。母校の前教授は、「学位は足の裏についた米粒みたいなものだ。取っても食えないが、取らないと気分が悪い。」などとのたまわっていましたが、実際は米粒を取るように簡単なものではありませんでした。私が学位を取ったときには、臨床が一区切りする夜の7時ごろから実験を始め、オールナイトになることもしばしばあり、結構大変でした。臨床家としても、研究に携わり、研究者としての視点や考え方を学ぶことは大事だと思いますが、タイトルを取るためだけなら無意味。とはいえ、教授になるためには学位取得は当たり前であり、カロリンスカでも、上級指導医(överläkare)となるためには、学位がなければいけません。とても優秀な外科医で研究者でもあるスイス人の同僚は、スイスではドイツ方式で、学位というシステムがないため(博士号を取るためには、マスターからやりなおさなければならないらしい)、överläkareになることができず、最近、母国へ帰る決意をしたということもありました。どこでも、ヒエラルキーの上を目指すのは、大変な訳です。

話をMの学位審査に戻します。

9時半より、まず、opponentの講演が15分くらいあります。続いて、Mが30分ほどの発表。そして、2時間近くに渡る質疑応答。前半はopponentが全ての論文の図表について細かく質問。後半は審査委員からの質問。

前の記事で、「BUT」を言わないように、と勇気を出して注意しましたが、なんと、Mは一回も「BUT」を口にしませんでした。練習のときより格段に良い発表でした。嬉しかった。

その後、別室で、審査委員とopponent、そして、指導教官、私は副指導教官として、判定会議に出席しました。勿論、文句なしの合格。

Mとラボの仲間達は、ラボの一室で軽食を食べながら結果発表を待ちます。そこへ我々が登場。審査委員長からの発表が。

そして、合格が告げられると、シャンパンを開けて乾杯です。

そして、同じ日の夜、場所を移して祝賀パーテイー。およそ70人が集まりました。

トーストマスターは同じラボのイタリア人のPhD studentと、Mの学生時代の友人。

本人や指導教官は勿論のこと、友人や家族のスピーチもあり、盛り上がりました。

中でも圧巻だったのが、同じラボのメンバーのスピーチ。

左から、アルゼンチン人、フランス人、中国人、イタリア人。

良い仲間を持つのは、幸せなことですね。

最後に20分にも及ぶ、恒例の映画上映。これも同僚による作成。本人は泣きそうになっていました。

研究者はこれからが本番です。頑張ってほしい。

. . . → Read More: Mの学位審査

大学における教授法についてのコース

現在、大学での学生への教育法についてのコースに出席しています。

参加者は26名。医師、歯科医師、看護師、作業療法士、研究者など、大学で教える立場にある人達が参加しています。純粋に教育に興味がある人もいれば、自分のキャリアのために必要な単位だから取っている人もいて、興味の度合いは人それぞれ。

教科書は、「Universitetspedagogik」。

講義とグループデイスカッションが主なのですが、普段使わない抽象的な単語が沢山出てきて、私にはかなり荷が重い。スウェーデン語を母国語としないのは私くらいです。英語のコースを取れば良かったかなと、かなり後悔しています。

講義をデザインするときに、最も大事なことは、「学習目標」を明らかとすること。何がどうして大事であるのかをはっきりさせなければなりません。学生のレベルを早い時点で見極め、レベルにあわせた授業内容としなければならない。学生とのコミュニケーションを取るにはどうしたらよいか。学生の理解が、「表面的」だけでなく、「より深い」ものとするには、どうしたら良いのか。

学生の進路には、「アカデミック」と「ノン・アカデミック」とがあります。アカデミックとは、教育・研究を伴った活動のこと。医師でもそうです。割合からすれば、「アカデミック」に属する医師はマイノリテイーですが、権威は「アカデミック」にどうしても付随するもの。「ノン・アカデミック」が進路であれば、学生の大学での目標は、究極のところ、「試験に合格する」というレベルで良いことになります。「暗記」だけで終わるのか、「深い理解」の試みをするのか。こんなことも、グループデイスカッションします。「暗記」だけで終わるような学習の仕方は、文化とも深い関わりがあって、それはアジア諸国に顕著だという記述が、既に教科書にもあり、それを日本の問題点として捉えていた私にとっては、とても印象深いものでした。

これまで、カロリンスカ医科大学でも、医学生や大学院生、留学生などの指導をしてきました。

奇しくも、2月に入って、私が指導教官であった大学院生が学位審査に合格しました。彼女が大学院生となった当初は、論文のプレゼンテーションもできないし、発表は原稿がないといけないという状況。しかも、性格的に、「bad loser」なのです。自分の非を認めない、謝罪できない人がいますね。これは本当に厄介です。自分をどうにかして正当化しようとしてきますが、相手にする方も厭になります。医師の後輩にもいます。医師の知識や臨床感覚は、どうしても経験値、つまり、勤務年数抜きには語れないところがありますが、先輩の言葉が素直に聞けない人がいます。まずは、先輩の言葉には耳を傾けるべきでなのですが、それができない人の指導は難しいものです。外科医の世界は特に。学問の世界では、優秀であり、自信がある人ほど、loserとなることを怖れないものだと理解しています。私も駆け出しの医師であったころは、「○○を知らない」と認めることが難しかった。しかし、専門医としても長い経験がある今は、「知らない」ということがそれほど恐くなくなりました(勿論、知らなくても許される分野についての質問に対してですが)。

「bad loser」は悪いことばかりではありません。例えば、世界のトップアスリートなどは、漏れなく「bad loser」だと思います。だからこそ、負けたときの悔しさをリベンジしようとすることで、次のステップがあるのです。脱線しましたが、大学院生の彼女Mが学位審査を受ける前に、「grillning」という機会を設けます。要は、「焼く。バーベキューする。」から転じて、本番同様の発表をしてもらい、厳しい質問や批評をする会のことです。彼女の最後のgrillningは3時間余りとなり、私もかなり虐めましたが、「negative feedback」をする、つまり、「批判」をするのは、かなり難しい。心配りが必要です。知識不足や、パワーポイントの不備などについては、簡単に指摘できますが、批判が難しい場合も稀ではない。目的はあくまでも、「向上」であって、「恥をかかせること」ではないのです。Mの場合、発表や質疑応答を貫くトーンが常にネガテイブで、これを何とかしたかった。ある問題点に気付いたのですが、それを指摘するかどうか随分悩みました。悩んだ挙句、比較的適したチャンスを見つけてコメントしました。

「あなたが質問に答えるとき、必ず「BUT」で始めるのよね。「BUT」で始めると、印象がネガテイブになるから、「BUT」を省くか、究極、「YES」に変えたらどうかしら。」

これに対しMは、

「BUT,,,,」

と応答し、一同大笑い。場も和んで救われました。

Abraham Lincolnの言葉にこんなものがあります。

「He has a right to criticize who has a heart to help.」

批判するだけで、助ける心が無いのであれば、批判する資格がない。逆に訳すとそういうことになります。

大学病院という、教育の場で働く私が、常に考えていることです。医者は一生発展途上。批判してくれる同僚には、感謝します。良薬は口に苦しですが、批判する方も辛い。批判せずに流す方がずっと楽なのです。そして、これは、人生に通じるもの。

今回は、「negative feedback」つまり「批判」について書きましたが、それと同じように大事なことは、「positiv feedback」、つまり「賞賛」。日本人は比較的これが下手だと言われていますね。職場だけでなく、子育て、夫婦、友達との関係でも、「褒めること」は、非常に大事だと考えています。

次のエントリーでは、カロリンスカでのPhD取得と、Mの学位審査について書いてみたいと思います。

尿路系損傷に関する講義

ストックホルムでは、平日の夕方に、特定の専門分野のスペシャリストを招いての勉強会が行われることが度々あります。

今回出席した勉強会は、特に、産婦人科疾患に絡む尿路系損傷などがテーマで、泌尿器科医だけが対象ではないのも、魅力の一つです。

「Obsteric and iatrogenic injuries to the urinary tract」

というタイトルで、スウェーデンに限らずヨーロッパ内の大家も招かれています。

自分自身の備忘録も兼ねているので、少しグロテスクな図も出てきますので、医療系に弱い方はどうぞスキップしてください。

「iatrogenic」とは、「医原性」の意味で、医原性尿路損傷は、今回は主に、産婦人科や消化器外科領域の腹部手術で、尿管や膀胱を損傷してしまうことです。子宮は膀胱のすぐ後に位置し、尿管とも近接しています。S状結腸や直腸は男性においては膀胱のすぐ後です。子宮全摘やS状結腸、直腸の手術において、尿管を損傷し、泌尿器科医が呼ばれることは、珍しいことではありません。

スウェーデンでは、一年あたり、約10万5千人の患者さんが、医原性の障害(治療行為により得る障害)を被っており、そのうちの4万人以上が手術の際に起こったものだそうです。医原性の障害を治療するために、病院の全ベッド数の10%が使われており、治療に必要なコストは1年あたり44億クローネにも上るのだとか。

帝王切開において、6人のうち1人が輸血が必要で、膀胱など多臓器の損傷は100人に2人。結構頻度が高いと思いました。

分娩後に、尿失禁や便失禁が起こることは良く知られています。

スライドは、胎児の頭が膀胱を恥骨に向かって圧迫するところを示しています。報告では、分娩後の尿失禁の頻度は5%から40%で、少なくとも10%以上の経産婦が尿失禁となるようです。

尿失禁よりも厄介なのが、便失禁。

分娩の際、肛門方向へ裂傷が起こることにより、肛門括約筋が損傷を受けるのが原因。Obsteric Anal Sphincter Injury(OASIS)と呼びます。

骨盤の形と胎児の頭の形は種族によって異なるそうです。ゴリラは安産なのでしょうか?因みに、人間はHomoです。

分娩の際に、会陰切開(Episiotomy)をすることがあります。

下段の図は、会陰切開の頻度の経年的変化、上段はOASISの頻度の経年的変化を示しています。

つまり、会陰切開が年々減るにつれ、OASISが増えているというデータ。

北欧におけるOASISの頻度は、デンマークが3,6%、ノルウェーが4,1%、スウェーデンが4,2%であるのに対し、会陰切開を多く行うフィンランドでは0,6%と低頻度。会陰切開がOASISを予防することは理解されていますが、会陰切開を行えば良いというものではなく、行う場所が重要。

肛門方向から45度の方向が良いとされますが、60度くらいを狙ってようやく45度くらいになるとされ、非常に難しいそうです。

尿失禁や便失禁、また、子宮脱を予防する意味での帝王切開はある程度効果があるとされています。しかし、緊急帝王切開では、肛門挙筋、臀部の神経、内骨盤筋膜などが既に損傷されている可能性が高いため、効果は殆どないとのこと。先に述べたように、帝王切開にも合併症がない訳ではなく、どんな患者さんを帝王切開とするかは難しいし、費用対効果も考慮しなければいけない。

尿失禁は泌尿器科の領域であり、多くの女性が密かに悩んでいる問題でもあります。

病状によって、骨盤底筋体操、内服や手術など様々な治療法がありますので、泌尿器科受診をお勧めします。

講義の後半は、主に産婦人科手術における尿管損傷の症例提示と、診断法や治療法に関するデイスカッションでした。泌尿器科医にとっては、目新しいものもなく、気楽に聞いていましたが、産婦人科の先生にとってはやはり難しいようでした。自分の専門科目の周辺領域の分野は、もっと勉強の必要があり、非常に刺激を受けた会でした。

. . . → Read More: 尿路系損傷に関する講義


Warning: mysql_query() [function.mysql-query]: No such file or directory in /var/www/drpion.se/public_html/alltidleende/wp-content/plugins/quickstats/quickstats.php on line 345

Warning: mysql_query() [function.mysql-query]: A link to the server could not be established in /var/www/drpion.se/public_html/alltidleende/wp-content/plugins/quickstats/quickstats.php on line 345

Warning: mysql_query() [function.mysql-query]: No such file or directory in /var/www/drpion.se/public_html/alltidleende/wp-content/plugins/quickstats/quickstats.php on line 346

Warning: mysql_query() [function.mysql-query]: A link to the server could not be established in /var/www/drpion.se/public_html/alltidleende/wp-content/plugins/quickstats/quickstats.php on line 346

Warning: mysql_fetch_row() expects parameter 1 to be resource, boolean given in /var/www/drpion.se/public_html/alltidleende/wp-content/plugins/quickstats/quickstats.php on line 346