最近でこそ、40代の出産もあまり珍しいものではなくなりました。女性の社会進出に伴い、初産年齢は年々上がっています。それとともに、初期は「試験管ベビー」と呼ばれ、IVFで妊娠したことは秘め事とされる傾向がありましたが、現在ではIVFもごく一般的となり、IVFにより母親となった女性が恥じる必要がなくなったことは、その一人としても喜ばしいことだと感じています。
しかしながら、女性には、生殖機能を失う明らかな「賞味期限」があって、その点で、男性と比較すると非常に辛い思いをすることも多く、自然の摂理とはいいながら、不公平だと天を恨む女性も少なくないはずです。子供に恵まれずに離婚して、男性は若い女性と再婚し子供をもうける、、、。元夫の母親に、「もう少し若い人と結婚すればすぐに子供ができるわよ。」と言われて結局離婚することになった私も、当時、悔しい思いをしたものでした。その言葉が、しかも女性が発した言葉であったことで、深く傷つきました。女性の持つ卵子は、既に生まれたときに全て存在しており、思春期に排卵が始まると、その数は減る一方です。また、卵子の質が低下するため、受精や着床、そして妊娠にいたる確率が小さくなります。また、21番染色体のトリソミーであるダウン症候群の危険性が上がることは、良く知られていることです。しかしながら、子供が親から受け継ぐDNA異常は、そのほとんどが父親からのものであるという論文が出ました。
8月23日付のNatureに発表され、インパクトの大きさから、表紙に取り上げられました。
研究は、アイスランドの deCODE Geneticsの Kari Stefanssonらによるもの。
このグループは、24832組の父ー母ー子供、85289人のアイスランド人から採取したDNAについて、約2500のマイクロサテライトについて検討し、これらが高頻度で変異しているということを明らかにしています。今回の論文では、78組の父ー母ー子供、合計219人について、DNAの塩基配列の解析をしました。子供がのちに罹患する疾患、たとえば、自閉症や統合失調症といった疾患にかかるリスクは、父親の年齢が上がるとともに上昇するというデータです。20歳の父親はおよそ25の変異があるのに対し、40歳の父親は65であり、1年父親になるのが遅くなるとともに、2つ多く変異が子供へ受け継がれるという計算になります。親から子供へ受け継がれる変異の実に97%が父親由来なのだそうです。精母細胞は活発に分裂し、常に新しい精子が作られますが、高齢化するとともに精子のDNAの変異頻度が高くなります。そして、今回の調査では、子供が自閉症や統合失調症に罹患する頻度が、父親の年齢が高くなるとともに高くなることがわかりました。
Natureに掲載されたオリジナルのグラフをわかりやすく書き直したものが、The New York Timesにありましたので、お借りしました。
The Wall Street Journalでは、父親、母親双方のDNAの変異の頻度の年齢変化をグラフにしているので、こちらも拝借。女性の年齢と、子供のDNA変異の頻度は無関係という結果。
今回のデータでは、父親のDNAの変異の頻度と、子供の精神・神経疾患の頻度が相関することより、父親の遺伝子が子供の脳の発達に関与している可能性が示唆されます。これまでにも、父親の年齢と精神・神経疾患の関連についての報告、また、その他の疾患、たとえば、癌(乳癌など)についても関連があるという報告もみられます。DNAの変異が常に子供の異常に関連する訳ではありませんが、これらの報告より、女性が若い時点の卵子を凍結するのと同様、男性も精子を凍結すると良いのではないか、というような議論も出ています。
私は所謂、フェミニストではありませんが、これまで、男女差別の多い社会でもがいてきたこともあって、男性の生殖機能にも賞味期限があるということには、多少の安堵の念を覚えてしまうことは否めません。生殖機能の盛りを過ぎた女性は、「不妊、挙児断念」となれば、その結果子供にDNAの異常を伝えることはありませんが、男性については高齢でも、「挙児」に至る可能性が少なくないため、子供に異常を伝えてしまうということになります。
今回の論文は、世の中の男性諸氏に、男性の生殖機能の賞味期限を考えるきっかけを与えたに違いありません。
. . . → Read More: 男性の生殖機能にも賞味期限あり
Recent comments