ボトックスといえば、一般的には、美容外科領域での「しわとり」目的が有名ですが、泌尿器科領域でも、ボトックスを使います。
泌尿器科での適応は、「過活動膀胱(OAB: overactive bladder)」。
意思とは無関係に、膀胱の排尿筋が収縮しまう。強い尿意が突然起こり、時には、失禁ともなる病態。この病気には、通常、抗ムスカリン薬(副交感神経遮断薬)が使われますが、口渇などの副作用や、閉塞隅角緑内障などの禁忌があり、使えないことも多々あります。
OABは、神経学的疾患に起因するものが良く知られています。
例えば、多発性硬化症(MS: multiple sclerosis)や脊髄損傷です。OABのある患者さんでは、膀胱が過緊張状態となり、膀胱容量が減少し、尿失禁が起こります。日本では見たことがありませんでしたが、脊髄損傷の患者さん、特に、Th5-6以上の損傷の場合には、Autonomic dysreflexia (AD)が起こる可能性を常に考えなければなりません。
末梢からの刺激、殊に、尿意や便意などの刺激が、交感神経系の過度の反射を起こし、高血圧また、高血圧に起因する病態を引き起こすもの。脳出血や心筋梗塞などの原因にもなります。これを予防するために、Th5-6以上の脊髄損傷の患者さんでは、OABの治療をして、膀胱容量を増やし、膀胱内圧を下げることが必要となります。この治療には、ボトックスが大きな力を発揮します。
ボトックスは、A型ボツリヌス毒素で、神経筋接合部などにおけるアセチルコリンの放出を妨げることにより、筋肉を弛緩させます。スウェーデンでは何年も前から、OABに対する治療薬として使われてきましたし、FDAも今年、脊髄損傷やMSに伴うOABに対する治療薬として認可しましたが、日本では未だに認められていません。本当に日本というのは、新薬が導入されるのに時間がかかる国で、困ったものです。
このボトックス、膀胱鏡を使って、膀胱粘膜に注入しますが、ADの可能性のある患者さんに対しては外来治療ではなく、全身麻酔による治療を行います。以前は、300単位を30mlの生理食塩水に溶解し、1mlずつ30箇所に注入していましたが、200単位でも効果に差がないということで、最近は200単位に減量して、コストを下げる努力をしています。このような患者さんは、6ヶ月毎に入院してボトックス治療を行います。
尿失禁というのは、健康な人が想像する以上に、患者さんの生活の質を下げるものです。写真のボトックス100単位で、1954,5クローネします。200単位で約4000クローネ。日本円にして5万円近くも。知人の美容外科医に聞いた話ですが、(しわのばしの治療では)日本人よりも欧米人の方がより多くのボトックスを必要とするのだそうです。やはり、遺伝子の違いでしょうか。美容外科では10単位ほどの注入で2万円くらいのお値段らしいですが、、、。やはり美容外科は儲けますね、、、。ちなみにスウェーデンでは200単位を注入するこの治療、全身麻酔で、「無料」です。









Recent comments