先週は、80代女性の膀胱全摘の執刀をして、更に滅多にない手術もありました。
カロリンスカの関連施設で、ストックホルム脊損センターというのがあります。脊損患者さんの症状といえば、やはり、運動神経や感覚神経の麻痺ですが、長期的にみて患者さんのQOLに大きく関わってくるのが、排尿や排便機能です。そこで、泌尿器科の一部門として、「神経泌尿器科」というのがあり、同室の女医さんD先生はその分野を専門としています。脊損患者さんだけでなく、多発性硬化症(MS)や先天性の二分脊椎なども、排尿機能に障害が出ます。
排尿できなければ尿閉となりますが、蓄尿障害があると、尿失禁となる場合があります。両者が共存する場合もあります。過活動性膀胱といって、排尿筋の緊張が常に高くなる状況では、尿失禁となり、患者さんにとっては尿閉以上に辛い状態ともいえます。排尿筋の緊張を取るために、ボトックスの膀胱への注射も行います。日本ではまだ治療として認可されていませんが、スウェーデンでは外来での治療が可能です。ボトックスを用いても膀胱容量が増加しなくなると、次は手術です。通常、小腸を用いて膀胱を拡大する手術が行われます。健常人は4-500mlくらいの膀胱容量がありますが、手術が必要な患者さんは100mlもないこともしばしばです。
今回の患者さんは、車椅子の女性で、自排尿もできないため、最低、自己導尿が必要なのですが、車椅子に座りながらの導尿は厳しいため、導尿用のルートを腹部に設けることが希望でした。このような手術に望む際、計画通りに手術ができないことを想定して、第2、第3のプランを用意しておくことが大事です。D先生は膀胱の手術のような大きな手術には慣れていないため、私が手伝うことに。我々のプランは、第1が、虫垂(盲腸)を遊離して、虫垂の先端を切断し膀胱へ縫い合わせ、虫垂の大腸側を臍につないで、臍から導尿をするもの。しかし、解剖学的に虫垂が肝臓近くに位置していて、難しいと判断し、第2のプランへ。それが、Monti法。
2cmほどの小腸を2つ採取し、それを長軸方向で切断。2つの小腸片を縫い合わせ、最後に短軸方向に縫い合わせて管状にするというものです。(イラストは、加藤晴朗先生のイラストレイティッド泌尿器科手術より)
この管を膀胱と臍に縫合します。膀胱へ縫合する際には、膀胱に粘膜下トンネルを作って、尿失禁が起こらないようにします。
これとは別に小腸を約20cmほど採取して、これも長軸方向へ開き、U字に合わせて縫い合わせます。膀胱を貝のように切開し、小腸で作った新膀胱を帽子状に被せて縫合します。
手術の際、患者さんが太っているかどうかは大きな問題となります。脂肪が多いといいことはありません。今回の患者さんもかなり高いBMIで、非常に難しい手術でした。休みなしで9時間近く。
こういった手術は、患者さんの「機能」を向上させるもの。癌の手術とは全く異なった厳しさがあります。
「機能」が改善しなければ、手術をする意味がないのです。しかも、その「機能」は、患者さん自身が評価できてしまう、、、。癌の手術では、「癌を完全に切除する努力」をして、閉創してしまえばそれまで。再発したとしても、それが不完全な手術によるものだったのか、癌が進行していたためなのか、患者さんにはわかりませんから。
今回、機能が向上したかどうかの評価は、少し先になりますが、是非、患者さんが喜んでくれる結果となってくれることを祈るばかりです。








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