日本では女性一人の職場で、そして、国境を越えて、文化や言語を越えて、ここまで戦ってきたつもりだ。
外科医は手術ができてなんぼ。日本でも手術症例の取り合いということはあった。
誰がメスを握るか、誰が第1助手になるかで、怒鳴りいあいの喧嘩になったこともあった。今のように研修医が給料を貰える時代ではなく、月給2万5千円で、しかも1日24時間労働ということもありながら、勉強する機会があれば食らいつく。自分のチャンスとなれば、不眠不休など屁でもない。そんな生存競争に、男も女もなかった。そして、チーフ卒業のときには、歴代のチーフの中でも、手術が上手なチーフだとお褒めの言葉を貰ったりもした。
その経験が勿論、異国の地でも生きている。異国の地で、異国の人の体にメスを入れ、一人で全責任を取らなければならない立場になっても、なんとかやっていけている。しかし、外科医は常に発展途上。私も発展途上だし、そのためには、より多くの手術症例に出会うことが必要。
この病院に勤務して2年近くになるが、その中で、ずっと自分で経過をみている患者さんもかなりいる。その中で、膀胱全摘が必要な患者さんがいた。年齢的にも若く、性機能もあるので、勃起神経温存で、新膀胱作成するプランで手術日程を決めた。患者さんに話もした。しかし、いつの間にか、術者を横取りされていたのだ。
あまりのショックに、ストーマ専門の看護師さんと会ったとき、涙がこぼれてしまった。看護師さんの部屋で一部始終を話すと、さらに涙がこぼれた。彼女も「道徳的に許されないこと」と言ってくれた。でも、決めたのは私より上級医師。
「もっと強くならなきゃ。」と言われるけれど、私は十分強く戦ってきたつもり。どこまで強くならなきゃいけないのか。
スウェーデンで最も大きな病院であるカロリンスカ大学病院。名門がゆえに、そこで働く医師は鼻持ちがならない人が多いと聞く。それは、日本でも同じか。殊に、有名大学病院には、権威が大好きで、鼻持ちならない人間が多いのは事実。カロリンスカの中でも、最も環境が悪いと悪名高いのが、泌尿器科。今回のことに限らず、厭な思いをした経験は数限りなく。それは私が移民という理由からではなく、移民でない医師でも、辞職を考えている人は複数いるほど。心ある人は、「かわいそうに!日本からこんな遠くのはての国にやってきて、たかが900万人のスウェーデン語を学んで、、、。こんなに優秀で、頑張っているのに、この職場に行き着いてしまったのは、何て不幸なんだ。」と私に言います。
看護師さんは、「でもね、先生が患者さんに慕われているのは、私が知っている。先生をやめさせる訳にはいかない。私も助けるから。」と、私を抱きしめてくれました。
泥棒医師とどうやって話をつけようか。どうして悪くない私がこんなに傷付かなきゃいけないの。
これからどうするかはわかりません。モンスターの巣窟のようなこの職場で、もう少し頑張るか。大好きな人達も複数います。
ロボットの習得のためには魅力的な職場ですが、実力さえあれば、複数の職場を渡り歩いて帰ってくることは十分に可能。私にもできると思います。
外科医として生きるって、本当に大変なこと。アカデミックの病院で生き延びるって、本当にストレス。でも、戦う相手がある、衝突する事案があるということは、実力があるからこそ土俵に乗れるのですから、スウェーデンで働く日本人として、もう少し胸を張って頑張りたい、、、と意思表明をしながら、その次の瞬間にくじけている私です。
そんなに強くなれないよー。ぐっすん。
今日はとにかく、久々にやけ酒するかな、、。うーん、その元気もなし。








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