日本で医師として働いていたときもそうだったが、海外で医師として働くようになって、時にふれ「情けは人のためならず」ということを感じることがある。
仕事柄、また、母国を離れているという環境もあって、仕事以外で医療相談を受けることが結構ある。また、留学相談のようなものを受けることもある。私は基本的に、そういった相談に対しては、出来るだけのことをしてきたし、これからもそのつもりである。しかし、相談案件が増えるに従って、気分が悪くなる機会も増えてきた。相談にのるのは、私の善意によるものであり、従って、相談に対する対価を求めるようなことはしない。しかし、善意に対して礼を欠く人が、かなりいる。メールでのやり取りであれば、相談者が最後のメールを書くのが常識であると私は考えるが、それが常識ではない人が沢山いる。医療相談であれば、相談後にそれなりの報告があってしかるべきだと思うが、全く音沙汰の無い人もいる。それどころか、顔見知りとなったにも関わらず、街で会っても挨拶をしない人もいる。相談後に会うことがあっても、お礼の言葉を言えない人がいる。インタビューを求められることもあるが、日本からやってきた場合、通常は簡単な手土産などを用意している人が殆どだが、それがないどころか(私は決して手土産が欲しい訳ではない)、帰国してからのお礼のメール、報告のメール一つ来ない場合もある。
スウェーデンでは、日本のように医師に謝礼を払うという習慣がない。それでも、感謝の意を表現したいという患者さんは沢山いて、そういう場合、チョコレートであったり、ワインであったり、花束であったり、あるいは、手紙であったりと、ちょっとしたことで気持ちを示してくれることが多い。それは医師として、とても嬉しいものである。従って、私自身、誰かのお世話になる場合は、負担に感じられない程度の手土産を用意することにしている。相手が日本人であれば、なおさらである。しかし、同じ日本人でも、同じような感覚を持っている訳ではなく、お世話をしてもそれっきりというような人に出会うと、今後、善意の運動を継続してゆくかどうか自信が無くなることがある。
ストックホルムには、私も役員を務めている、ストックホルム日本人会という日本人を主体とした団体があるが、それ以外に、シルバー会という、主に高齢者を対象とした団体もある。以前、依頼されて、排尿に関する症状について講演をしたことがあったが(つわりで苦しいときでした、、、。)、その会員の方から、医療相談を受けることがあった。海外で病気になるというのは、非常に心細いもの。特に、(患者さんにとって世界一優しい医療システムを持つ日本からくると)、コストを重視するスウェーデンの医療システムは厳しく、不満を持つ日本人は多い。言語の壁も決して低くはない。彼女の場合も、通常通り、メールでの相談から始まったのだが、日本からのお土産を届けにわざわざ自宅までお越し頂いた。
お茶、ふりかけ、お手製の天かす、のり、炊きたての貝柱ご飯などなど、そしてぬか漬け!
頂いたときには、もっと青々していたきゅうり。こちらではなかなかお目にかからない小振りな上品なきゅうり。
こちらのなすは水っぽくなってしまい、ぬか漬けには向かないのだとか。この他、春キャベツもあり、どれも絶品。
涙がにじみそうになるほど懐かしい日本の味。小さい頃、母も毎日、ぬか漬けを漬けていたなあ。酸っぱくなったら、細かく刻んで鰹節を混ぜたり、、、。まさに母の味です。Rさん、ありがとうございました。
礼儀の無い人もおれど、こんな方もいらっしゃる。そして、こんな日本の味は、「情けは人のためならず」と五臓六腑にしみわたってくる。
だから、やはり、もう少し、善意の活動は続けようかな、という気にさせてくれる。
因に、「ぼく」と「わたし」は、きゅうりのぬか漬けが殊の外お気に入りのようで、「もっと、もっと」とパクパク食べてくれました。








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