手術室には、こんな紙が置いてあって、朝、欠勤者を確認します。「sjuk=病気」であるのか、「VAB=病児の看護」であるのかを書く欄があり、VABの場合は、病児の名前を記載します。VABは「vård av sjukt barn」の略であり、これから転じて、「vabba」という動詞まであります。2013年からVABの申請は簡単になり、欠勤前までに、VABのために欠勤することを、インターネットやSMSで申請します。その後、VABの期間終了後、この期間に対する経済的給付を申請すれば良いのです。12歳未満の子供に対しては、一週間以内のVABに関しては、医師の診断書なしに給付が受けられます。
オリンピックで金メダルを取るなどということもそんなものの一つでしょうが、研究者にとっては、例えば、「ノーベル賞を取る」ことなどが挙げられます。ノーベル賞を受賞するためには、「人類に貢献する可能性のある、秀逸な独自の発見」をしなければなりません。そして、もしそんな発見をすれば、NatureやScienceといったトップジャーナルに論文が掲載されます。研究者としては、これらトップジャーナルに掲載される論文を書くことは、まさに「憧れ」なのです。ここ10年ほどで、基礎研究におけるテクニックは飛躍的に伸びたため、一つの仮説を証明するのに、多くのテクニックを用いて同じ結果を導き出すことが要求されるようになりました。更に、以前では、掲載図表の数に限りのあるトップジャーナルでは、「Data not shown」と記載し、図表を載せないまま論文がアクセプトされることが通常でしたが、現在はオンラインで、全てのデータを提示しなければならないようになっています。従って、10年、20年前に比べると、トップジャーナルに論文が掲載されることは格段に難しくなっているという印象です。臨床医、疫学者にとってのトップジャーナルは、The England Journal of Medicineや、The Lancetなどですが、これらにおいては、優れた疫学調査やタイムリーなトピックスが取り上げられるため、特に、テクニック的に難しくなったということはありません。研究者にとって、疫学調査を専門とすることが気楽なのは、ネガティブな結果でも論文になるという点です。多くの臨床医が行う臨床研究もこれに似たところがあります。かくいう私は、研究を始めて以来、ネガティブデータは論文にはならない分野で研究してきたため、何年間も論文が出なかったということは経験済みです。スウェーデンに移住してからは、研究者として生きてゆくのは難しいことから、臨床医としての地位を確立することをメインにしてきたため、研究に割くことのできる時間は殆どありませんでした。しかし、移住する前のポスドク時代のデータで、長らく埃を被ったままだったものを、最近論文にすることができました。当時は「鳥肌が立つ」ほどの発見で、本来ならば、トップジャーナルを目指すことのできるものでしたが、結局、その研究を継続することができませんでした。そこで、インパクトファクターにはこだわらず、とにかく世に送り出すことだけを望んでいたので、それはそれで嬉しいものでした。
ところでタイトルの、「Never give up」ですが、最近、友人の一人の論文が、Natureにacceptされたのですが、それが実にすさまじい闘いだったのです。彼が最初の論文を書き上げたのが、3年ほど前。まず、Natureに送りました。Editorial kickにはならず、レビューに回りましたが(トップジャーナルでは、レビューに回るだけでも凄いのです)、rejectされました。レビューアーからのコメントがあったため、追加実験を行って全てのコメントに答えた上で再投稿した。しかし、結果はやはりreject。そこで、彼はScienceに投稿しました。Scienceでもレビューに回りましたがreject。これだけでも凄すぎるのに、これからが彼の凄いところでした。Scieneで得たコメントで指摘された点を改善し、なんと再びNatureへ投稿。再びレビューに回るも、reject。再実験を重ねた上、レビューアーのコメントに答えて、Editorへ抗議。その後、結局、acceptされたのです。NatureやScienceにacceptされるような仕事は、少なくとも、2、3年がかりのプロジェクト。知見は新しくなければならないため、誰かに先を越されてしまえば、その論文は日の目を見ることもなく、研究者の2、3年はその苦労が報われることなく空に消えます。中には、数ヶ月でデータが揃うような研究もあるようですが(例えば、人間を被験者とするような、はやりの脳科学研究の一部など)、少なくとも、ラボのベンチに座って、所謂、「試験管を振る」ような研究に関しては、トップジャーナルにacceptされるのは至難の業なのです。
インタビューは、聞き手がスウェーデンの伝統的な料理、gubbröra(グッブローラ)を作るところから始まります。「gubbröra」って何?というJamieの問いに対して、「gubb(e)」は「old man」、つまり「mashed old man」のことと説明されます。赤玉ねぎ、ゆで卵、ゆでたじゃがいも、アンチョビ、シル、チャイブをみじん切りにして料理用クリーム、マヨネーズなどと混ぜます。röraと名の付く料理は他にもあって、マッシュするというよりは、混ぜるという意味があります。
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