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友人のコンサート

いつものように疲労困憊の金曜日ですが、友人のコンサートに招待されていたので、行って参りました。

「Niclas Frisk’s Chinatown Acoustic Deli」
場所はVasastanのBryggarsalenでした。

観客はをワインやビールを飲みながら開演を待ちます。

夏にも彼の野外コンサートに行きましたが、今回は屋内で、しかも、エレキギターではなく、アコーステイックギターだけ。同じくギターのHelenと、キーボードのアレックスの3人での舞台です。

Niclasのギターは天才的。決して狂うことのないリズムと音程。

彼のソロアルバムであるChinatownからだけでなく、Atomic Swing時代の曲までカバー。しっとりと聴けました。

 

アンコールの2曲は、A CampでNiclasが作曲しNina Perssonが歌った、「Love has left the room」と、Atomic Swingの最初のヒット曲、「Stone me into the groove」。手に入れたばかりのiPhoneで撮影してみました。ファイルが大きいので、ロードするのに時間がかかります。そのうちにサイズを小さくいたします。

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泌尿器科癌手術の醍醐味

転科までして入局した母校の泌尿器科学教室で、私は初めての女性泌尿器科専門医でした。病棟にあった当直室では同僚男性医師と雑魚寝もしました。泌尿器科といったら、男性が受診するイメージが強く、医師も男性がほとんどで、私が専門医となった頃は日本全国で泌尿器科の女性専門医は200人程度だったと記憶しています。

もともと、癌治療に携わりたかった私。泌尿器科を志したのは父の病気がきっかけですが、女性には適しているとは言えない科だったので、耳鼻科以外には産婦人科に興味がありました。婦人科癌と泌尿器科癌は解剖学的に近いのですが、手術では大きな違いがあります。それは、婦人科癌は基本的に切除するだけだということ。泌尿器科癌では、癌を切除するだけでなく、その後に機能再建術を伴うものが多い。例えば、膀胱癌における膀胱全摘では、尿路の再建。古典な回腸導管や、蓄尿が可能で本来の尿道から排尿できる新膀胱造設などはまさに機能再建の醍醐味といえます。前立腺全摘出では、外尿道括約筋を温存することは勿論のこと、症例によっては勃起神経を温存し、勃起機能が保たれるようにする、、、、。癌が早期で発見されることが多くなった現在、癌の根治だけでなく、術後の機能を保つことは、患者さんの高いQOLのために重要です。泌尿器科の癌手術に比べると、婦人科癌の手術においては、術後の機能をあまり考える必要がありません。子宮にしても卵巣にしても、切除したら再建することはないからです。

婦人科癌の手術で、尿管や膀胱を損傷したような場合、患者さんは婦人科より泌尿器科受診がメインになることがあります。癌は治癒したけれども、尿管狭窄が残ったとか、尿管膣瘻や膀胱膣瘻を形成したなどということになると、婦人科がもはや患者さんの面倒をみることはありません。これらが原因で尿路感染症から敗血症になり、泌尿器科が病床を提供しなければならないような場合、かなり消化不良の気持ちになることがあります。

最近手術した患者さんも他科の合併症が原因でした。腹部大動脈瘤の手術で尿管を損傷。術後に腹腔内に尿が漏れて、再手術となりましたが、人工血管を使った手術でしたので、即時の尿管修復を断念し尿管を結紮して終了。その後、待機手術で尿管再建を行いましたが、損傷した尿管が長く、膀胱を用いて尿管を延長する手術になりました。これをボアリ法と呼びます。

膀胱を開けて、弁状に膀胱壁を切開したら、その弁を頭側に翻転し、尿管を膀胱壁に逆流防止となるように粘膜下を通して縫合します。膀胱の弁を筒状に縫合し膀胱を閉じます。吻合部にテンションがかからないように、膀胱を吊り上げて腸腰筋に固定する、psoas hitchを追加するのが通常です。

この手術では、尿管の不足分を延長すること、そして、膀胱から尿管へ尿が逆流しないこと、という機能を手術によって持たせることが目標です。この手術をしなければ、患者さんは一生、腎臓に直接管を入れたまますごす(腎瘻)ことになりますし、手術が成功しなければ、腎盂腎炎などの合併症に苦しむことになります。

今日、外来に2人の女性患者さんがきました。二人とも膀胱癌で、私が膀胱全摘をしましたが、ストーマも非常に美しく、体調は手術前よりずっと良くなったということで、とても喜んでいて、ハグしてもらいました。そのうちの一人が、「本当はこの腕に抱えきれないほどの花束を持ってきたいくらいなんだけれど、私の喜びと感謝の気持ちをわかってもらえるかしら。先生に手術してもらって幸運だった。」と言ってくれました。多くの手術をすれば、必ずうまくいかない患者さんも出てくるのですが、スウェーデンで働き始めてから今まで、幸い大きな合併症に悩んだことはありません。

今日会った初めての患者さん。外科で手術をして、ありとあらゆる合併症に苦しんでいます。泌尿器科的には、両側尿管狭窄で両側腎瘻、骨盤内膿瘍治療のためのドレーンによると思われる膀胱壁損傷による瘻孔が問題。この人の機能再建のプラン、かなり大変です。これも、「醍醐味」といえるのでしょうか、、、。

香りの記憶

物心が付いたときには既に眼鏡のお世話になっていた私には、目覚めたときに周囲がはっきりと見えた記憶が全くないほどの「ど」近眼です。視覚が弱点である私の嗅覚はなぜか非常に敏感。かすかなタバコの臭い、薬品やガスの臭い、香水、、、。喘息持ちでもある私は、これらに刺激されて発作が起こることも稀ではありません。最近では、基礎化粧品も極力無臭のものを選ぶようにしていますし、香水に至っては全く使いません。欧米では、所謂、腋臭を持つ率が高いようで、それを隠すために香水を使っている人もいますが、そんな人が通りかかっただけで咳が出ます。病院では、香りや花粉アレルギーの患者さんを考慮して、お見舞いの花束を持ち込むことは禁止されていますが、香水禁止令を望んでいる人も少なくありません。私が以前、買い集めた香水瓶も、戸棚の中で眠ったままになっています。

 

様々な感覚の記憶が、特定の感情を呼び起こすことはよくあることですが、嗅覚が敏感である私には、いくつかの香りの記憶があります。そのうちの一つは、「太陽の香り」です。子供の頃、綿で出来た布団で寝ていましたが、毎週末、天気が良ければ、母が布団を干してくれていました。その夜、布団にもぐったときの香りは特別で、それを「太陽の香り」と理解していました。同じく、太陽光の下に乾かされたタオル。プールで泳ぐのが好きだった小学生の頃、プールでかじかんだ私の体に母がバスタオルを掛けてくれるときのタオルの暖かさと太陽の香りといったら、、、。それらの香りは、何とも言えず優しくて暖かくて、、、まさに、「母の愛」を感じていました。今でも、帰国して実家の布団に入るとき、帰国にあわせて布団を干してくれる、「母の愛の香り」を楽しんでいます。母の香りはその他にも、母の得意料理の香りがいくつかあります。私が子供の頃、貧しいながらも精一杯工夫して作ってくれた料理はとても美味しかった(もう長い間、食べていませんが、今度帰国したら手料理をお願いしてみようかしら、、、。)。

 

これらの香りは、私の海馬、大脳皮質を直撃し、強い感情を呼び起こします。切なくなります。私にとって、「香りの記憶」というのは、非常に強いインパクトがあるようです。

 

遠距離恋愛で別れてしまった学生時代の彼は体育会テニス部の後輩。彼は結構なお洒落さんでしたが、彼の定番の香りがありました。それはオーデコロンだったため、普段はそれほど感じないのですが、お互いに部活動が終わってシャワーを浴びたあとのデートでは、香りを強く感じました。男性がつけるオーデコロンの香りを嗅ぐというのは、私にとって初めての経験で、その嫌味のない爽やかさに大きな魅力を感じ、胸がキュンとなったものでした。

 

その香りがこちら。200年以上の歴史を持つ、ミューレンス社の香り。フランス革命の最中、フランス軍がケルンに進駐します。その際に、ケルンの建物に番号をつけましたが、ミューレンス社の番号が4711だったことから命名されたのだそうです。その香水は、「ケルンの水」と呼ばれましたが、フランス語では「オーデコロン」。これが、オーデコロンの由来なのだとか。オレンジなどの柑橘類、ローズマリー、ラベンダーなどが配合されていて、女性でもつけられそうな香りです。

彼に別離を告げられたあと、10年ほどその恋愛を引きずることになったのですが、その間は4711の香りを嗅ぐと、彼との思い出が蘇り、心の古傷が痛みました。香りの記憶というものは、これほど強烈であるのかと驚きました。

長期記憶は海馬によって大脳皮質に送られるようですが、感情を司る扁桃体と海馬との間にコミュニケーションがあるのだそうです(図はネットからの借り物です)。私の場合、嗅覚の記憶が扁桃体を介して強い感情を惹起するのだと解釈すると非常に納得できます。

 

先日、友人とこんな話をしたら、彼女の場合は、昔、失恋したときに聴いていた、「ドリカムの曲」は、今でも悲しくなるので聴けないということを話してくれました。良くわかります。私の場合は、ユーミンかな。それでも、聴覚より嗅覚の惹起する感情の方が秒単位で起こる早いもので、私にとっては衝撃が大きいように思います。

 

数年前、戸棚の中で眠っていた4711を、久しぶりに嗅ぐ機会がありました。

もはや、懐かしさだけで、心が痛むことはありませんでした。何だか少し切なくて、でも嬉しかった。だから、今、こうやって昔の恋の話を表現できるのだと思います。本当はもう少し書いてみたいのだけれど、また別の機会に、、、。

最近の出勤時の風景

毎朝、7時半からミーテイングがあるため、遅くとも10分前くらいには職場へ到着するようにしています。

7時前には家を出ますが、最近は滅多にお日様にお目に掛からない中、6時半頃の日の出直前の写真を。

 

アパートの東の窓からは、ストックホルム市内の空が良く見えます。

 

右端に美しいシルエットを見せているのが、ストックホルム市庁舎。

窓から市庁舎が見えるゲストルーム兼仕事部屋は、私のお気に入りですが、最近、物置と化しています、、、。

おうちごはんで充電

書きたいことは沢山あるのですが、気力、体力、時間が足りずに記事が書けません。

既に、気温は零度近辺のストックホルムです。サマータイムが終わって、出勤時間の空は少し明るくなったのも束の間、真っ暗な中出勤する日も近いと思われます。

こんな暗くて気が滅入りそうなスウェーデンの週末には、おいしいものを食べて元気を出します。

前菜には、帆立のソテーを。12年もののバルサミコ酢と、上質のエキストラバージンオイルであっさりと。新鮮な素材があれば、こんなにシンプルな料理でも最高に美味しい。帆立3つで15クローネ也。たまの贅沢。

メインには、チキンのソテー、ローズマリーとマンゴー風味。セントペテルスブルグのお気に入りのビストロで食べたお料理を思い出しながら。レシピはないまま適当に料理しましたが、かなり美味しかったです。リピート確実。

カルミネさんのレシピだったと思います。ズッキーニの温製サラダ、オレガノ風味。

ワインは冷えたリスリング。

 

さあ、今週も頑張ろう!

人生におけるmentor、研修医時代

人生の中で、「この人についてゆきたい」と思えるようなmentorに出会いたいものだと思ってきましたが、残念ながらその願いは叶えられていません。複数の友人に聞いてみても、mentorに出会った人はほんのわずかです。そんな思いがあるからか、偉大な功績を残した人をみると、その人にはmentorがいたのか、また、本人自身が優れたmentorであるのかどうかということに興味が沸きます。成功するためにはmentorが必要かどうかは別として、要所要所での鍵となる人との「出会い」というものは、重要であると思っています。同時に、成功した人が良きmentorであるかどうかは、必ずしもそうではないと。

 

mentorについてはまたおいおい述べることとして、私が研修医だった頃のことを少し。

現在の新研修医制度というものではなく、医学部卒業と同時に医局に属する人が多かった時代です。

現在、泌尿器科を専門としている私ですが、最初は実は耳鼻科に入局しました。父が腎臓癌で生死の間をさまよったことを経験してから、泌尿器科を専攻したいと思っていました。しかし、泌尿器科の研修は、外科で研修医を2年、その後、大学でレジデントを1年、6年目にチーフレジデントを1年というメニューなのですが、大学での研修は、人数が少ないこともあって、連日の当直など、最も厳しい科の一つとされていました。泌尿器科の先生方はとても気さくで、「私の腕の中に飛び込んでおいで!」などと、当時の助教授にも言ってもらったのですが、決断することができませんでした。当時、結婚を考えていた1年下の彼とも相談し、結局、女性により向いていると考えられた耳鼻科に入局することになったのです。

 

耳鼻科に入局したはいいけれど、何の因果か、耳鼻科と泌尿器科の病棟は6階の南と北で隣同士。泌尿器科の先生方に出会うたびに、胸が痛みました。当時の耳鼻科の教授は耳科学が専門で、真珠腫性中耳炎やら、聴神経腫瘍やらの手術が主流。私はどちらかというと、非主流派である、上額洞癌、甲状腺癌、耳下腺癌といった頭頚部癌の方が好きでした。毎日、額帯鏡をつけての診察は、頭痛がするし、切れ毛になるし、、、。もしかすると、自分が耳鼻科にあわないという理由を無意識のうちに探していたのかもしれません。

 

しかし、一度決めたものは頑張らないと。石の上にも、、、。と思っていたときに、地方病院への出張の話が出ました。フレッシュマンの同級生の中から一人、半年交代で地方病院での研修。研修先は東京から新幹線で約1時間のところにある病院で、耳鼻科の医長は、手術の天才との呼び声が高い先生でした。大学病院でも見放された患者さんをどんどん手術しているという話も聞きました。耳鼻科が嫌いになりそうになっていた私は、渡りに船と、その研修に立候補しました。

 

当時、大学病院のそばにワンルームのアパートを借りていましたが、バブルの終わりの時期で、ワンルームなのに家賃は12万円くらい。月給が2万5千円でしたから、家賃は親に援助してもらっていました。半年の出張なので、アパートはそのまま。出張先では、病院内に寮があり、お給料は9万円ほどでした。厭々ながら、その当時の彼には出張を応援してもらいましたが、当時はインターネットも携帯電話もない時代で、夜中に病院の公衆電話から電話をかけたりしながらの遠距離恋愛の行く末は、想像に難くなく、結婚を考えた彼とのおつきあいは4年弱ほどで終止符を打つことになりました。

 

いつものように脱線しましたが、手術の天才であるボス。噂に違わず、素晴らしい外科医でした。メスやメッツェンの先に目がついているのではないかと思うほどでした。手術件数があまりに多いので、麻酔は自己麻酔ということも珍しくなく、ときには、オールナイトで2件並列ということもありました。朝の9時まで手術をして、9時から外来ということもありました。しかし、辛いとは思わなかった。私は天才外科医である彼に傾倒しました。彼に手術を一から叩き込まれたことは、現在の私の外科医としての基盤となっています。

 

半年の研修が終わって大学に帰らなければなりませんでしたが、私は次の研修でも彼の指導を受けたいと思いました。東京の北に位置したその病院から、東京の南の病院へと転勤した彼のあとを追って、私は新幹線で南へ向かいました。ボーイフレンドとも別れ、単身、知らぬ土地へ向かったそのときの心細さといったら。しかし、私が師匠として追いかけた彼は、外科医としては天才でも、指導者・人間としては、失格だということを、知ることになったのです。

 

メスが切れるだけでは、mentorの資格を満たすことはできません。指導者は複数の部下に対して公平でなければいけないはずなのに、特定の人間を贔屓した。そのことで、当時の同僚が複数、彼に不満を持って、耳鼻科をやめました。外科医、殊に、traineeの時代には、手術症例の取り合いが生じることは珍しいことではありません。日本でも、日常茶飯事でしたし、現在、スウェーデンの職場でもST(専修医)の間で軋轢があります。無駄な争いを生まないようにするには、指導者が公平でなければならないのです。

 

彼に対する不満はそれだけではありませんでした。メスの切れる外科医の中には、難しい手術に挑むことを登山のように考えている人間がいます。より難度の高い手術を手がけるために、手術適応のないと考えられる進行癌も手術する。また、手術が終了すると、患者さんへの興味を失う、、、。高度の進行癌を手術する訳ですから、当然手術は非常に侵襲の大きいものとなるのに、術後の全身管理をきちんとしない。もともと、耳鼻科医というのは、眼科医や整形外科医などと同じで、手術はするけれど、全身管理があまりできない人が多いのです。「ナトリウムが低いからナトリウムを点滴で入れましょう。」というようなやり方に、私は嫌気がさしてしまいました。

 

mentorかもしれないと思った人間に対する失望と、耳鼻科に対する失望とが、私を再び泌尿器科へ向かわせる原動力となったのです。そんな中で、同じ病院の泌尿器科の先生と接触するようになりました。時間のあるとき手術の助手をしたり、内視鏡の手術をさせてもらったりしているうちに、やはり泌尿器科こそ私の天職だと思うようになりました。同じ病院の泌尿器科は私の学閥とは違う学閥で、医長には、「先生が男だったらうちの大学にひっぱるんだけど、女性だから母校へ行った方が良いと思うよ。」と言われて、母校の泌尿器科の教授へ電話し面談、3年目から泌尿器科へ転科することがとんとん拍子に決まり、以来、泌尿器科医としての人生を歩んでいるという訳です。

 

キャリアの中では、未だにmentorと呼べる人には出会ったことはなく、何人も出会った指導者は、どちらかというと、反面教師といった感じが強く、残念です。しかし、人生においてのmentorには出会えたかなと思っているので、それで幸せだと言えます。

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幸せのミルクレープ

今年から医学生となった姪っ子と、東京滞在中にデート。

彼女お勧めの「ミルクレープ」。

言葉にならない美味しさ!

どうしてこういうケーキが作れないのか、スウェーデン。

野暮ったいスウェーデンのパンケーキとは、天と地との差。

日本円で支払うときには、「高いな」と思ったけれど、スウェーデンクローネに換算してみると、スウェーデンでお茶をするのとあまり変わらない。

スウェーデン人はみんな一度は、日本に送り込まれると良いと思う。スウェーデンの食事やサービスの質の低さを知るべきだろう。(とはいえ、ロシアからスウェーデンに帰ってきたときは、スウェーデンのサービスが素晴らしく感じられて感動した私。)

 

それにしても、幸せのミルクレープ、また食べたいなー。

酸塩基平衡の授業

医学部の教員の義務は、診療、研究、教育。

日本でもスウェーデンでも同じですが、医学部には、他学部にはない「診療」という業務があるだけに、より重労働と言えます。また未だに、「診療」しかしない医者は大学病院にいなくて良いという考えが根強くあり、従って、教授選考では、論文数が勝負になります。

初めから脱線してしまいましたが、私も一応医学部の教員の一人ですので、診療だけでなく、研究や教育に参加しなければなりません。これまでに、スウェーデン語での講義もしてきましたので、たいていのことは何とかなると思っていますが、今回は、「酸塩基平衡」の講義に参加することになりました。

1cmくらいの厚さの教科書が送られてきて、私も勉強です。正直、科学系の科目の中で、最も嫌いだったのが、「化学」。「pHとは、、、、」から始まる内容を見ると、気が重くなります。

人間の正常血液のpHは約7.4(7,35-7,45)ですが、pHを正常に保つための、酸やアルカリを緩衝するシステムが体内に存在します。これに関しては、周術期や、急性期・慢性期の重症患者さんなどの全身管理では、基礎となる知識で、我々臨床医は毎日使っていますが、基礎の基礎となると、もはや忘れてしまっていることも多いのです。

 

下の表で、ventrikelsekret(胃酸)が0,9と強酸であることは知っていましたが、炭酸の抜けたコカコーラが2,3とやはりかなり強い酸であることは、すっかり忘れてました。実に歯科衛生上、悪そうです。これを見て、炭酸飲料を飲むのはできるだけやめようと思いました。因みに私の大好きな生ビールは4,3だそうです。また、赤ワインは3,8、ポカリスエットが3,5というのも驚きです。

尿が4,5-8とありますが、膀胱炎の予防にクランベリージュースが良いとか、レモン汁を飲むとかいいます。これらは強い酸性食品です。多くの細菌は酸性を嫌うために、酸性食品を摂取して尿を酸性化すると、尿路感染症の予防になるのです。

体内では毎日かなりの量の酸が産生されますが、それを排出するシステムが、HCO3-とH-が腎臓から尿中へ、あるいは、CO2が肺から呼気中へ排泄されるものです。従って、腎不全や呼吸不全の場合には、それぞれ排出されるべき酸が排泄されないために、体液は酸性に傾きます。それをアシドーシスと呼び、その原因別に、代謝性と呼吸性に分類されるのです。

実習の部では、Siggaard-Andersensのノモグラムを使って、学生さんに計算をさせたりします。

まだ基礎科目だけしか学んでいない医学生さんですから、私は病棟から小道具を持参して、臨床で実際にどのように使うのかを説明。

これは、患者さんの動脈(主に、大腿動脈か橈骨動脈)から採血するための注射キット。私が研修医だった頃は、自分で普通の注射器に凝固防止のヘパリンを入れて用意したものですが、今では専用のキットがあります。これを見せながら説明し、実際の患者さんのデータを見せると、学生さんの目の色が変わるのがわかります。

因みに、このデータは高齢患者さんで、重症肺炎と全身状態悪化により死が近い方のもの。pHは7,25と低く、酸素が低く二酸化炭素が高いのがわかります。

しかし、カロリンスカの学生さん、流石に良く勉強してます。特に、年齢がやや高い学生さんは、社会経験をしてから入学してきてるためか、非常にモチベーションが高く、感心します。

授業を担当するのは大変ですが、自分の勉強にもなりますね。

ボトックス治療

ボトックスといえば、一般的には、美容外科領域での「しわとり」目的が有名ですが、泌尿器科領域でも、ボトックスを使います。

泌尿器科での適応は、「過活動膀胱(OAB: overactive bladder)」。

意思とは無関係に、膀胱の排尿筋が収縮しまう。強い尿意が突然起こり、時には、失禁ともなる病態。この病気には、通常、抗ムスカリン薬(副交感神経遮断薬)が使われますが、口渇などの副作用や、閉塞隅角緑内障などの禁忌があり、使えないことも多々あります。

OABは、神経学的疾患に起因するものが良く知られています。

例えば、多発性硬化症(MS: multiple sclerosis)や脊髄損傷です。OABのある患者さんでは、膀胱が過緊張状態となり、膀胱容量が減少し、尿失禁が起こります。日本では見たことがありませんでしたが、脊髄損傷の患者さん、特に、Th5-6以上の損傷の場合には、Autonomic dysreflexia (AD)が起こる可能性を常に考えなければなりません。

末梢からの刺激、殊に、尿意や便意などの刺激が、交感神経系の過度の反射を起こし、高血圧また、高血圧に起因する病態を引き起こすもの。脳出血や心筋梗塞などの原因にもなります。これを予防するために、Th5-6以上の脊髄損傷の患者さんでは、OABの治療をして、膀胱容量を増やし、膀胱内圧を下げることが必要となります。この治療には、ボトックスが大きな力を発揮します。

ボトックスは、A型ボツリヌス毒素で、神経筋接合部などにおけるアセチルコリンの放出を妨げることにより、筋肉を弛緩させます。スウェーデンでは何年も前から、OABに対する治療薬として使われてきましたし、FDAも今年、脊髄損傷やMSに伴うOABに対する治療薬として認可しましたが、日本では未だに認められていません。本当に日本というのは、新薬が導入されるのに時間がかかる国で、困ったものです。

 

このボトックス、膀胱鏡を使って、膀胱粘膜に注入しますが、ADの可能性のある患者さんに対しては外来治療ではなく、全身麻酔による治療を行います。以前は、300単位を30mlの生理食塩水に溶解し、1mlずつ30箇所に注入していましたが、200単位でも効果に差がないということで、最近は200単位に減量して、コストを下げる努力をしています。このような患者さんは、6ヶ月毎に入院してボトックス治療を行います。

 

尿失禁というのは、健康な人が想像する以上に、患者さんの生活の質を下げるものです。写真のボトックス100単位で、1954,5クローネします。200単位で約4000クローネ。日本円にして5万円近くも。知人の美容外科医に聞いた話ですが、(しわのばしの治療では)日本人よりも欧米人の方がより多くのボトックスを必要とするのだそうです。やはり、遺伝子の違いでしょうか。美容外科では10単位ほどの注入で2万円くらいのお値段らしいですが、、、。やはり美容外科は儲けますね、、、。ちなみにスウェーデンでは200単位を注入するこの治療、全身麻酔で、「無料」です。

 

2011年日米医学医療交流セミナー

10月1日、慶應義塾大学三田キャンパスにて、日米医学医療交流セミナーが開かれました(開催要項はこちら)。

これから海外留学を考えている医学部の学生さんや、若手の医師を対象にしたセミナーです。

全国から150人ほどが参加してくれました。医師の留学といえば、ほとんどはアメリカですが、今回はヨーロッパの話題も。ヨーロッパで医師として長期的に働いている日本人はあまりおらず、したがって、ヨーロッパの医療現場へアプローチするためのノウハウも殆どないためか、発表後には随分多くの人から質問を受けました。

スウェーデン社会が、日本と比べいかに女性に優しいかということを宣伝したこともあって、女子学生さんも沢山質問しにきてくれました。中には、私のブログでセミナーの情報を得て、私の話を聞くために九州から夜行バスで駆けつけてきてくれた女子学生さんもいて、何だかとても感動してしまいました。有難う!

同級生が幹事をしていたこともあって、演者には数名、同級生がいました。私以外、皆、教授という、立派なメンバーです。その中には、体育会硬式庭球部で、共に主将を務めた同級生や、同じクラブの大先輩で、京大の教授になられている先生にもお目にかかりました。テニス部OB同士で記念撮影!両手に花?ならぬ教授!

こんな私でも、後進の人たちに可能性を示してあげられるのだと感じたことが、とても嬉しい経験でした。

このセミナーの内容は、次の本の一部として毎年改訂されて出版されているようです。

ご興味のおありの方は是非。

また、質問がある方は、是非このブログ経由でも、コメントを頂くか、プロフィール欄のメールアドレスにご連絡を。


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