所用を兼ねての旅なので、完全な「命の洗濯」という訳にはいきませんが、出かけてまいります。
全くの未知の文化との出会いにわくわくします。
Зимний дворецの入口にて。
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昨日は朝から一日、手術日。 専修医の先生の前立ちなどだったので、非常に疲れます。自分で手術する方がずっと楽だけれど、これも仕事。 複数の手術も順調に進み、今日はいい感じだと思っていたら、外科からの助っ人のお願いの電話が入りました。腹部疾患を扱っていると、こういうことはたまにあります。日瑞変わらず頻度として多いのは、「産婦人科が尿管を損傷した。」という連絡ですが、外科でも、「直腸癌が膀胱に浸潤して一部膀胱を切除したい。」や、「尿管も一部切除するので、膀胱へ新吻合したい。」といった感じ。逆に、泌尿器科からも、「膀胱癌が直腸に浸潤しているので、骨盤内臓器全摘にしたい。」とか、「腸管損傷があるので、人工肛門をお願いしたい。」とか、「腸骨血管の合併切除をしたいので、人工血管を。」といった、合同手術を依頼することもあります。 今回は、直腸癌の膀胱浸潤で、結局、膀胱も前立腺も摘出することになり、泌尿器科に回腸導管作成の依頼でした。膀胱癌チームは私以外不在で、私が呼ばれました。正直、スウェーデンに来て他科の先生と手術をするのは初めてで、いやはや緊張しました。顔見知りの看護師さんだと、「あれちょうだい。」といえば欲しいものが出てきたりしますが、外科の看護師さん相手ではそうはいきません。しかも、知らない人達とスウェーデン語でコミュニケーションを取りながら手術もする、という技はスウェーデンで勤務して3年になっても、まだまだ難しいといわざるをえません。 緊張して手術室に入ってゆくと、助手の先生が、「会ったことあるよね。」と。良く見れば、最近学位審査を受けた私の大学院生のオポーネントではないですか。知っている先生がいることで少し緊張はほぐれましたが、それでも沢山のアドレナリンとステロイドが体内に出ているのを感じます。 日本と違って、スウェーデンでは、「医療の経済効率」を上げるために、手術時間は短くしなければなりません。それも、ストレスの一つとなります。まずは、導管とする回腸を確保、回腸の縫合。このような定型の手技こそは、高速で一気に仕上げなければなりません。左の尿管はかなり短い。左右の尿管を吻合するのに、少し張力がかかるのが気になりましたが、少し尿管を剥離してから吻合、小腸を切断し導管とし、口側に尿管を吻合。この吻合は、ペースが落ちても慎重に。どうしても余分な張力がかかり、生理食塩水でリークテストをするとやはり少し漏れるため、そこを補強。出来上がりはまずまずでしたが、あとから考えると、尿管を別々に吻合した方が良かったかなーなどと、くよくよ考えます。 スウェーデンでの仕事のスタイルとして、意思決定を非常に素早くしなければならないことがあります。そして、一度決めたら大きな間違いがないかぎり突き進む。例えば、スウェーデンでは経費や時間節約のために、外部や内部からの、依頼表のない他科への相談というものが、頻繁に行われます。その場合、少ない情報と限られた会話の中で、意思決定をしなければならないことになります。これまで修行して、大分慣れてきましたが、結構なストレスになります。 外科からの初依頼手術は何とかうまくいきました。しかし、このタイプの「機能」が重要となる手術では、術後の評価で成功の可否が決まります。回腸導管においては、尿が漏れずに、吻合部の狭窄がなく、腎機能が保たれ、感染のないこと。これらが明らかとなるのは、もう少しあとのことです。そして、合併症の責任は、この手の中に。外科医というのは、このような十字架をいくつも背負って生きていかなければなりません。
手術のあと、お世話になっている鍼の先生に鍼を打ってもらって帰宅後あえなく沈没。 スウェーデンの集合住宅では、建物毎にその集合住宅の管理を行う組合が存在します。組合の役員には、住人のうち希望者が就任します。そして、その中でボスが選任されるのですが、そのボスが私のお隣さん。熟年離婚後、熟年結婚して、現在定年したばかりで、熱々のシニアライフを楽しんでいるカップルです。旦那様は弁護士でもあり、スウェーデンの凶悪犯を収容する刑務所のボスや、ハーグ、ボスニアなどで勤務してきた、「泣く子も黙りそう」な大男。奥様は、やはり、刑務所や、地方自治体でボスを歴任してきて、お二人の出会いは、「刑務所」での会議だったとか。 彼がこのアパートのボスに就任してから、非常に物事が円滑に進むようになってきました。彼のお人柄、そして、知識、経験によるものでしょう。集合住宅ですから、いろいろなトラブルが起こることがあります。車庫でドアに傷がついたとか、音がうるさいとか、、、。最近では、最上階のアパートの住人が、建て増しの申請をストックホルム市にして認可されたため、組合に申請してきましたが、他の住民に影響がある「建て増し」だったため、却下。このアパートの全ての住宅に、それぞれ洗濯機と乾燥機が装備されているのですが、それでも、建物には共用の洗濯室があります。そして、電気代を節約したい人は、そこを使っていますが、洗濯室のコストが馬鹿にならないため、使用量を課すという案が長年出ていたらしいのですが、勿論、反対する人間がいるため決議できないでいました。そこへ、「法」のスペシャリストがボスとして登場し、近日中に使用量を課すということでまとまるようです。 スウェーデンでは、集合住宅の隣人といえども、挨拶程度の付き合いしかしない場合が多いのですが、このカップルとは、ときどき食事を一緒にしたり、彼らが旅行に出るときには(1年に1ヶ月ほどの船旅に行くのです!何とも優雅でうらやましい!)、鍵を預かって植物に水をあげたりしています。 また、同じ階段の住人に、やはり組合の役員をやっているゲイのカップルがいます。彼らが今度日本へ行くというので、一度食事をしたのですが、「ゲイとは良い男友達になれる」ということが理解できたような気がします。高学歴、勿論、良い職に付いていて、しかも、ナイスガイ!余談ですが、軽くシャンパンを開けてから、レストランへ繰り出したのですが、そのときに、玄関ホールに、真紅の巨大なバラの花束があり(長さ1メートル)、それを褒めたら、たまたま、片方の彼の誕生日が前日で、花束を買い、夕食には何と、「てんぷら」を揚げたとか。 同じアパートの住人同士で仲良くなると、何だか、余計に我が家に帰ってくるとほっこりするような気がしますが、この週末、組合のボスであるお隣さんが、組合のメンバーを招待してパーテイーを。私は役員ではありませんが、ご相伴に預かりました。 ゲストは、到着と同時に「飲み」はじめ、「泣く子も黙る」大男は、台所で忙しく働きます。 テラスには植物がいっぱい! 私のアパートと似たような間取りですが、家具が違うと全く印象が異なります。個人的には赤いソファーが好き。 古いものも素敵。1790年代のもの。また、写真に撮り忘れましたが、大きなMora時計もありました。 素敵なオイルランプと、壁には、ミレスゴーデンの彫刻のレプリカ。 そしてこの時期のパーテイーといったら、「ざりがに」です。 これ以外にも、沢山のお料理がありました。 最初は、ワインやビールですが、ざりがに、ニシンには、スウェーデンのウオッカ(アクアビット)が欠かせません。 今日のアクアビットはこれ!O.P. Andersson!比較的癖がなくて、飲みやすい! アクアビットには、snapsvisa(アクアビットの歌)を持ち回りで歌うのがスウェーデンの習慣。そのうちの有名な一曲 歌っては、アクアビットをすすります。 そして、夜は楽しく更けてゆき、、、。金曜日の晩で飲まず食わずに職場から掛けつけた私は、すっかり酔っ払い。お隣さんということで、帰るのも心配しなくて良いし、、、。
しかし、これが5年ぶりくらいの大失敗となりました。アクアビットは40%のアルコール。通常は小さなグラスで飲むのですが、この日のグラスは大きかった。更に、水が用意されていなくて、誰も水を飲んでいなかった。40%のアルコールなんて、最近、飲んだことがなかったので、すっかり油断。という条件が加わって、良い気分で眠りについたものの、その後2日に渡って二日酔い。折角の週末が台無しでした、、、。深く反省。 大学病院で働いていると、所謂、「ポリクリ(病院実習)」の医学生の指導にも当たることになります。各グループ、5-6人程度でローテーションしてきますが、毎回、女子医学生が多いことに驚かされます。
次の表は、2010年における、カロリンスカ医科大学の各学部における新入学生の男女比です。 「läkar-」が医学部ですが、何と、男子学生は40%強。女性が多い訳です。 カロリンスカにおける学位取得者は次の通り。 学位取得者も、毎年女性優位です。 それでは、女性教授についてはどうでしょうか。 331名の教授のうち、80人が女性。24%にあたります。そして、新任女性教授の数をみると、女性教授を増やそうとする努力がみられます。2010年では、40人の新任教授のうち、15人が女性。
その結果、女性教授の比率は年々増加中。 待遇面でも、女性は男性にひけを取りません。
Professor preklinとは、基礎研究部門の教授。男性の平均月給は58461千クローネに対し、女性は58165千クローネ。Professor klinとは、臨床部門の教授。男性の平均月給は52345千クローネに対して、女性は53875千クローネ。但し、臨床部門の教授の給料は、教授職としての給料で、これに、医師としての給料が上乗せされますので、この額の倍近い給料となっていると思われます。男女比とは関係ありませんが、日本の場合は、臨床部門の教授は、基礎部門の教授のデューティーである「教育、研究」に加えて、「臨床」がデューティーとして上乗せされますが、それでも、同じ給料です。母校の慶應大学の医学部の教授陣は、明らかに他学部の教授より勤務内容や時間が厳しいのに、同じ給料であることに不満を持っている人が多かったので、カロリンスカの臨床教授は恵まれた待遇を受けていると思います。
このように、男性優位の日本に比べると、カロリンスカにおける女性の扱いは天国のようなものです。 カロリンスカにかかわらず、他の分野ではどうでしょうか。次の図は、公的部門(国家公務員、offentig sektor)と私的部門(privat sektor)別の部門長(chef)の分布を示しています。 私的部門では男性が75%と圧倒的優位ですが、公的部門では、国家レベル(Stat)でこそ男性優位であるものの、その他では逆転しています。日本では考えられないことです。 女性の社会進出のためには、女性支援のシステムが必須ですが、最後に、育児休暇取得の男女比を示します。 1974年には、100%、女性が育児休暇を取得していましたが、年々男性の育児休暇取得が増加。2009年には、男性が22%の育児休暇を取得するまでになっています。私の職場では、ちょっとしたベビーブームなのですが、パパとなった男性医師の全てが、20%程度の育児休暇を取っていますし、子供が病気になったときにも病児介護のための欠勤をしています。この表を見る限り、日本はスウェーデンに30年ぐらい遅れていますし、未だに専業主婦が珍しくないことを考えると、これからもスウェーデンに追いつくとはとても思えません。女性も自立するという意識改革が必要なのですが、将来どうなることでしょうか。(追記:この表の解説も不十分で誤解を生みそうなので追記します。スウェーデンでは育児休暇を18ヶ月取得することができます。これは、両親の間で自由に配分することができますが、父親も1ヶ月は最低取ることを奨励するために、父親が育児休暇を取らない場合は、17か月分の手当てしかでないようになっています。この表の数字は、育児休暇をどのように夫婦間で配分したかであり、育児休暇を取得した男性の割合ではありません。育児休暇を取得する男性の割合に関しては手元にありませんが、ほとんどの男性が幾分かの育児休暇を取っているという印象です。育児手当は高所得者であっても上限がありますので、男性が高所得者である場合は、1ヶ月の育児手当の給付がなくても男性が働いた方が経済的には有利であるため、男性が育児休暇を取得しない、ということはあると思います。) 長い夏休み期間を終えて、職場も大分通常勤務に近くなってきました。 夏休み期間は、私は殆ど勤務していましたが、この時期は医師は6-7人くらいしかいません。病棟は約半分に閉鎖し、手術件数や外来も大幅に削減されます。 今週から、病棟のベッド数もほぼ通常通りにもどり、大きな手術が並列で行われるようになりました。 今日は、禁制型膀胱を、非禁制型の回腸導管へ作り変える手術。腹部の手術を何回もしていて、更に、放射線治療もしている患者さんなので、一日がかりの大手術です。怖いもの知らずの専修医くんが、「開腹をやらせてください。」と頼んできました。若い先生の指導も仕事のうちなのですが、正直、やらせたくないときもあります。悩んだ末、やらせることにしましたが、「空」自信だけで実力不足、結局、数分でメスを取り上げることになりました。 予想通り、もの凄い癒着で、いやはや大変な手術でした。約7時間。助手をやってくれた年下の先生も、途中でふらふらしていました。日本と違って、手術中にランチ休憩を入れることもできるし、休憩せずとも、マスク脇からストローで給水することができます。今日は休みなしの給水のみで。 こういう定型外の手術は大変だけれど、結構、楽しいものでもあります。決まった手術だけをしていても、外科医としての実力は伸びる訳ではありません。予想外の状況に対応するためには、定型外の手術を経験することが大切なのです。
長い手術では、手術中は疲労を感じませんが、終わってしばらくすると、どっと疲労が押し寄せます。今日はもう沈没。明日もオペ日だから、早くお休みすることにします。 シェップスホルメン島から王宮を望む。こんな景色の中に座っているだけで、ロマンチックな気分になれます。 この船は宿泊できるようになっているようです。 どこを写真に収めても、絵になります。 この日は、お友達とホテルシェップスホルメンのレストランで夕食だったのですが、そこの写真は取り損ねました。お腹一杯で、街の中心まで歩いてくると、ホモセクシャルの催し物の一環のコンサートをやっていました。 同じアパートに、素敵なゲイのカップルが複数住んでいることもあって、私はホモセクシャルに対して、どちらかというと好感を持っています。 去年までは、ホモセクシャルの人しか入場できなかったようですが、今年は誰でも入れます。入り口で、アルコールを所持していないかどうか、荷物チェックをされます。
日本でも、ホモセクシャルに対する偏見が無くなって、彼らが生き易い世の中になればいいなと思います。 3週間ほど前になりますが、職場の先輩女医さんのお誕生日パーテイーに招かれました。
以前にもお邪魔したことのあるお宅ですが、Östermalmの一等地、人気の屋根裏の大きなアパートをリノベーションして、彼氏と住んでいます。キッチンとリビングが一部屋になっている間取りで、バルコニーもあり、リビングには暖炉もあります。バスルームには、サウナも。何ともゴージャス。
その日は、40人近くが招かれました。到着と同時に、シャンパンを。数十本のシャンパンが用意されていて、彼氏の息子とその彼女がシャンパンを継ぎ足しに回ってくるので、どのくらい飲んだのか見当がつきません。シャンパンに酔い易い私は、すぐほろ酔い気分に。
こちらは、彼女のパパ。パパも泌尿器科医で、カロリンスカの教授だった人です。 今回はベストドレッサーを選ぶという企画もあり、隣の彼女は魔女風の小道具で登場。 今日の主役と彼氏。いつもラブラブです。 いくつかスピーチもありましたが、彼女の学位の指導者だった名誉教授。ドレスの色に合わせた髪飾りがチャーミング。 私も好きな、デンマークデザインのダイニングテーブル、スーパーエリプス。 日付が変わる前に、ベストドレッサーの発表。 日本人の浴衣はとてもエキゾチックに見えるようで、賞を頂きました。商品は、なんとも可愛いワニの貯金箱。
楽しい夏の一夜はあっという間に更けてゆきました。 泌尿器科の患者さんではないが、ある癌が腹腔内に再発し、尿管を圧迫したため水腎症を来たし、その腎臓を救うために、腎瘻(腎臓へ直接カテーテルを挿入する)を入れた患者さんがいた。その患者さんが、最近、腹腔内大出血を起こし、血管造影による塞栓術を行った。
腹腔内の巨大血腫によりカテーテルが偏移したのか、カテーテル内の尿の流れが悪くなり、CTでは、カテーテルの先が腎盂外にあるということだった。そんな場合、カテーテルを操作して正しい位置(腎盂内)に戻すことは難しいと最初の判断がなされ、膀胱からWJカテーテル(留置用の尿管ステント)を挿入しようということになり、私にご指名となったのだが、大量出血後の血小板減少に対応するために輸血などをしている間に、腎瘻から尿が流れるようになった。そのため、腎瘻造影をして、可能であれば腎瘻の位置をガイドワイヤーを使って腎盂へ戻す試みをする価値があるのではないかと考え、放射線科へ依頼した。その結果を待って、修正が不可能であれば、緊急にステントを入れる予定にしていた。
放射線依頼表は、コンピューター上で作成、送付されるが、緊急事態のため、勤務時間外であったが、私に直接結果を知らせてもらえるように、個人の携帯番号を記入しておいた。電話がかかってきたので出ると、 「あなたねー、何で、こんな検査を依頼するの!?」 と怒りに震えた声が聞こえた。 あまりのことにすぐに返答できずにいると、 「CTでカテーテルは腎盂の外にあるのは確実だってわかってるでしょ!それ以上、何をしたい訳!?」 少し正気を取り戻した私は、 「カテーテルから尿が出ているので、造影をしてもらって、可能であればカテーテルの位置を修正して欲しい。」 と伝えたところ、 「CTで腎盂の外にあるんだから、無駄でしょ!」 と怒鳴られたが、食い下がり、 「しかし、CTでも、カテーテルが完全に腎臓の外にあるとは言えないと思う。」 と言ったら、さらに相手の怒りが増幅したらしく、 「私はあなたより、ずっと経験があるんだ!外だといったら外だ!」 というので、 「とにかく、造影をしてください。」 と言ったら、 「血腫に造影剤を注入しろというのか!」 「尿が出ているということは、腎盂が写ってくるかもしれないから。」 「造影剤を注入して、腎臓の外だということがわかれば満足か!?」 「満足です!」 というと、彼は、何も言わずにがちゃんと電話を切った。
「Fy Fan!!! Vilken otrevlig läkare!!!」(Shit!!! 何て厭な医者!) と同僚にこぼした。 同僚は私に、överläkare(指導医)のポジションを得たかどうか訪ねた。残念ながら、私はまだ専門医である。 スウェーデンでは、良く、ヒエラルキーがないと言われるが、これは全くの嘘である。 表面上は、いかにも、ヒエラルキーを嫌っているように振舞っているが、実際は、はっきりとしたヒエラルキーがある。医師の中では、 AT läkare(研修医、厳密には、医師免許を持っていない) ST läkare(専修医) Specialistläkare(専門医) Biträdande överläkare(Böl、代替指導医) Överläkare(Öl、指導医) という階級があり、胸に着けるバッチにも、名前とともに、はっきりタイトルを表示する。 ATは日本で言う研修医に相当し、18ヶ月の研修を行う。STは5年程度の研修であるが、その後審査により、専門医となる。日本と同様であるが、専門医となったとしても、実際は独り立ちが出来るレベルではない。Bölになるには、カロリンスカでは、最低専門医として3年は勤務しなければならない。Ölになるためには、学位がなくてはいけない。
この階級の他に、アカデミックな階級として、 Docent(准教授) Professor(教授) というタイトルがある。臨床科では、教授の枠が1つか2つくらいしかないので、臨床医としては、「Docent、Öl」というタイトルが得られれば、大成功といったところか。
ヒエラルキーが強力だと言われる日本では、タイトルに関わらず、「医師」と表示する医療機関が多いと思うが、スウェーデンでははっきりとタイトルを表示する。このことからも、スウェーデンにヒエラルキーがないというのは嘘であるということが明らかである。実際、患者さんはこのバッチを確認する人が多いし、他科の医師や看護師も、このバッチをみて、タイトルによって態度を変えることは、日常茶飯事である。私も、ただの医師から専門医になったときには、対応の違いに驚いたものだった。(名前も外見も移民で、女性で、スウェーデン語もnativeではない訳だから、患者さんが不安になるのは理解できる、、、。)
脱線が長くなったが、同僚が私にÖl(Böl)のタイトルがあるかどうか訪ねたのは、こんな背景があるからである。彼は最近Bölになったのだが、それ以降、厭な対応をされることが少なくなったとか。 「でも、スウェーデンではヒエラルキーは汚いものって考えられているでしょ?」 「それはそうなんだけど、ヒエラルキーはあるよ。」
少なくとも、私が知る限り、スウェーデンでは、ヒエラルキーは悪だと、表面上言いながら、実際は明らかなヒエラルキーが存在し、都合の良いところでは、ヒエラルキーは無いという。例えば、ヒエラルキーの頂点に立つ人が責任回避をするために「ヒエラルキーは無い」ことを利用するようなことがある。この点は、日本の方がまだましであると思っている。
この日の最悪な経験には、実は続きがある。 その後、私は別件で携帯で通話をしていた。その通話を終えると、一件の留守番メッセージが。 それは、例の医者からだった。 「私は、放射線科のxxです。先ほどの失礼な会話をお許しください。全く必要がなく、無分別でした。患者さんの腎瘻の位置を修正できました。本当にごめんなさい。」 いやはや、驚いた。そして、とても嬉しくなった。まず、患者さんにとっては、侵襲の少ない方法で、腎臓を救うことができて良かった。そして、スウェーデンのヒエラルキーの中で、平の専門医、移民、女性という三重苦の中で、厭な経験もしてきたが、今回のこの医者が、素直に自分の非を認めて、謝罪してくれた、ということで、やはり、「性善説」を信じ続けてゆこうという気持ちにさせてくれた。彼の態度は、ひどいものであったが、非を認めて謝罪するということは、非常に痛みを伴うことであり、決して易しいものではない。それを潔くした彼のことは評価するべきである。彼は、個人の携帯から電話をしてきたため、すぐに、メッセージを送った。 「Tack för ditt meddelande. Jag blev ledsen efter vårt samtal men jag blev jätteglad med ditt meddelande. Dessutom var det jättebra för patienten. Bra jobbat! Tack igen och trevlig kväll!」(メッセージありがとうございます。あの通話で、悲しくなったけれど、あなたのメッセージでとても嬉しくなりました。そして、患者さんにとってはとても良かった。ありがとう、そして、良い晩を。)
最悪の経験だと思ったことが、素敵な結末となって、とても嬉しかった。
7月22日15時26分、ノルウェーの首都オスロの官公庁街で爆弾が爆発しました。 爆弾の重量は500キログラムともみられ、現在までに少なくとも7人が死亡。 与党、労働党のビルも破壊されます。 その後、数時間も経たないうちに、オスロ郊外、数十キロに位置する島、Utöyaで第二の惨劇が始まります。 この島では、与党労働党の青年部のキャンプが行われていました。600人ほどがこのキャンプに参加しており、その多くは、14歳から18歳でした。 警察の制服を着た一人の若者が、子供達を集合させ整列させます。最初に集まってきたのは、30-40人程度。そこで、子供達に向かって射撃を始めたのです。逃げる人達を島中おいかけて射殺し、水際に隠れていた人が多く殺されました。水に飛び込んで逃げようとした人達をも撃ち殺しました。その様子を空から写した写真です。岩の上に銃を持って立っている犯人と、その回りに散乱している被害者の体。 射撃が始まってから、およそ2時間して、警察が到着しました。 32歳のノルウェー人、Anders Behring Breivikが逮捕されました。 負傷者の救助。 水中へ逃げた人の救助。 しかし、島中に散乱する被害者のなきがら。 水中の捜索。 捜索は夜も行われました。 現在までに、少なくとも85人の死亡が確認されています。 無事に家族と再会できた人。 大惨劇から一夜明けた今日、ノルウェーの人々は悲しみに沈んでいます。 国王一家も弔問に。 容疑者は、以前、ノルウェーの右翼党で活動していたことがあります。20代後半に極右翼思想となったと報道されています。17日のTwitterの書き込みで、哲学者、John Stuart Millの言葉、 “One person with a belief is equal to the force of 100,000 who have only interests.” を引用しています。オスロ市内の爆破テロと、銃乱射ともに、同容疑者の犯行だということ。共犯者の可能性もあるようですが、まだ明らかになっていません。 容疑者は、今回の爆破や大量殺人の動機を警察に説明するようですが、国粋主義、反イスラム主義によるものだと推測されています。スウェーデンでもスウェーデン民主党のようなラシスト分子が増殖していることを考えると、移民政策の難しさを改めて感じます。 容疑者は6トンもの化学肥料を購入し、80日かけて爆弾を作成しました。直前の18日の日記には、「準備ができた」ことが記載されているようです。 犯行直前に、フィンランドの政治家に、自分のマニュフェスト1500ページとビデオを送りつけたとのこと。 何の罪もない少年少女の命がこれだけ沢山失われても、死刑のないノルウェーでは、終身刑どころか、21年で出所する可能性があるということです。 古来から、人間は利権だけではなく、人種や思想、宗教の違いで殺し合いをしてきました。 人間とは、何と愚かな動物なのでしょうか。 オバマ大統領が、「暴力は許さない」と言っていましたが、ビンラデン殺害のことを思い出すと、ダブルモラルであり、アイロニカルでした。
今回、事件の始めには、「イスラム過激派」の犯行という情報も流れました。もし、犯人がイスラム過激派であったら、少なくとも、移民、イスラム教徒排除の方向に議論が進んだことでしょう。犯人が生粋のノルウェー人だったことで、多くの人が違う観点から考える機会になった、いえ、そうなることを望んでいます。今はただ、犠牲になった人のご冥福をお祈りするばかりです。
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