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夏の風物詩

夏のストックホルムは、観光客で溢れています。夏休みが通常4-5週間はあるストックホルムっ子は、夏の間、サマーハウスなどで過ごす人が多いので、この季節の街中は観光客の方が多くなります。

 

観光客にも人気なのが、ストックホルム上空を気球で横断するツアー。天気の良い夕方には、風向きによっては私のアパートの上も通ってゆきます。

 

次のWindows Azureの宣伝。

まさに私のアパートの真上を通っていきます。

手を振ったら、気球の皆さんも手を振ってくれました。それほどの至近距離。

Bromma空港から飛び立った飛行機にも、かなり近くて、ちょっと怖い。

風向きにより着地地点を決定して、高度はこうやって火力で調節。

気球操縦者は、地上の車の運転者とペアになっていて、連絡を取り合います。着地点で落ち合い、車にはシャンパンと軽食が用意してあり、着地後に搭乗客に振舞われます。

ストックホルムの夏の風物詩ともいえる気球ですが、もうシーズンも終わりです。さびしいな、、、。

ビクトリア王女、ご懐妊!!!

ブログの更新も、コメントへのお返事も滞っております。この夏は殆ど休みも取らずに働いており、ブログを開く時間もありませんでした。ご無沙汰していると、更に腰が重くなってしまうのですが、今日のこのおめでたいニュースについて、触れない訳にはいきません。

去年の6月にプリンス・ダニエルと結婚式を挙げた、スウェーデンのビクトリア王女。
結婚以来、幾度となく、夕刊紙や女性誌が、「妊娠」のデマを流したことでしょうか。

プリンス・ダニエルは慢性腎不全により、生体腎移植を受けていますし、ビクトリア王女は、以前、拒食症を患ったこともありますので、結婚一周年を過ぎても、ご懐妊のニュースがないのは、不妊症の可能性があるのかと心配もされましたが、今日、とても嬉しいご懐妊のニュース!ビクトリアは7月に34歳の誕生日を迎えています。ビクトリアが国王の第一子として誕生したことで、憲法を改正し、「男女に関わらず、第一子を王位継承者とする」こととなり、初めての女王となるビクトリア。皇太子としての責任だけでなく、次の王位継承者を得なければならないプレッシャーは想像をはるかに超えるものだったに違いありません。

プリンス・ダニエルの、とびきりの笑顔を見たのは初めてのように思います。

ビクトリアの、喜びを表すかのような、華やかなドレス。とても素敵です。

ビクトリア、34歳の誕生日のツーショット。このときには、最初の妊娠反応陽性が出ていたのかも。

 

 

今日のストックホルムは、出勤時13度。快晴。空には秋の雲。

赤ちゃん誕生は来年の3月だそうです。本当に良かった!!!

Grattis Victoria!!!

 

追加です!大ニュースから一夜明けた今日のツーショット。なんとハイヒールのビクトリアです!

日本だと、「ローヒール=妊娠」という感覚がありますが、こちらでは違うようです。

 

 

最悪かつ最高の経験、スウェーデンにおけるヒエラルキー

泌尿器科の患者さんではないが、ある癌が腹腔内に再発し、尿管を圧迫したため水腎症を来たし、その腎臓を救うために、腎瘻(腎臓へ直接カテーテルを挿入する)を入れた患者さんがいた。その患者さんが、最近、腹腔内大出血を起こし、血管造影による塞栓術を行った。

 

腹腔内の巨大血腫によりカテーテルが偏移したのか、カテーテル内の尿の流れが悪くなり、CTでは、カテーテルの先が腎盂外にあるということだった。そんな場合、カテーテルを操作して正しい位置(腎盂内)に戻すことは難しいと最初の判断がなされ、膀胱からWJカテーテル(留置用の尿管ステント)を挿入しようということになり、私にご指名となったのだが、大量出血後の血小板減少に対応するために輸血などをしている間に、腎瘻から尿が流れるようになった。そのため、腎瘻造影をして、可能であれば腎瘻の位置をガイドワイヤーを使って腎盂へ戻す試みをする価値があるのではないかと考え、放射線科へ依頼した。その結果を待って、修正が不可能であれば、緊急にステントを入れる予定にしていた。

 

放射線依頼表は、コンピューター上で作成、送付されるが、緊急事態のため、勤務時間外であったが、私に直接結果を知らせてもらえるように、個人の携帯番号を記入しておいた。電話がかかってきたので出ると、

「あなたねー、何で、こんな検査を依頼するの!?」

と怒りに震えた声が聞こえた。

あまりのことにすぐに返答できずにいると、

「CTでカテーテルは腎盂の外にあるのは確実だってわかってるでしょ!それ以上、何をしたい訳!?」

少し正気を取り戻した私は、

「カテーテルから尿が出ているので、造影をしてもらって、可能であればカテーテルの位置を修正して欲しい。」

と伝えたところ、

「CTで腎盂の外にあるんだから、無駄でしょ!」

と怒鳴られたが、食い下がり、

「しかし、CTでも、カテーテルが完全に腎臓の外にあるとは言えないと思う。」

と言ったら、さらに相手の怒りが増幅したらしく、

「私はあなたより、ずっと経験があるんだ!外だといったら外だ!」

というので、

「とにかく、造影をしてください。」

と言ったら、

「血腫に造影剤を注入しろというのか!」

「尿が出ているということは、腎盂が写ってくるかもしれないから。」

「造影剤を注入して、腎臓の外だということがわかれば満足か!?」

「満足です!」

というと、彼は、何も言わずにがちゃんと電話を切った。

 

「Fy Fan!!! Vilken otrevlig läkare!!!」(Shit!!! 何て厭な医者!)

と同僚にこぼした。

同僚は私に、överläkare(指導医)のポジションを得たかどうか訪ねた。残念ながら、私はまだ専門医である。

スウェーデンでは、良く、ヒエラルキーがないと言われるが、これは全くの嘘である。

表面上は、いかにも、ヒエラルキーを嫌っているように振舞っているが、実際は、はっきりとしたヒエラルキーがある。医師の中では、

AT läkare(研修医、厳密には、医師免許を持っていない)

ST läkare(専修医)

Specialistläkare(専門医)

Biträdande överläkare(Böl、代替指導医)

Överläkare(Öl、指導医)

という階級があり、胸に着けるバッチにも、名前とともに、はっきりタイトルを表示する。

ATは日本で言う研修医に相当し、18ヶ月の研修を行う。STは5年程度の研修であるが、その後審査により、専門医となる。日本と同様であるが、専門医となったとしても、実際は独り立ちが出来るレベルではない。Bölになるには、カロリンスカでは、最低専門医として3年は勤務しなければならない。Ölになるためには、学位がなくてはいけない。

 

この階級の他に、アカデミックな階級として、

Docent(准教授)

Professor(教授)

というタイトルがある。臨床科では、教授の枠が1つか2つくらいしかないので、臨床医としては、「Docent、Öl」というタイトルが得られれば、大成功といったところか。

 

ヒエラルキーが強力だと言われる日本では、タイトルに関わらず、「医師」と表示する医療機関が多いと思うが、スウェーデンでははっきりとタイトルを表示する。このことからも、スウェーデンにヒエラルキーがないというのは嘘であるということが明らかである。実際、患者さんはこのバッチを確認する人が多いし、他科の医師や看護師も、このバッチをみて、タイトルによって態度を変えることは、日常茶飯事である。私も、ただの医師から専門医になったときには、対応の違いに驚いたものだった。(名前も外見も移民で、女性で、スウェーデン語もnativeではない訳だから、患者さんが不安になるのは理解できる、、、。)

 

脱線が長くなったが、同僚が私にÖl(Böl)のタイトルがあるかどうか訪ねたのは、こんな背景があるからである。彼は最近Bölになったのだが、それ以降、厭な対応をされることが少なくなったとか。

「でも、スウェーデンではヒエラルキーは汚いものって考えられているでしょ?」

「それはそうなんだけど、ヒエラルキーはあるよ。」

 

少なくとも、私が知る限り、スウェーデンでは、ヒエラルキーは悪だと、表面上言いながら、実際は明らかなヒエラルキーが存在し、都合の良いところでは、ヒエラルキーは無いという。例えば、ヒエラルキーの頂点に立つ人が責任回避をするために「ヒエラルキーは無い」ことを利用するようなことがある。この点は、日本の方がまだましであると思っている。

 

この日の最悪な経験には、実は続きがある。

その後、私は別件で携帯で通話をしていた。その通話を終えると、一件の留守番メッセージが。

それは、例の医者からだった。

「私は、放射線科のxxです。先ほどの失礼な会話をお許しください。全く必要がなく、無分別でした。患者さんの腎瘻の位置を修正できました。本当にごめんなさい。」

いやはや、驚いた。そして、とても嬉しくなった。まず、患者さんにとっては、侵襲の少ない方法で、腎臓を救うことができて良かった。そして、スウェーデンのヒエラルキーの中で、平の専門医、移民、女性という三重苦の中で、厭な経験もしてきたが、今回のこの医者が、素直に自分の非を認めて、謝罪してくれた、ということで、やはり、「性善説」を信じ続けてゆこうという気持ちにさせてくれた。彼の態度は、ひどいものであったが、非を認めて謝罪するということは、非常に痛みを伴うことであり、決して易しいものではない。それを潔くした彼のことは評価するべきである。彼は、個人の携帯から電話をしてきたため、すぐに、メッセージを送った。

「Tack för ditt meddelande. Jag blev ledsen efter vårt samtal men jag blev jätteglad med ditt meddelande. Dessutom var det jättebra för patienten. Bra jobbat! Tack igen och trevlig kväll!」(メッセージありがとうございます。あの通話で、悲しくなったけれど、あなたのメッセージでとても嬉しくなりました。そして、患者さんにとってはとても良かった。ありがとう、そして、良い晩を。)

 

最悪の経験だと思ったことが、素敵な結末となって、とても嬉しかった。

 

スウェーデン、銅メダル!

先日の日本ースウェーデン戦の際には、日本応援団の私は、スポーツパブへ繰り出す勇気はありませんでした。ブロンズマッチの今日は、スウェーデン応援団としてスポーツパブへ。

 

最初の一点は、スウェーデンのエースLotta。フランスのDFは全てチームメートで、やりにくそうでしたが、オフサイドぎりぎりのパスからのシュート。喜びのジャンプの際に靴が脱げて、その靴にキス。

この先制点の際に、フランスのGKが負傷して交替。

 

高級住宅街に近いこのパブでは、ゲストもおとなしめの応援。1-0で前半を終了したところへ現れたのが、何とフランスのユニフォームを着た5人ほどのグループ。それに刺激されたのか、スウェーデンを応援するゲストのテンションも上向きへ。ところが、次の一点はフランスへ。盛り上がるフランス応援団。

 

後半も終盤戦になったところで、日本戦で一点を叩きだしたFWの14番が、レッドカード。映像を見ると、先にフランスのDFが蹴ったので、蹴り返したところを取られてしまったようです。


マイナス1で苦しい戦いとなったスウェーデンですが、82分で、今日のヒロイン、MFのMarieの渾身のシュート!今までに得点した経験はなかったとか。

この貴重な勝ち越し点を守って、2-1でスウェーデンの勝利。

おめでとう!スウェーデン!

さあ、明日は決勝戦!!!

職場でのmidsommarlunch(夏至祭ランチ)

スウェーデンにおける夏至祭のお休みは、6月第4週の週末。今年は、実際の夏至の1週間後でした。

夏至祭のお休みまでは、病院も通常通りですが、夏至祭のお休み以降は、診療業務が大幅に縮小されます。

私の病棟でも、半分が閉鎖されることになっています。医師も看護師も全ての人が、最低4週間の休暇を取るからです。

そのお休みの前の週、通常勤務しているSolna院から出ているバスで、Huddinge院へ向かいました。私は膀胱癌を中心として診療をしていますが、表在性膀胱癌の治療には、弱毒結核菌BCGを定期的に膀胱へ注入する治療を行っており、該当患者さんはかなり多数います。これまでは、Solna院、Huddinge院、それぞれが別々に治療をしていましたが、その治療にあたる看護師さんが定年退職することもあって、今後は、Huddinge院で一括して行うことになりました。新しい診療形態となる前に、BCGの医師側責任者となっている私は、Huddingeでの会議に参加しなければならなかったのです。

 

バスに揺られること、およそ30分でHuddingeに到着。それから数時間の会議に出席し、そのあと、病棟での夏至祭のランチに招かれました。

 

Huddinge院では、Solna院よりも、国際色豊かです。看護師や医師が、それぞれ料理を持ち寄ります。

お決まりのニシンなどに加えて、中東のお料理や、ハンガリーのグラッシュなど、食べきれない量のお料理があり、全く知らない人たちの間に入って、ぎこちないながらも、楽しく美味しいランチを楽しみました。

National Day

少し前ですが、6月6日はスウェーデンのナショナルデーでした。

スキャンダル続きのスウェーデン王室ですが、ナショナルデーには、ニューヨークへ避難(!?)しているMadeleine王女も一時帰国することもあり、王室一家が参加するSkansenでの夕方からの催し物には、多くの人が参加することが予想されました。

この日は日曜日で、次の日は早朝から勤務のため、Skansenは諦めて、市庁舎に行ってきました。

市庁舎では、今年、新しくスウェーデン国籍を取得した3523人のうち、およそ600人が参加しての、「スウェーデン国籍取得のお祝いの式典」が行われ、ビクトリア皇太子夫妻が参加することになっていました。

市庁舎の入り口には、報道陣も待ち構えています。

様々な人種の人達が集まってきます。入り口で、国旗を受け取ります。

長い列。

かっこいい女性警官による警備。

そんな中、ビクトリアとダニエルが到着。車は、ボルボでもサーブでもない、アウデイでした。

肩から胸元にドレープのかかった、美しいロイヤルブルーのドレスが素敵。指先は、フレンチネール!

報道陣は反対側だったので、背を向けがちのご夫妻に、私の隣にいた人が、「こっち向いて!」のリクエスト。

 

スキャンダルのない皇太子ご夫妻の頑張りどき、、、だったのですが、このあとプリンスダニエルにもスキャンダルが、、。この話題は別の機会にでも。

しかし、とても素敵な笑顔のお二人でしたよ。

帰宅してニュースや新聞をチェックしたら、報道陣の向かいにいた私はしっかりニュースにも新聞にもちゃかり映っておりました。とほほ。

同僚女医さんの学位取得パーテイー

学位審査にまつわる硬い話は終わりにして、いきなり、パーテイーの話題。

 

その日、私は病棟担当で、重症患者さんが沢山いた関係で、学位審査自体は出席できませんでしたが、夜のパーテイーには行ってきました。

Östermalmの貸しパーテイースペースでケータリングをしてのパーテイー。

nonMDのパーテイーは何回も経験があるのですが、MDのパーテイーは初めてです。MDのパーテイーの方がフォーマルだと聞いていたので、楽しみにしていました。

会場では、主役の彼女と彼女の旦那さんがシャンパンを用意してお出迎え。

職場では上下とも白衣なので、スーツ姿の同僚をみることはありません。若いけれどロボットの名手のA先生と、同室の女医さんD先生。私の身長は168cmなのですが、低いヒールの靴だったこともあって、10cmヒールを履いた170cmのD先生が超のっぽに見えます。A先生も素敵でドキドキものです。

 

シャンパンで歓談後、別室に移って、着席。食事は中東料理のビュッフェでした。

本人や、彼女のご主人を始め、各方面からのご挨拶と、その度に乾杯。


ちょっと素敵なバツ一の教授は、なんといっても手術の名手。彼のプレゼントは、7-8冊の本でした。一冊一冊取り出して、それにまつわる逸話を披露。なかなか良かったです。

 

科長は女性。

学位論文が、表在性膀胱癌の治療に用いる、結核ワクチン、BCGについてだったため、プレゼントは、「BCG」と。

「Banana(バナナ)」、「Chokolad(チョコレート)」、「Godis(スウェーデンのお菓子)」。

 

お決まりの、ビデオ上映もなされました。

彼女が研究を始めたのが2000年。

 

彼女は何と3児の母。

経済的にも、子育ても、全て親の手を借りないスウェーデンでは、彼女のように、子育てをしながら、臨床や研究をするには、パートナーの協力が不可欠です。同僚の男性医師たちも、子供が生まれるたびに、最低数ヶ月は育児休暇を取っています。当たり前ですよね、共働きだし、親なんだから。日本では、到底、無理ですね。

ビデオは、スウェーデンのSnowstormのSommarnatt(夏の夜)という歌を、研究室で彼女がエレキギターを弾きながら歌うというところで、終わりました。この歌、癖になりそうです。

日本では泌尿器科の宴会といえば、「あぶない出し物」が必ずあります。「泌尿器科」たる所以でもあります。スウェーデンは、もっとお上品だと思ったら、、、。

お上品そうな男性が登場したのですが、

ちょっと、あやしい雰囲気に。

あっという間に、こんな事態に。

まさにタオル一丁。

その後、「おちんちん」の人形を使って出し物は続いたのですが、私の撮影はここで終了。

 

食事が済むと、会場はダンス会場へと。

職場ではみられないような同僚の違う顔もみられたりして、楽しいひとときでした。

L先生、おめでとう!

日本の国際的競争力、レベルの低い「医学博士」

先日、職場の専修医である女医さんの、学位審査がありました。

スウェーデンにきてから、所謂、MDの学位審査というものを見たことがありませんでしたが、同じカロリンスカ内でも、MDの学位審査と、nonMDの学位審査では、いろいろと違うのだという印象を受けました。日本でも、MDとnonMDでは違いがあるし、そもそも、大学毎に違うという感覚を持っています。

 

彼女の学位審査の話をする前に、このあたりのことを少し書いてみたいと思います。

 

カロリンスカ大学Solna(所謂、本院のようなもの)では、研究所キャンパスと病院キャンパスは、Solnavägenという道で2つに分かれています。基本的には、医学部の学部教育と基礎研究は、研究所キャンパスがメインで行われてます。MDが学位を目指す際には、病院キャンパスで研究を臨床と平行してすることが多いようです。勿論、例外もありますが、MDとnonMDの学位論文の内容を比較すると、どうしても、MDの方が若干レベルが低いという印象です。MDにとっては臨床も同時に行わなければならず、その条件を考えれば当然で、これは、日本でも同じ傾向があると思います。

日本で問題なのは、大学毎で出される学位の質に差があることだと思っています。私が主に経験があるのは、MDが学位を取得する場合です。所定の授業単位の取得などについては、明らかな規定があるとしても、学位取得で最も重要である論文に関する基準は、施設によって天と地の差があります。私の母校では、私が在職当時は、学位論文の基準設定は、担当科の教授に任されていました。論文のレベルは、以前にも書いたことがありますが、インパクト・ファクターによって決まりますが、中には、インパクト・ファクターのない低いレベルの学術雑誌もあります。例えば、「日本○○科学会誌」のような雑誌は、そもそも日本語で書かれたnon-internationalな雑誌ですが、私が知る限りでも、母校の学位論文にも、残念ながらそのようなものが含まれているのが事実です。とある三流私立医大の場合は、講師以上のスタッフが、「雇われて」、学位論文を代筆することもあると聞いて、びっくり仰天したこともあります。つまり、学位を「買う」訳ですから。それほどひどくなくとも、「○○医科大学雑誌」というような、大学が出している学術雑誌で、勿論日本語、学外のレビューもないような雑誌に発表された論文でも、学位を出している大学は多くあります。「博士号、PhD」という学位は、学位の中で最高のものです。日本が海外に対する競争力を保つためには、「博士号、PhD」の価値を落としてはいけないと思います。開業したり、マスコミに売るために、「医学博士」があると箔が付くとか、現在の「医学博士」は国際的には殆ど価値のないものになってしまっていると感じます。

ヨーロッパでは、このような問題に既にEUレベルで取り組んでいます。1999年6月にボローニャ宣言(Bologna Declaration)が採択され、当時EU加入国であった15カ国を大きく上回る29カ国(オーストリア、 ベルギー、ブルガリア、チェコ共和国、 デンマーク、エストニア、フィンランド、 フランス、 ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、 アイスランド、 アイルランド、イタリア、 ラトヴィア、 リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、 オランダ、 ノルウェー、 ポーランド、 ポルトガル、 ルーマニア、 スロヴァキア共和国、スロヴェニア、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス)が署名しました。

ボローニャ宣言の目的は、

1)ヨーロッパにおける雇用可能性と移動性を本質的に高め、ヨーロッパの高等教育の競争力を強化するために、 2010年までの10年間でまとまったヨーロッパの高等教育圏を作る。

2)理解しやすく比較可能な学位の枠組みを作る。

3)大学のレベルで、 基本的に学部と大学院という二段階式のシステム(two cycle system) を採用する。

4)ヨーロッパ単位互換制度(European Credit Transfer System) を促進し、教育の一部を他国で受けられるようにするために単位制度を確立することで学生の移動を促進する。

5)比較可能な基準や方法を開発することによって、 ヨーロッパという次元で質の保証を行なう。

6)ヨーロッパ圏の中で学生と教員の自由な移動を向上させることにより、「ヨーロッパの高等教育の競争力」をつける。

 

ボローニャ宣言を採択したスウェーデンでは当然、PhDの基準は、ボローニャ宣言に従ったものとなっています。

カロリンスカでの学位審査の条件は、簡単には、

1)4年間、2)規定の授業単位の取得、3)ハーフタイムセミナー

を満たした上、学位論文は、Internationalで、peer reviewのある学術誌へ発表され、筆頭著者である論文が最低1枚、という条件です。実際には、筆頭著者である論文が1枚では審査を通過しないのが常で(CellやNature、Scienceなどの超一流雑誌であれば例外)、共同著者である論文、投稿前の論文などが必要で、それら複数の論文をまとめて、一冊の学位論文を書き上げるのが一般的です。

学位審査の準備が整ったら、最後は審査になりますが、当該研究の分野に通じる研究者を、opponentとして一人招き、審査が行われます。基礎研究の場合、学生が優秀であればあるほど、優秀なopponentを選ぶ傾向があります。カロリンスカ内の研究者の場合、opponentをしても謝金が出ないため、駆け出しの研究者で、opponentとしての経験が必要、という人以外は、あまりoponentを引き受けたがらないのが事実。また、イギリスと異なり、この学位審査で不合格とすることは、ほとんどないため、優秀でない学生であればあるほど、そのレベルにあった質問をしてくれるopponentを選ばなければなりません。学位論文の論文リストをみても、学生が優秀であるかどうか判断できますが、論文のレベルは運、不運も関係します。しかし、opponentが著名な海外の研究者であれば、その学生が優秀であるということが、明らかにわかるのです。

 

審査はたいてい、opponentが当該分野のサマリーしたあと、学生が45分程度の発表をし、その後2時間程度の質疑応答があります。opponentとの質疑応答が終わると、審査委員会のメンバーによる質疑応答があり、場合により、聴衆からの質問を受け付けて終了。初めて、学位審査を見学した際には、日本との違いに驚いたものでした。

 

ヨーロッパでは、複数の国が協力して、国際的競争力を高めるために、互換性のあり質の高い高等教育をめざしています。対する、日本では、同じ国の中でも、基準がばらばらです。これでは、日本の学位の国際的評価を落とすことになってしまいます。

 

日本の研究者が海外へ出ていく場合、日本のローカルルールがネックとなる場合があります。その一つが、特に、医学部、殊に臨床科から出される学術論文における、著者の扱いです。

筆頭著者を決めるのは、日本でも海外でも差はないと思いますが、日本のローカルルールは、第2著者と最終著者です。最終著者には、たいてい、研究には関わっていない、教授がなります。実際に、最終著者にあたる指導者は、第2著者となることが多い。しかし、海外で戦う場合、第2著者がいくつあっても、あまり強みにはなりません。教授がフェアーである場合はそれでも、corresponding authorをもらえれば、この研究は自分のアイデアであるということを示すことができますが、そういう場合は幸運な方です。

 

いずれにしても、日本の、殊にMDにおける学位や研究に関するシステムは、国際的競争力を考える上で、欠陥の多いシステムだと思いますが、何とかならないものでしょうか。学位論文が日本語では、海外の学生を呼んでくることもできません。

 

ボローニャ宣言ですが、イギリスは署名をしているにもかかわらず、ケンブリッジ大学とオックスフォード大学は、ボローニャ宣言に従うつもりはないそうです。もともと、超名門は、それで戦えるという自信があるのでしょう。

 

以上、ぼやきでしたが、次回、同僚女医さんの学位審査について書きたいと思います。

同性愛カップルも立派な家族です 

IKEAの最新店舗に使われた広告が論議を醸しています。

ゲイのカップルが手をつないで、IKEAで買い物をするという設定のポスター。

Siamo aperti a tutte le famiglie. by IKEA in Italy

(We are open to all families.)

同性愛カップルでも結婚が認められているスウェーデンでは、全く珍しくもない光景ですが、カソリックの伝統が強い、シシリア島のCataniaにオープンしたIKEAの広告ということで、かなり挑戦的にも感じられます。

 

‘With us you will feel at home. What we want to do is make life easier for everyone, every family, every couple, whoever they are.’

という意味が込められているのだとか。

 

IKEAはこれまでも、ゲイのカップルを題材とした広告を複数、使ってきたのだそう。

1994年がその初めでしたが、その広告を使ったのは、ほんの数週間。同性愛に反対する人達による爆弾による脅迫や、購買ボイコットに遭い、あえなく中断することに。

広告は、中年男性のカップルが、ダイニングテーブルを買うという設定。

その中の台詞。

”a leaf means commitment.”

そして最後に、

‘We’ve got another leaf waiting for when we REALLY start getting along’

つまり、子供を持とうということの比喩となる発言。

2007年には、「Living Room」というキャンペーンをIKEAは行います。リビングルームにいる、様々な家族を表現したものですが、最後に、

”Why shouldn’t sofas come in flavours, just like families?”

と締めて、異人種同士のゲイのカップルと、彼らの娘を映す。

 

スウェーデンにやってきて、すっかり、同性愛カップルに対する理解が深まり、偏見には反感を持つほどになった私としては、「IKEA、やるな!」と、応援のエールを送りたいくらいです。

蛇足ですが、私の好きなスウェーデンの歌手、Peter Jöbackもゲイで、昨年の夏、結婚式を挙げました。

 

同性愛かどうかが問題ではなく、本人が幸せであることが何よりも大事だと思います。

屈折した人種差別

スウェーデンで医師として働き始めてから、3年近くが経ちました。最初は、やはり言葉のハンデイがありましたし(勿論、今でも多少ありますが)、見た目も明らかに移民ですから、患者さんに信頼してもらえるかどうか、とても心配でした。また、医師の同僚や、看護師さんを含め、パラメデイカルに信頼されるかどうかも。

 

外来には、原則として予約の患者さんしかきません。あらかじめ、受診の案内の手紙が、患者さんへ届けられるのですが、その手紙には、予約の日時とともに、担当医の名前が記されています。非日本人にとっては、日本人の名前は、違和感があるにちがいありません。中には、「日本人だと思った」と言って、日本語で挨拶してくれる患者さんもいます。日本人は会釈をすることを知っていて、会釈をしてくれる患者さんもいます。幸い、今まで、移民医師であることで患者さんに嫌がられた経験はありません。むしろ、わざわざ指名してくれる患者さんもいるくらいで、そんなスウェーデン社会に、私は深い敬意と、感謝の念を持っています。

因みに、我が診療科の医師のうち、30%近くは移民医師です。日本人である私以外は、イスラム圏からの移民で、勿論、名前もそれとわかる名前です。

専門医受診には、診療所からの紹介状が必要です。毎日届く紹介状に目を通し、専門医受診が必要なものを選別し、受診が必要な症例には優先順位をつけて、外来予約をしますが、それは上級医の担当となっています。私もときどき紹介状の処理をしますが、その中にこんなものがありました。

 

16歳男性の肉眼的血尿。以前に、同じ内容で診療所から紹介状が届き、その紹介状を受けた上級医は、外来での膀胱鏡を予定しました。受診案内を受け取った患者さんの母親が、外来へ怒りの電話をかけてきました。その際の、看護師記録には、、、。

Hon avbokar läkarebesök p g a att hon inte kan acepterar att sonen ska träffa och bli undersökt av läkare med utlänskt namm.

(彼女(患者の母親)は、外来予約をキャンセルした。何故なら、彼女は息子が外国人の名前の医師を受診し、検査を受けることは、受け入れられないからである。)

彼の担当医は、膀胱癌チームのチーフである上級医。彼はイラン出身。優秀な外科医です。専修医が担当する外来もある中、本来ならば幸運であるはずなのですが、担当医の名前がイスラム圏の名前であるというだけで、拒否。しかも、患者さん本人ではなく、母親が。カロリンスカには、欧米からの医師も勤務していますが、欧米の名前を外国人と判別するのは難しいはず。つまり、中東やアジア、あるいは、東欧やロシアの名前にアレルギーがあるのか、、。

そこで、患者さんの名前をみて、再び驚きました。患者さんの名前自体、イスラム圏の名前なのです。母親も中東出身の移民。

この母親からの怒りの電話に対して、スウェーデン人である看護師さんが、どのような対応をしたか、、、。

看護記録は続きます。

Föklarar att alla våra läkare är kompetenta oberoende av nationalitet och ursprung, och att vi tar avstånd från sådant resonemang.

当診療科の医師は、国籍や出身に関係なく、コンピテンスがあること、そして、そのような議論は受け入れられないと説明。

そして、母親の要求には応えることはできないため、紹介状は、紹介元へ送り返すと。

 

かなり、感動しました。移民が移民医師を差別することも驚きでしたが、移民の身で十分な医療をスウェーデンで受けさせてもらっているにも関わらず、このような態度を取るこの母親に、怒りさえ覚えました。しかし、それよりも何よりも、スウェーデン人が、「差別を許さない」という断固とした態度で臨んでいることが、心の琴線に触れました。

 

最終的には、上級医が、紹介元の医師への返事を書くのですが、その返事も迫力のあるものでした。

「患者の母親が、外国人医師受診を拒否したため、紹介状は差し戻します。この患者さんに対し、今後、当診療科の予約を取ることはありません。当院以外の当該診療科で、外国出身の医師がいないところへ紹介状を送ってください。」

 

ときどき、患者さんと担当医の相性が悪く、患者さんから担当医変更の希望が出ることがあります。そのような場合は、患者さんの希望が通ります。今回のような、人種差別を理由とした担当医変更希望に、断固とした態度を示すスウェーデンの社会には脱帽です。そして、とても嬉しく思います。

 

専門医受診の際には、居住地の住所によって、管轄病院が決められているため、その病院を受診できなければ、全くのプライベートのクリニックを受診しなければなりません。ただ、半官半民のような病院もあって、この患者さんの新しい紹介状はその病院に送られたようなのですが、その病院から、事情を知らないまま、再度、我々へ紹介状が転送されてきたのを、私が処理することになったのです。私が自分で診察しようかとも思いましたが(どんな人間なのか、興味あり)、結局、転送し返すことにしました。

 

スウェーデン人の同僚や友人と忌憚の無い議論をしてみましたが、外国人医師に対して差別の気持ちを持ったことはない、ということでした。

人種差別の旗振りともいわれる、スウェーデン民主党を嫌う人間が多いことが示すように、スウェーデンは移民に鷹揚で優しい社会だというのが、これまでのスウェーデンでの経験を通して言えることです。勿論、細かいことを言えば、差別がないとはいいませんが、日本での男性優位の差別社会の方が、むしろ激しいと感じます。

 

あっぱれ、スウェーデン。ありがとう、スウェーデン。

 

 

 


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