カロリンスカには、医学部だけではなくBiomedicineという学科がある。
今日は、この学科の一年生に、基礎実験に用いるテクニックの一つである、UV(紫外線)とinfrared(赤外線)を用いたspectrophotometer(分光測色法)で物質を同定する方法を指導する教官として配属。器械の操作自体は、蛋白濃度やDNA濃度を計測したりする目的で、以前私も使っていたので、難しいことではない。しかし、「何を計測しているのか」という原理になると、突然遠い昔に学んだ、化学や物理の世界になって、しかもそれがスウェーデン語で、「励起光により分子の低いエネルギー状態の電子軌道から高いエネルギー状態になる際に吸収される光、、、。」などということを説明する訳で、、、。
ピペットの使い方を知らない学生さんも多く、まさに、実験における「はじめの一歩」。2-3人が1グループとなって、合計150人。グループ毎に3つの物質を与えられ、それが何であるかを同定する作業。
「この物質、黄色いよね。どうして黄色く見えるの?」
それぞれのグループにこんな質問をしてみる。
「電球の白い光りがこの物質にあたると、黄色の補色にあたる青が吸収されるため黄色く見える。」と正解できるグループはなかなかない。
「将来、何になりたいの?」
こう聞いてみると、驚くことに3割程度が、医師になりたいという。スウェーデンでも医学部に入学するためには、かなり頑張らないといけない。日本と違って、「浪人」というシステムはない。医学部に直接入学できなかった人たちは、他の道のりで医学部へ入学しようとする。そのうちの一つが、この、Biomedicineを経由する方法だ。Biomedicineへ入学するのは比較的簡単だ。そして、ここで学ぶ科目は、医学部で学ぶ科目と重複するため、医学部に編入した場合はその科目が免除されるシステムになっており、結果として殆どロスをしないことになる。
「どうして医者になりたいの?」と聞いてみた。
「お金の心配をしたくない。」「経済的に自立したい。」
どちらも、育ちはスウェーデンだが、両親は移民と思われる10代の女学生さん。
逆に、「医者になって良かったことは?」と質問され、
「多くの職業では、仕事をすることで「敵」が生まれるが、医者はそうではない。全ての人が、同じ目的を目指すことができること」「移民医師として、医学には国境がないこと」
をあげた。
何となく、スウェーデンでも、経済的安定のために医師を目指す人が多くなっているように感じた。
女学生さんの一人は、スウェーデン国内ではなく、ハンガリーの医学部に進むという。ハンガリーの医学部の方が入学しやすいけれど、スウェーデンよりずっと勉強させられるらしい。
と思えば、研究者となることを夢見ている、アフリカからの移民青年。研究者の道は険しいけれど、頑張って夢を追いかけてほしいと思いながら。
生真面目なスウェーデンの青年。教師になりたいのだとか。しかし、教科書が一字一句理解できないのが苦しいらしい。
「大枠を理解することがまず大事。細かいことにこだわっていると、先に進めなくなるよ。」と話すが、かなり煮詰まってしまっている。でも、私もどちらかといえば、そんな性格だったから、理解できる。
先日、友人と言語について話していて、面白いことに気付いた。日本語は漢字を筆頭として、一文字に含まれる意味が大きく、アルファベットの言語に比べて、速く多くの情報を得ることができる。これは、記号と同じこと。
たとえば、この身障者マーク。これだけで、身障者用の駐車場、エレベーター、トイレなど、一目瞭然だ。これを、文字で書いたら、情報を得るためにより時間が必要となる。
脱線してしまったが、日本人が日本語で書かれた教科書を用いて得る、単位時間あたりの知識は、もしかしたら、多言語に比べたら多いのではないかな、と、そんなことを考えてしまった。
普段、病院では10代の学生さんを相手にすることはないが、たまにはこんな授業を担当するのもいいものだ。








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